束の間の現実逃避に溺れていた。
ただ何も考えずに君を求める夜。
僕らの息遣いだけがこだました。
束の間の休息には朝が憎かった。
寝ぼけた君の髪、金と黒の狭間に口づけする。
シャンプーの残り香がほのかに香る。
そうしてお互いの存在を確かめるように抱きしめ合った。
夕日がすっかり暮れてしまって、暗闇が辺りを包む頃
僕らはそれぞれの家路につく。
束の間の愛を、束の間の現実に引き戻すように。
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