Neetel Inside ニートノベル
表紙

不人気叩かれ文芸作家の僕がプロデビュー…
11・憧れの神絵師さんとの出会い

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「ぎゃあああああ!」

翌朝、起きてカミナリ大賞のページを見ると僕の顔がデカデカと掲載されていて大声で叫んでしまった。

約束と違うよ澪奈さん…困る…こんな事されたら恥ずかしくて表歩けないよ。

僕は澪奈さんにすぐ電話した。

「澪奈さん!酷いですよ。あんな大きな写真を載せるなんて聞いてないです!」

「先生ぇ…… 私もその件については後悔してるんです」

「ほらやっぱり!
だから逆効果だって言ったんですよ! 売上だって落ちますよ。
とにかくすぐ消して下さい! お願いします!」

「いえ、その逆で好評過ぎて。ウチの女性社員がみんな先生のファンになってしまって……競争率が高くて高て……
まぁ、売上的にはプラスになるんで良いのですがね!!」

僕は
「こんな時に冗談はよして下さい!
とにかく写真は消すか、せめてもっと小さいのに変えて下さい!」と食い下がった。

「いやー本当に好評なんですよ」

「僕と世間に対する嫌がらせです。とにかく止めて下さい!」

「えー、ラノベに縁の無い女性読者獲得出来るんですけど……はーい。分かりましたー。
あっそうだ!ちょうど連絡しようと思っていた矢先なんです。
先生、お好きな絵師っています?」

「そりゃ……やっぱりウサロック先生です」

ウサロック先生はファンタジー系を中心に描かれている超絶神絵師だ。

幻想的ながらも実在感を持った絵で、実はウサロック先生の画集からインスピレーションを得て『雲海のフーガ』を書きはじめた。

デビューしてまだ5年くらいだけど世界的な人気を誇っている。

しかしSNSはやっておらず謎に包まれた覆面作家だ。

澪奈さんは深いため息のあと
「はぁ~やはりそうですか」と言う。

「何か問題でも?」

「最優秀賞作にはなるべくご希望の絵師に表紙と挿し絵を描いてもらうようにしているんです」

「ええ知ってます……
あー、そう言えばウサロック先生はよほど気に入った作品じゃないと仕事しないって聞いた事あります。
無理なら別に構いません!
絵を描いて下さるのでしたら、どなたでも嬉しいです。
誰もいなかったら挿し絵無しでもかまいません。
だから僕のことは気にしないで進めて下さい」

「いや、そういう事では無いのですが……
大変申し訳ありません。弊社にもう一度ご足労頂く際に1時間ほど早くして頂けますか?」

「ああ、明日は授賞式の打ち合わせとか書類の件で伺うんでしたね。
ええ大丈夫ですよ」

「すみませんがお願いいたします…はぁ(タメイキ)」

澪奈さんの様子がおかしい。

なんだ?

翌日。

カミナリマガジン社の応接室。

広い室内には僕と澪奈さんだけ。

式の日程確認やら、スーツの寸法取り、賞金の振込先の手続きなどなどをした。

ペンを置くと澪奈さんが
「牧野先生、先日お聞きしました絵師の件ですが……やはりウサロックでしょうか?」

「もちろん高望みだと分かっています。いえ、描いてもらえるなら、もちろんどなたでも嬉しいです!」

「先生の世界観を描けるのは……私もウサロックしかないと思っています……」

僕は
「ウサロック先生が僕の作品なんか描いてくれるんですか!?」と聞いた。

澪奈さんはやはり深いため息のあと
「その気はあるようですよ」と告げた。

澪奈さんは不機嫌そうに言って立ち上がりドアを開ける。

どうも今日の澪奈さんはおかしい。

不機嫌な感じだ。

ガチャリ

「失礼します」

そう言って打ち合わせ室にスラリとした美少女が入ってきた。

キャラメルブロンドにターコイズブルーの大きな瞳。

長くしなやかな手に白く滑らかな肌、そしてメチャクチャ長い脚。

ファンタジーの世界から抜け出てきたような浮き世離れした美しさがある。

それでいて冷たい感じではなくどこか親しみを覚える。

僕は澪奈さんに
「どなたです? この外人さん?」と聞いた。

金髪美少女は
「はじめまして。
牧野先生」

に、日本語しゃべった! しかも流暢!

彼女は続ける。

「ウサロックこと栗栖エリナです。こう見えて日本人。
ただし国籍とお婆ちゃんがね。
他はスウェーデンの血なんです」そう言ってペコリと頭を下げた。

僕は
「えー!ウサロック先生!!」と大声を上げた。

活動期間からすると20代後半くらいかと思っていたが、どう見ても高校生くらいだ。

澪奈さんが、ウサロック先生の横に立つ。

「エリナは小六からプロデビューしてるから、今は17歳。そしてあたしの親戚なの」

ウサロック先生が僕を見つめると頬がポワッと赤くなって
「やだ……カッコいい……」と呟いた。

澪奈さんが
「エリナは面食いだから会わせたくなかったの!」と舌打ちする。

ウサロック先生は
「いや……もとい。
そうじゃなくて牧野先生の作品を拝読してすごく感動したんです!
私の中の世界観が物語になったようで驚いているんです!ぜひ絵を担当させて下さい!」

僕は
「いえ、あ……本当にいいんですか?」と頭を下げた。

ウサロック先生は
「動かないで」と囁いて、鼻を僕の首筋に近づけた。
ふわっとリンゴの花のようないい香りが鼻腔を刺激する。

クンクンクン

え? ウサロック先生、僕を嗅いでる?

いや出かける前にシャワーも浴びたし人を不快にする臭いは放ってないと思うけど……一番安いボディソープの香りが何かお気に障ったのでしょうか……

澪奈さんが
「先生、ごめんなさい。エリナはドーブツなんです」

「ど、動物?」

「このコ、野生の感覚で生きてるから」

クンクンっ!

「あぁいい匂い! エリナ、先生の事大好き!」

そう言って僕の胸に飛び込んできた。
ウサロック先生の小振りだが弾むような乳房が僕の胸板に当たる。

「本当に本当に感動したんです!お願いします!あの世界をエリナの手で形にしたいんです!!」

「いやいや、こちらこそというか夢みたいですよ。ずっとファンだったんです。画集ももちろん買いましたし!」

「え、エリナなんかの画集を先生が……恥ずかしい……こっちこそ夢みたい。
あんな素敵な世界を描けるなんて」

「じつはその画集を見て『雲海のフーガ』を思いついて……」

「!!ああ!! まるで自分の半身を見つけたみたい!私たち結ばれる運命なのですね」

「ウサロック先生……ち、近い…です…」

「ウサロックじゃなくてエリナて呼んで」

「エリナ…さん…」

「さん付けはイヤっ!先生とエリナはこれから共同創作者、相棒、二人三脚の関係になるのですから」

さすが澪奈さんの親戚だ、熱血体育会系な血筋なんだろう……

僕は
「と、とりあえず打ち合わせをしましょうか」と言うしかなかった。

ウサロック先生ことエリナは
「それには先ず牧野先生のお宅訪問からね!」と笑った。

       

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