Neetel Inside 文芸新都
表紙

parousia
望遠

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グラスが汗をかいている
何の匂いかわからない
ほんの近くが陰っている
何の思いかわからない

カーテンの折り目と
扇風機のまわる音
突然飛び立つ烏の群れ
身体がないのに鳴らしている

よく冷えているのに
誰も飲まない
何も抜けていかない
抜けるように青いのに

徘徊する楽しみを思うけれど
もうしばらく外をうろつかない
ただ帰宅するときの億劫さが
寝そべる私とテレビの間に訪れる

     

どうしてこんなに弱いのだろう
風が十円硬貨の表面をなでると
水平線が落ちて
多くの船乗りが昇っていく

人は天使の通貨なのだ
自然は天使の労役なのだ
埃をかぶったランプシェードが
形がないのに傾いている

どうしてこんなに弱いのだろう
もっと力強くと思うんだ
ここのところずっと
もっともっと力強くと

遮光カーテンから溢れて落ちる
午後五時半の淡い光たち
突然、立ち上がった一つ目の巨人が
無数の鳩を肩に載せている

       

表紙

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