不人気叩かれ文芸作家の僕がプロデビュー…
2・僕、オフ会でイジられる
オマーン国債先生が
「あー今ちょうど牧野先生の作品を話題にしていたんすよ~」と笑う。
僕は感激した。
「え、僕の名前をご存知とは……」
ちょちょちょ先生が
「そうそう、コメント欄がひどい事になってるなって……」と続けた。
そうです……しょぼん ……
僕の『雲海のフーガ』のコメント欄は少し荒れている。
1年半前に初投稿、初連載して最初に付いたコメントが『期待』のみ。
その後は更新のたびに『つまんね』『電力の無駄遣い』『読んでないけど駄作』『消えろ』『キメェ』『まったく読む気にならない』『次更新したら実家を燃やす』などの叩きsageコメントだけつく。
それでもコメントを削除したりBAN機能は使わない。
これが新都社なのだ。
面白ければちゃんとした感想は付くのだろうし、面白くなければ叩かれる。
正直言って叩きコメントを読むたびに悲しくて泣いてしまうけど、まだまともに読んで貰えるレベルに達していないのだろう。
でもいつかちゃんと感想を書いてくれる人が来てもらえると信じている。
シュポポ先生が「いや最近、更新が無くって心配してたんだ。叩きコメに負けちゃったのかなと」と仰る。
先生が心配して下さるとは!
僕は
「いえ、負けてません。カミナリ大賞に応募する作品を書くために、そっちに集中してました」と答えた。
「ほう。で、結果は?」
「一次審査にも名前が無くて落ちたみたいです…」と僕。
「みたいじゃなくて、名前が無いなら落ちたんですよねー」とオマーン先生。
「そ、そうですね。すみません、言い直します。落ちました」
「カミナリ大賞は最近は最優秀賞が出なくて…業界屈指の厳しい賞だからね。大賞発表は今日だっけ? 確か今回もまた出なかったんじゃないかな。
俺も昔、挑戦して二次選考まではいったんだけどな」とシュポポ先生。
「シュポポ先生でもそうですか。僕はまだ書き始めたばかりですし、気持ちを切り替えて『雲海のフーガ』の完結をさせてから、もう少し小さな賞からチャレンジし直します」
「いや、カミナリ大賞は続けた方がいいよ。目標は大きい方が成長するから」
さすがシュポポ先生。プロは考える事が大きいな。
「ちなみに応募したのはどんな話?」
「『雲海のフーガ』の前の話で『暁のファンファーレ』というタイトルなんです!」
「うーん、タイトルからして時流から外れまくってるね」
「そうですか……でもフーガ・シリーズを作りこんでいたら書きたくなって」
オマーン国債先生が
「えー読者いないのにやる気よく続くねー」と言う。
「僕は読んでいるよ」とシュポポ先生。
ぅっ、そうなんですか。
さすが文藝ニーノベの重鎮作家。
嬉しいです……
オマーン国債先生が
「読んだらコメントしてあげなよー」と言う。
「うーん俺がコメントするレベルにはまだ達していないかなって思っててね」
そうなんだ……やっぱり、まだまだ感想をもらうレベルには達してないのか。
僕は頭を下げ
「シュポポ先生!具体的に悪いところがあれば教え下さい。自分では一生懸命書いているつもりなんですけど」と勇気を振り絞ってお願いした。
シュポポ先生は腕組みをした。
「まだ書き始めなら自分では分かんないかなー。
まぁプロから言わせてもらうと、展開がゆっくり過ぎだよ。あとキャラの心理描写が重くない?
それにちょっと地の文が多い感じだな。読者はキャラの会話を楽しみたいのがメインなんだから」
う、生まれて初めての感想が聞けた……!
嬉しくなって涙が出そうになる。
オマーン先生が
「えー! シュポポ先生に本当に読んでいるんですか!」と聞く。
シュポポ先生は気まずい顔をした。
「うん、まぁ。古参なんでうPされたのは目を通しておくわけ。
そうねえ。あと言わせてもらうと、ハイ過ぎるファンタジーは受けないんじゃないかな?
作り込みたい気持ちは分かるけどゲーム準拠のファンタジー感でいいわけ、あくまでも感が出てればいいから」
シュポポ先生はスマホで僕の作品を開いた。
「具体的にはここの表現とか……」
オマーン先生はスマホを見ながら
「ねぇ、ちょちょちょ先生FA描いたげなって」と言う。
「ぃゃ~不人気は……メリット無いんで」
オマーン先生が
「ひどーい。しかしこのコメ数と叩きで連載続けるってのは鋼メンタル。ある意味才能あるわー」と言うと急に盛り上がった。
僕は場の空気を乱さないよう必死に愛想笑いを振り撒くしか出来なかった。
つい
「い、いや。最終更新時は読者も増えてて」と言ってしまった。
「本当?」
「ええ、更新時はPVも二桁行ったので」
一斉に笑いがおこる。
「えーUUじゃなくて?すげぇ、管理画面見せてー」
僕は迂闊な一言を後悔しながらスマホを取り出した。
「最近は更新してないから0ばっかりだけど、最後の更新日は11いきました……」
また笑いがおこる。
「11、11は確かに二桁だw」
「ギャハハ文藝ってそんなものなの?」
「いや僕も文藝で連載していた時は更新日で240は行くなぁ」
「そりゃシュポポ先生だしー」
戻ってきたスマホを見ると、今月のPVが500以上ある。
なに? 壊れた?
ちょちょちょ先生が
「ツイッターとかで宣伝してみたら?」と訊いてきた。
僕は顔を上げ
「そ、そうした方が良いですか?
ただフォロワー数の増やし方がよく分からなくて……」と答えた。
皆はそれぞれスマホで僕のアカウントを確認する。
「「「ふーフォロー数122、フォロワー数3かぁ…」」」
はい……しかも3は縁もゆかりも無いエロ系と自己啓発セミナーです……
え、3? 昨日より一つ増えてる。
誰?
あと何? この手紙マークの①って?