Neetel Inside ニートノベル
表紙

不人気叩かれ文芸作家の僕がプロデビュー…
27・僕がモデルに!?!?

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振り向くと、一眼レフカメラを首から下げを生やした中年男性が立っていた。

僕と澪奈さんを上から下までじっと眺めると
「広告カメラマンをしている花田と申します」と名刺を差し出した。

花田さんが言うには、この5億ションの広告撮影するハズだったのに手違いでモデルさんが来ないらしい。

「えー!僕達がその代役を!?」

花田さんは
「このマンションの内覧に来る方なら代役にピッタリな階級の人がいると考えてずっと張っていたんですよ。
で、お二人はイメージに通りだなと思って先ほどから見ていたんです!
ぜひ助けると思って引き受けて下さい!!
もちろん謝礼も出します! 納期までもうギリギリなんです!!」

「こんな所のモデルなんて僕には無理……」と言いかけると澪奈さんが
「そういう事でしたら、人助けですから協力しましょう!!」と割って入った。

澪奈さんは良いけど僕は無理無理無理!!!!

花田さんは
「ありがとうございます!!早速撮影しましょう!
カナちゃんお願いね」と脇に立つ若い女の子に声をかけた。

カナちゃんと呼ばれた純朴そうな女性はどうやらメイキャップ兼アシスタントのようだ。

澪奈さんのメイクを少し直し、僕の髪を整えてくれる最中、花田さんが説明する。

「お二人は新婚のスーパー・パワーカップルになったつもりで演じて下さい。
シチュエーションとしては、休日に二人で散歩して裏の公園まで遊びに行く、といった感じですから自然に普通にすごして下さい。
それを撮影していきますから」

カナさんは僕の髪をセットし終わると澪奈さんに
「すごい……カッコイイですね、彼氏さん……」と言った。

「そうでしょ!自慢の彼氏なんです」と僕の肩に頭を当てる。

僕は小声で澪奈さんに
「う、ウソは良くないですよ!何かお腹痛くなってきました…」と言うと
「人助けですからウソも方便になりますよ」と返ってきた。

なんなんだその理屈……

僕は花田さんに
「顔は何かで上手く隠すか切って下さい!それかモザイクを入れ……」と言うと澪奈さんが
「先生、デビュー前にモデルのバイトをしていたという事になると話題爆アゲですから!!ここはあえて顔出しで行きましょう!!!」と畳みかける。

そんな……バイトロンダリングなんかしたら、あとあと経歴詐称とかで問題にならないの?

花田さんは
「ハイではお二人は手を組んで歩いてもらいましょうか。
スーツとカバンだとちょっと固いので、カナちゃんお預かりして」

僕と澪奈さんは上着を脱いでカナさんに預ける。

澪奈さんは僕の腕に手を絡めて歩きながら
「いやーもう!人助けって気持ちいいですね!」とはしゃぐ。

お胸が二の腕に当たってたまらん恥ずかしい……

パシャリコパシャリコ

花田さんの
「イーですよ!すごくイイ!!幸せ新婚カップル感が出てて最っ高ですよ!!」の声に澪奈さんのテンションは早くもフルマックスだ。

「じゃ次は裏の公園に回りましょうか」

公園と言っても木々が多く、小さな森のようになっていてカフェレストランまで園内にある。

「ここでは飲み物を持って会話を楽しむ感じでお願いします」と花田さんが言うと、カナさんはカフェで買った飲み物を差し出す。

僕達はベンチに座り、少し話す事に。

澪奈さんは僕の本の売れ行き予想を楽しそうにしゃべり、僕はただただ聞いていた。

パシャリコパシャリコ

「イーですねっ!! 旦那さんも奥様も絵になる!なるなー!!」

「お、奥様……」

澪奈さんは赤くなり、両手で頬をさする。

か、可愛い……

普段キリッとした人が見せるこういう仕草に僕は弱い。

「イイーなー!イっ!!じゃ次は軽くキャッチボールでもしてみましょうか。
あっ、危ないから腕時計をお預かりしておきましょう。
カナちゃんお願い」

僕達はカナさんに腕時計を預けると、スポンジボールを手渡された。

澪奈さんは学生時代はソフトボールをやっていたというだけあって投げるフォームも綺麗だし、何よりスポーツする姿が似合っている。

パシャリコパシャリコ

「イーですねっ!これもイイっ!!
では最後お姫様だっこで締めましょうか!!」

「は?え?ここでですか……」と唖然としていると澪奈さんは
「分かりました!」と返事をすると僕の首に腕を絡ませ、パッと身を翻して飛び上がった。

わっ!!危ない!!

僕は空中で澪奈さんをキャッチ!お姫様だっこの完成だ。

「イイ!!イイですね~とても息がピッタリだー!!」

パシャリコパシャリコ

澪奈さんは
「つっ次は?次何しましょうか!?ちゅ、ちゅーとか??」と鼻息が荒い。

花田さんは
「あ、いえ、もう撮れ高は十分です。ありがとうございました!
あ……あら?
カナちゃんがいない?
カナちゃーん!!」と周囲を見渡す。

澪奈さんを降ろそうと、すると子供がイヤイヤをするように首を振って僕にしがみつく。

ううーん、どうしろと……

僕が
「カナさん、お手洗いじゃないですか?」と言うと花田さんは
「服とお荷物を預かっているから、普通は声をかけるものなんですけど……ちょっと心配なので見てきます」と公衆トイレの方へ向かった。

するとこちらに向かってきていた屈強なスーツ姿の男二人に花田さんは押さえつけられた!

え??な……何なの?

トイレの方からカナさんが警察官と共に歩いてくる。

花田さんを取り押さえたスーツ男が僕に近づいてきて
「警視庁捜査二課のものです」と言い、警察手帳を差し出した。

え?え?警察??

話を聞くと、花田さんは富裕層を狙った窃盗犯で「モデルになってくれ」と言って近づいては金品を預かり、共犯のカナさんに持ち逃げさせていたという。

罪悪感に耐えかねたカナさんは隙を見て110番し、モデル勧誘窃盗犯を追っていた警視庁と連携して現行犯逮捕に協力したという。

カナさんは涙ながらに
「こんな…こんな…素敵な方をだましていたら……とても悪い事をしているなって……」と僕と澪奈さんに言った。

他の人にも罪の意識を感じて下さいよ!

パトカーに連行されるカナさんを見送りながら澪奈さんは
「牧野先生は存在するだけで、人を正しい道に導くような徳を備えてらっしゃるんですね……」としみじみと呟いた。

「へ、変な事言わないで下さいよ!!カナさんは自分で気づいただけなんですよ!!
ところで……澪奈さん……そろそろ降りてもらっていいですか?」

       

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