2017年10月15日更新作品から
「クソ妄想垂れ流し」 http://suikentsukai.web.fc2.com/index4.html
酔拳先生の短編集。
「私」が言えたことではないが、正直言って絵は下手くそな方だろう。
登場人物が殆ど<●><●>の目をしていることが特徴で、2ちゃんねる(今は5ちゃんねるだが)で良く使われるAAのようなキャラ。ポケモンのネイティオのようなじーっと瞳孔を見開いてこちらを見つめてくる目というのは、読者に居心地の悪い不安感というか、不気味さというか、生理的嫌悪感を呼び起こさせてしまう。
あくまで個人的な意見だが、ブーン系ややる夫系なら好きなのだが、これは苦手。
だからだろうか、意識的に「読もう」と思わない限り、そのAAのようなキャラクターがネックとなり、ブラウザバックしてしまう。下手くそなのは別に気にしないが、何となくいやーな感じがして読もうという気にならない。
ただ、実際読み始めてみると意外な面白さに気づくので、是非読んでもらいたい作品なのだ。
短編として完結している「私」というタイトルの作品。
「あとがきのような戯言」を読むと、これは小説として書いていた作品の漫画化となるらしい。
鬱屈したストレスを酒でごまかしながら、それでも日々平凡に生きていた主人公が、「自分がもう一人いたら会社に行くのも半分でストレスも半分なのに」と願望したところ、ある日目覚めたらドッペルゲンガーのようにもう一人の「私」が現れるという話。
古いけどパーマンのコピーロボットのような便利な存在ができたと最初は思わせておいて、でもそんな都合の良いものではない。
自分が二人になって、確かに嫌な事の負担は分け合ってストレスは半減したが、良い事も分け合わねばならないのだ。彼女とデートするチャンスが訪れてもデートに行けるのは一人だけ。どちらがデートに行くかで「私」同士で喧嘩をしてしまい…ちょっとこの後は実際に読んでもらいたいし、ネタバレにもなるから詳しくは書かないが、つまるところ陰惨な展開となっていく。
また、話数が進むごとに、徐々にどっちが最初の「私」だったのかが読者には良く分からなくなってきて、叙述トリックにかけられてくる。
視点が最初の主人公の「私」だけかと思わせておいて、コマ割りも乱雑というか左で話していた人が下のコマでは右に移動していたりするし、顔が一緒なので分かりづらい。ただこれが後の展開を考えると意図的だったのでは?と考えさせられた。
絵が無い小説で叙述トリックをかけられるのは良くあることだが、同じ顔のキャラクターを使うことで漫画でも成功している。
読み終えた時、トリッキーな酔拳を食らったかのような戸惑いというか衝撃を受けた。まさに名は体を表すといったところか。
お見事でした。
また酔拳先生は、現在は「部屋」という短編を連載中です。
こちらもまたホラーな展開で、世にも奇妙な物語でも見ているような物凄い発想の話となっています。
起きたら妙な謎空間に飛ばされていたってところまでは良くあるのですが、それがかような異質なものとなるとは。
続きも非常に気になるところ。
そんなに閲覧カロリーはないというか、まだ気軽に読めるページ数です。
まずは酔拳先生作品を見た目で躊躇している方に読んでもらいたいところですね。
続き、楽しみにしています。
以上です。