闇が笑っている。
ゆっくりゆっくり僕の手をひいてゆく。
寒さに悴んだ僕の手を、どこまでもどこまでも。
僕が微笑み返すと、彼は一瞬戸惑ったような顔を見せ、立ち止まった。
今度は僕が彼の手をひいてゆく。
ゆっくりゆっくり、どこまでもどこまでも。
そうしてふいに振り返ると、彼はいつの間にか何処かに消えていた。
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