Neetel Inside 文芸新都
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まほうつかい おんな レベル1
○月×日 早すぎる埋葬

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 そろそろ新しい呪文が恋しい季節になりました。メラ(石)、メラ・改(花火)、と順調にステップアップしてきましたけれども、ここで甘んじてはいけません。これらに次ぐ新呪文を。まほうつかいたる者、いつまでも 「いらっしゃいませー、こんにちはー」 って営業スマイルしてちゃダメなんですよ。毎日が、これ精進! はい。でも出来れば精進せずに覚えたい。はい。

 さて。どの呪文にしましょうか。
 正直メラはもういいよ、な心境です。火のセンスが見当たらない。ここまでの経験を省みるに、どうやら私にはナダレとかその辺が宿っていないのです。当然サイハも。だいたい八匹も竜飼うとか出来るわけないじゃないですか。食費すごい大変。毎月家計がえらいことになっちゃいます。
 となると、ギラ? ヒャド?
 いやいや。ここら辺でひとつ、方向の修正を計るべきでしょう。攻撃ばかりが能じゃありません。他にもまだまだ多種多様に呪文はあるのです。そう。まほうつかいの真価は攻撃呪文ではない、補助呪文にこそあるのだ! ――て、言ってました。誰が? さぁ。誰だろう。
 補助呪文。それは縁の下の力持ち。パーティを陰ながらサポートせよ。要するにオフェンスよりもディフェンス重視なスタイルと言えます。さらに分かりやすく言うならば、さしずめ 日向君より松山君といったところです。イーグルショットです。うん。全然分かりやすくないな、これ。地味だよ、イーグル。
 面白そうなのはバイキルトでしょうか。味方一人の攻撃力を倍にするというなかなかどうしてカッコいい呪文です。が。現状私は一人ぼっちパーティ。ひのきのぼうな私の攻撃を2倍にしたって……。たかが知れ過ぎていてイヤになります。せいぜいモヤシっ子がニラっ子に化ける程度でしょう。
 もっと他に便利な魔法はないものか。思わず周囲をきょろきょろ。もっと、こう、便利でありながらも、なおかつお手軽な、そんな絶妙なハーモニーを奏でる都合のいい魔法は。きょろりきょろり。
 しかしめぼしい物は見つかりません。うーん。無いかー。やっぱりそう簡単には……。
 あっ、待った。そうだ。アレだ。物置の中にアレがあった! アレならばもしや、呪文とよく似た、いやさ、一歩もひけを取らぬ効果が望めるかも。うん。いける。きっと。
 ん、と。確か、この辺にしまったはず……。ごそごそと、しらべるコマンド。
 
 なんと ガムテープをみつけた!

 はっけーん。微妙に使いかけですけども。問題ない問題ない。
 これを敵の口に、容易には取れないほどベッタベタのビッタビタに貼り付ければ。完成! それなるは比類なきマホトーン……!


「ってゆーのはどうかな」
「不合格ね」
「えーダメ? 我ながら結構苦心の末に編み出した自信作なんだけどな」
「……言いたいことは幾つもあるけど、何が一番ダメかって――」
「て?」
「マホトーンは、そうりょのじゅもん」

 あ……。
 何という思わぬ伏兵でしょう。盲点でした。
 そっかぁ。まほうつかいは覚えちゃまずいんだっけ。むー。

「あきらめる」
「あら素直だこと」
「そうりょは、ちょっと苦手。神様に祈るのは性に合わないってゆーか」

 セーブする時だけで十分ってゆーか。
 それに世が世なら、どれだけ熱心にささやいて、えいしょうして、いのって、ねんじたところで、あわれ灰にされてしまうことも……。おのれ、カント寺院めー。

       

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