彼女との出会いはただ単純に学校の同級生という間柄でしか無かった。
それ以上でもそれ以下にもなれない関係。お姫様のような彼女はその美しい容姿ゆえ、
どうしたってクラスの注目の的にならざるを得なかった。
だが、無口で大人しい性格の彼女はどこぞのグループにも混ざることなく、
お昼休みになるといつの間にか姿を消すことがよくあった。
教室カースト制度の下の隅っこの方のグループに所属する僕にとって
手の届きようのない、まさに光り輝く存在だった。
そんなある日、僕は魔が差した。
忘れ物を取りに教室へ戻ると、彼女の机の下に可愛らしいピンク色のipodが
落ちている事にうっかり気づいてしまった。
そういえば…前に屋上で彼女が一人で目をつぶりながら真剣に音楽を聴く姿を
何度か見た事がある。先生に見つかれば即没収。だから人目を避け為、
こうしてわざわざ屋上まで音楽を聴く為に足を運んでいることを僕だけは知っていた。
教室に自分の所在の無さ加減に耐えられず、僕も良く屋上へ行くことがあったからだ。
けど、そこに自分とは縁遠い彼女の存在を見かけた時は心臓が飛び出るほど驚いた。
その印象が強烈だったので、手に持っているipodの事を良く覚えている。
そして、今、目の前にそれと同じものが落ちている。
誰も居ない教室、彼女のipod。
あの娘は普段一体何を聴いているのだろうか、ジャンルとかあまり良くは知らないが、
ジャニーズ系か、もしくはアニメのOPで流れるようなバンドかもしれない。
それを知る格好のチャンス!あわよくば、ここから情報を割り出し、
入念に調べ、何食わぬ顔して彼女との会話のきっかけになるかもしれないという下心。
何より彼女がしていたイヤフォンを勝手に僕の両耳に嵌める
という行為そのものに言いようのない背徳感を感じ、こう、何だか知らんが(すっとぼけ)
下半身から得体の知れない微熱が徐々に込み上げてくる(確信)。
気が付くと自然と汗が滴り落ち、心臓から鼓動が背中に伝わりゾクゾクし、震えてくる。
一瞬躊躇した後、改めて周りに人が居ないことをそれとなく確認すると、
それを素早く拾い上げ、ドキドキしながら恐る恐るイヤフォンを耳に当て、
勇気を出し、再生ボタンに指をかけた。
その瞬間…
ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ぶおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
可愛らしいピンク色のipodから発せられた音楽(?)は発狂した基地外じみた絶叫が
僕の両耳に襲い掛かり、慌ててイヤフォンを外す。
一体何が起きたのか、一瞬混乱し、動揺を隠せなかった。
結果的に、逆に自分が犯される羽目になり、しばらく放心していると、
今聴いた音の正体を調べようと、画面に映し出されたアーティスト名を見て我が目を疑った。
ANAL CUNT