不人気叩かれ文芸作家の僕がプロデビュー…
24・新都社と長野ちょちょちょ
新都社断ちをしたはずなのに……僕はつい寝る前にこっそり新都社を覗いてみた。
僕の受賞の効果なのか、文芸やニノベが活発になっている。
特に昔連載されていた先生方が戻って来ているのが嬉しい驚きだ。
LGBT島耕作先生、前源プン先生、ネコ幼女先生、二兆円プレイヤー先生まで……
釣られるように新規執筆者もぞくぞくと参入している!
これまで連載が5作品だったのに、今では50作以上が連載中だ。
企画も盛んで『三題噺』『一枚絵企画』『リレー小説』などが準備中。
うわ!参加したい!!!
つい一週間前の侘しさからするとウソみたいな賑わいだ。
読書ページを開くと、うわーー!!!
……見た瞬間、鳥肌が立った……
『雲海のフーガ』のFAが来てる!!!
しかも20枚以上も!!
う、嬉しすぎる……!
しかも各マンガ雑誌の看板作家先生も描かれているし、新規の方も多い。
僕にFAなんて送っても1円にもならないのに……せめてものお返しに心を込めてお礼を書いた。
うーんでも流石に、ちょちょちょ先生からは来てないか。
有名作家は皆ちょちょちょ先生にFAをもらっているから憧れなんだけどまだまだ早いか。
まぁ僕にFAを送ってもメリットが無いとオフ会で言われたし、しょうが無い……
●
同時刻
公営住宅の一室。
液タブに向かい一心不乱に『雲海のフーガ』の絵を描いている長野ちょちょちょ(PN)の姿があった。
眠気で頭がクラッとなった瞬間に、レッドブル・レッドエディション(赤)レッドブル・エナジードリンク(青)を立て続けに二本流し込む。
画面に己の舌を映して見ると、毒々しい紫色になっている。
舌に張り付く色素を前歯でこそぎ落とし飲み込む。
(うー水代わりにのみ続けてもう味なんて感じない…)
あのオフ会でオマーン国債が牧野ヒツジにFAを描いてやれと言われたとき
「ぃゃ~不人気は……メリット無いんで」と答えた自分が恨めしい。
(いや、あれからの騒ぎできっとそんな事は忘れているハズ)
しかしまさかあの場でカミナリ大賞を受賞の報を耳にするとは……しかし、まぁいいさ、これはアタシがノシ上がってゆく大チャンスでもあるのだ。
そろそろ人生一発逆転ファイブランホームランが欲しい、そう思っていた矢先であった。
カミナリ大賞とやらを調べると受賞作を出版する際には、著者が好きな絵師を選べる特典があるという。
好きな、というのがポイントだ。
むろんデビューしてない無名絵師でも受賞者が『好き』と言って指名すれば問題ない。
実際お友達関係から絵師に上りつめた人間もいるという。
「くっ!こうなったら……あの牧野ヒツジにクソデカ必死アピールでも何でもしてお友達になってカミナリ大賞の挿し絵か……それが無理なら何か仕事にありつかないと……!」
ゴゴゴゴ
レッドブルが胃に到達すると同時に眠気はやや遠ざかった。
平手で自分の両頬をビンタして気合い注入!!そして再びペンを取ると液タブに向かう。
「この『雲海のフーガ』のイメージボードを大量に描いて見せて、牧野ヒツジのお抱え絵師になんとしてでもなってやる!!」
描いた数はすでに13枚に上る……まだまだ!!圧倒的物量で圧倒して圧倒的絵師になってやる!!!
カキカキカキ
「うークソくそ!!甲冑とか資料見てもクソ難しい。
えーい!!ここは適当に陰で誤魔化しゃOK」
レイヤーを一枚重ね影を塗りたくっていった。