Neetel Inside ニートノベル
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不人気叩かれ文芸作家の僕がプロデビュー…
26・ついに今日は授賞式!!!

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今日はいよいよ授賞式。

式は夕方6時からだけど予行演習的なものがあるので5時には会場入りするようにとの事。

僕は早いけど、お昼を済ますとスーツに着替えカバンを持ってアパートの一階に降りた。

桜子さんと楓ちゃん、そしてエリナが見送りに出てくれた。

桜子さんが
「ネクタイ少し曲がってますよ」と直してくれる。

「お兄ちゃん、早く帰ってきてね」と楓ちゃん。

うう、理想の家庭を持てたみたいで嬉しくて泣きそう。

エリナは
「ヤバヤバ!!やっぱ何度みてもエグイケ!!」とはしゃぎながら僕をスマホで撮り
「後でエリナ厳選画像を送るから」と言うけど自分の写真なんか貰っても嬉しくないよ。

ガタンゴトン

ビュワーン

都心に行くのは初めてなので早く出たけど、すんなり授賞式会場のホテルに着いてしまった。

昨日Googleマップで何度も確認したし、何よりホテルが大きく豪華なのですぐに分かった。

ロビーをのぞくと授賞式会場の案内が出ているし、編集らしい人たちが何やら準備している。

ふう、田舎者が心配する事は無かった。

まだまだ時間がある。

どこか公園かマックにでも行こうかと思っていると
「牧野先生!?」と声をかけられた。

振り向くと澪奈さんが立っていた。

いつもとは違い、髪をくるくると緩く結ってアップにしていて凄く綺麗でドキリとした。

「先生どうしたんです? ずいぶん早いですね」

「アパートにいても落ち着かないし、もし何かで遅れると悪いしと思って早く出たんですけど何か早く来すぎちゃって」

「そうなんですか……でもああ、やっぱりスーツ姿……凄くいぃ……」と潤んだ瞳で見つめる。

「この前も見たじゃないですか」

「やっぱり都心で見ると5倍イケてます……しゃ、写真撮りましょ!!」

うーんさすがにエリナの親戚だけあって同じ行動だ……

パシャリコパシャリコ

澪奈さんは
「ふー大満足!!!
式まで時間ありますけど、もう控え室に入られます? それかホテルのカフェにでも?」とたずねた。

「いや、なんか……緊張して落ち着かないので、ちょっとそこら辺を散歩でもしてきます」と僕は言った。

「何かあったら心配ですので、わたしも一緒に歩いていいですか!?」

「ど、どうぞ……っていうか良いんですか?勝手に出て」

「だいたい準備は整いましたし、担当先生を接待するのが編集の勤めですから。
やったー先生独り占め!」と言いながら澪奈さんはぴょんぴょん跳ねる。

二人でテクテクとアテも無くオフィス街をブラついていると
「あら先生、その腕時計?」と覗き込まれた。

僕はスーツの袖をまくって
「これお爺ちゃんの形見なんです。すごく古いけどしないよりかマシかと思って……みすぼらし過ぎますか?」と見せた。

「やっぱり!ミルガウスじゃないですか!」

「え? 有名なものなんです?」

「アンティークもので今一番人気があるんですよ。程度にもよるけど400万くらいはしますよ!!やだ先生めっちゃオシャレ!!!」

「よ…400??おじいちゃんが退職祝いに買ったとか言ってけどそんなお宝だったとは……」

「先生!ほら見て」と澪奈さんは自分の腕時計を見せた。

細い手首には不釣り合いな大きさだが、白い文字盤にオレンジのアクセントが華やかだ。

「可愛いですね」と言うと
「先生のものの新型なんです。やっぱり私たち気が合いますね!」

うーん、気が合うのはお爺ちゃんでは?

少し歩くとかなり大きな敷地が鉄板の仮囲いで覆われている。

「こんなビジネス街に何ができるんですか?」

「超富裕層向けのタワマンだそうです。4LDKで5億円だそうですよ。
先生もいずれ日本を代表する作家におなりになるのですから、こういった所にお住まいにならないと」

……5億…さくら荘に800年以上住める……

何気なく借囲いに掲げられた完成予想図の間取りを見る。

僕は
「さすが5億ション、凄い広いですね」とつぶやくと澪奈さんは目を輝かせて
「住めば慣れるものですよ。それに二人で住めばちょうど良くなります。そして三人、四人となり……」とつぶやいた。

「な……何の話です?」

「ま、まぁ仮定の話ですよ。あ、こっちモデルルームがありますよ!ちょっと行ってみましょ!見ると考えが変わるかもしれませんから」と手を引かれた。

その時、
「すみません、少しよろしいですか?」と声をかけられた。

       

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