第三戦:変身…って妙にモッコリ
現場に着くと、既に林巧、久須美貴の二人が到着していた。
「遅いぞ、二人とも」
と、細身の巧が咎めるように言う。
「…順子ちゃん、おはよう」
高校卒業以来、まるでと言って良いほど社会との接点を持たない年季の入ったヒッキーの貴は、順子にだけは少々心を開いたように呟く。
「おはよ、貴君。未だ寝ぼけ眼だなぁ、ちゃんと規則正しい生活しないとダメだぞ」
高校時代のマドンナは今も変わらずお節介ぶりを発揮する。
「それにしても偉いよね、貴君。ちゃ~~んと、正義のヒーローやってるんだもの」
「今日の現場…『ジャングル』の倉庫だろ。僕…みんなには内緒にしてたけど、一度だけ働いたことあるんだ、ネット通販が流行り出した頃に、この倉庫で…」
「へえ、そりゃあ初耳だな」
と、洋助も意外そうな声を出す。
「それで余りのブラックさに逃げ出したってわけだ、ひと月くらいもったのかい?」
と、巧。
「いや…半日…」
貴のあまりの堪え性の無さに、黙り込む一同。が、闘いを前に萎えかけたみんなを鼓舞するように順子が言う。
「そ、そう、それだけブラックってことよね。だからこそ、ジェノサイドも何か悪いことを企んでこの倉庫に構成員を送り込んだんだわ。悪い人たちを撲滅するため頑張りましょー」
マドンナ様はいつでも明るく、みんなの太陽である。
「よっしゃ、今日も変身だぜ!」
と、洋助が音頭を取る。腕時計型スマホをかざし変身のポーズをとる4人。一瞬、メンバーの視線が順子に釘付けになる。
「…ってもう、なんで私の方ばっかし、見るわけ?」
変身の瞬間、全員のカラダがまばゆい光に包まれるわけだが、一瞬だけ裸になるわけだ。ほかの三人はともかく、不惑を迎えたとはいえ、人妻の色香むんむん、高校時代は新体操で鍛え上げた順子の肉体はなかなかエロいのだ。ましてや氷河期世代の恵まれない男たちは女体に飢えている。高校時代のマドンナの肉体はなかなか刺激的なわけだ。
「もうッ、みんなエッチなんだから! いくわよ、見せろ、我らミドルエイジのやる気、勇気、元気!」
恥ずかしくなるようなキャッチ・フレーズも順子の口から漏れると、みんながやる気になるから不思議だ。ともあれ、メンバーはみなが順子のヌードにモッコリした後、なにが起こっているかもわからない広大な倉庫へと潜入していった。