Neetel Inside ニートノベル
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不人気叩かれ文芸作家の僕がプロデビュー…
23・お仕事チュウ!!(2/2)

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ブロロロ

チュンチュン

「クシュン!」

「ほらやっぱり寒いんでしょ、風邪引く前に服着なきゃ」

エリナは無言でベッドから起き上がると床に両膝立ちになってモサモサとワンピースを着た。

良かった。

「もうっ!
こんな惨めな思いをして、先生に振り向いてもらえないなら……意味ない!!あたくしイラスト担当降ります!」

「え!ちょっちょっと待ってよ!
そんな……もうフーガの世界観はウサロック先生以外考えられないし、なんとか考え直してよ!!!!
それに澪奈さん…出版社さんだって絶対困るよ!!」

「ふーん、あっそ」

エリナはサディスティックな微笑みを浮かべ
「そーねー、一つだけエリナちゃーんの機嫌をナオース方法がアナタにはありマース」

「なんで所々カタコトで言ってるのか分からないけど、 何でも言って!!言って下さい!!」


「………………キスして………………」


「え?いや、ワケわかんない……ダメだよ!」

こんな繊細なガラス細工のような少女を僕の唇なんかで汚すなんて……文明社会に対する重大な挑戦というか人道に対する罪では……

澪奈さんか桜子さんか楓ちゃんが入ってきて助けてくれるとかそういう展開になんない?

エリナは自分の唇を指差して
「ほらほら初物ですわよ!!
日本人は初物がお好きなんでしょ!
ほら早くして!
5つ数える間にキスしないとあたくし引退します」

「い、引退? いつからそんな話に!?」

「もう描く気を失った絵師なんてゴミみたいな存在です……潔くストックホルム郊外で一人寂しく余生を送ります」

「それは冗談でも絶対口に出しちゃダメだよ」

「本気よ!
ほら、もう2ですわ!」

え? 心の中でカウントするルール!?

しかし……ウサロック先生が引退となったら世界の文明文化が止まってしまう……さすがに僕は覚悟を決めてゆっくりとエリナの顔に近づいた。

満面の笑みを浮かべながら唇を突きだしている。

美少女は珍妙な表情を浮かべてもやっぱり美少女だ……

けど薄目でこっちをずっと見るのは止めて!

恥ずかしやりずらいよ!

ゴクリ

その時、何かがスーと天井から降りてきた。

「Vad är detta!!!!」

ドン!

ダダダダッ!!!!!

エリナは叫ぶと同時にキッチンまですっ飛んでいって間仕切りドアから顔を覗かせる。

「お、お願い、ダーリン………ク……クモ怖い……どーにかして……」

一匹のクモが糸を伝ってゆっくりと床に落ちる。

割りと大きめのアシダカグモだ。

僕は
「見た目は大きいけど別に噛んだりしないし、害虫を退治してくれる益虫だよ。
それに日本ではクモは仏様の使いと言ってむやみに殺しちゃダメなんだ」と説明した。

「仏様の使いとか非科学的な事を言わないで!!
クモなんて見た目からして悪魔の手先に決まってるでしょ!」

「??? うーん、まぁそんなに苦手ならしょうがないか」

僕はクモを捕まえて窓から逃がしてやった。

エリナは涙目で
「もう本当にメンタル終わった!今日のお仕事はここまでです!」と告げ部屋を出て行った。

隣部屋のドアがバタンと閉まる音が聞こえる。

僕はLINEで
「大丈夫? 調べたらクモは柑橘類の匂いが苦手みたい。これからはそれ系の芳香剤を用意して寄せ付けないよう気をつけるよ。これに懲りず明日もよろしくお願いします」と送ると、すぐにキス顔写真が返ってきた。

そして寝るまでずーっと自撮り画像がメチャクチャ送られてきた。

       

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