世界が終わるとき
もう一人
と言ってもそれは一瞬の事で、彼女の話を聞きながら少し歩いたところで校門にたどり着いた。そこで彼女は中学の頃の友達を見つけ、その女子生徒の元へ走って行ってしまった。大した話こそできなかったがまた会う約束はできた。
詳しい話はその時聞けばいいだろう。
とりあえず僕は自分のクラスを知らなければならない。
クラス表は校門入ってすぐの校舎の壁に貼りつけられているという僕は人だかりのできている辺りをそうだろうと見当つけるとまっすぐそこに向かって歩いていく。隙間からでも確認しようと思ったのだ。
ところがそうは問屋が卸さなかった。
あまりにも人が多すぎてそれどころではなかったのだ。
ただでさえコミュ障だというのにそんな大量の人に近づいていく勇気はなかった。
どうしようか。
僕が悩んでいると、後から声をかけられた。
「君も新入生?」
「え?」
振り返って見るとそこには一人の女子生徒がいた。
きれいな茶髪を短めにしており、肌にはわずかばかりの日焼け跡。いかに活発そうで元気いっぱいなその顔に満面の笑顔を浮かべている。掲げているその手にはスマートフォンが握られており、何かの写真が写っていた。
僕は少し不審顔をするもそれがどういう意味なのか尋ねることにした。
「と、いうと?」
「ここにクラス表を撮った写真がる。見たい?」
「……見せて下さい」
「うん、いいよー。君、名前は」
彼女は画面をのぞき込みながらそう言った。
どうやら本当に見せてくれるわけではないらしい。
あまり教えたくなかったのだが背に腹は変えられない。
「立樹撲」
「たちきぼく、ちょっと待っ……あ、あった」
ほとんど待つ必要はなかった。
彼女はより一層明るい笑顔を浮かべると言った。
「同じクラスだ、よろしくね!!」
「あ、はい」
そこまで話したところで、誰かの声が遠くこちらに向けて遠くから響いてきた。
僕にはよく聞こえなかったのだが、彼女にははっきりと聞こえていたらしい。そちらに顔を向けると「今行くよ!!」と返した。
そして僕にむって両手を合わせるとこういった。
「ごめんね、呼ばれちゃった」
「はぁ」
「じゃ、また後で教室で」
そう言って彼女は呼んでいる人の方へ向かおうとした。
が、その前に一旦足を止めると僕の方を向いてこう言った。
「あ、自己紹介まだだったね」
「え?」
「私の名前は百合子、霞ヶ丘百合子、よろしく」
「え?」
えええええええええええええええええええええええええええええええ
そんなあほみたいな声を上げて叫びだしたい気分だった。
でもそういう訳にはいかなかった。
僕の世界は着実に狂いつつるようだ。
「世界の終わり」が多すぎる。