【存在しない希望】
親愛なる私へ
ハローハローハロー
こんにちは冷たい闇
宇宙から私より
私はいま吸い込まれている
始まりは地球を飛び立ったあの日
私はとある任務についている
ソレは闇へ潜る事…
場所は月の底
光のあたらない完全な闇へ
月のクレーターその穴の中心
深い深い穴があったから
その中には【熱】があるらしい
エネルギー
私たちの地球にはもう時間が残されていない
太陽系は熱を失い続けてる
光に依存した私達の星達は太陽と一緒に
熱を忘れ凍り死ぬことだろう
探索員の仕事だ
私は月の底から【熱】を持ってかえる
太陽からの呪縛、依存を振り払い
解放される
地球で持続可能な熱を手に入れよう
ーーーーーー
クレーターの縁に経った
まだ太陽の光があたたかい
ここから一歩でも下に降りるなら
進めば暗闇
底を覗こうと何も見えやしない
その闇の中は
きっとすごく不安なんだろうな
私は膝をかかえてうずくまった
ずっとこうしていたかった
太陽の逆光が影をつくるが
その影は私の眼の前…
クレーターの闇の中へ吸い込まれ
そして影と闇との境界線はなかった
学生の頃、
早朝は親に部活の朝練に行くからと
嘘をついてまだ暗いなか
郵便配達のバイクの音とすれ違い
まだだれもいない校舎へ向かった
コツンコツンと鳴り響く高い音
自分の足音
遠くのグラウンドから聞こえる
運動部の掛け声
青色を紛らせた光が窓の縁をなぞる
寒い寒い年明け
静かな教室で僕は座る
机に両腕を添えてうつむく
ひんやりとした机
暖房のない部屋
明るい暗さ、少しだけ怖かった
ーーーーー
もう何時間こうやっていたのだろう
あのときから変わらない姿勢
何時間なのか何日なのか何年なのか
全てが曖昧になる
さて、飛び込もう
その穴をのぞきこみ
靴を脱ぎ
太陽に手を振った
そして【どの時】の私は身を投げた
その先に存在しない熱を求めて