Neetel Inside 文芸新都
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まほうつかい おんな レベル1
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 朝、目が覚めると痺れていた。いつもの事だ。痛いのかどうかさえ、もうわからない。痺れと一緒に、感覚はどこかへ流れていった。――『世界の中心で、キアリクをさけぶ』。

 さけぶ。
 しかしなにもおこりませんでした。はい。ダメか。本当はセカチュー読んだ事ないもんなぁ。
 うー、これどうにかならないでしょうか。右腕が痺れ過ぎてすっかり感覚を失くしております。ワンダフルに麻痺状態です。朝起きると時折こうなってるんですよね。一体どんなポージングで寝てたら、こんなになるんだろう。類まれなる寝相の悪さ。
 それともまさか。夜な夜な。ぴちゃり……ぴちゃり……。海から上がったしびれくらげが私の枕元へと……。アリアハンの怪談。本当にあった怖いしびれくらげ。
 まぁ放っておけば満月草を服用するまでもなく完治しますから平気といえば平気なんですけれども。でも麻痺の何がイヤって感覚が戻り始めるともれなくやってくる、何とも言えない、あの痛烈な……。
 ピリピリ。ぎゃあ。来た。来ました。腕に、電流に似た、痛みが。びりびりです。これが痺れの真の脅威。プラグ抜いたコンセントみたいに。電気デンキ流れてくる。くそー。いたい。うぅぅ。触ったら、怒る……。
 はっ、もしかしたら!
 唐突に。無限の可能性に気付いてしまいました。もしかして今この時ならば、あの伝説の呪文が繰り出せるのでは。選ばれし勇者にのみ振るうことが許されるという、あの雷の呪文が撃てちゃうんではないでしょうか。今のこの、そこはかとなく雷属性な右手ならば、もしや、もしや……!
 え、私、本日勇者デビュー? そして伝説へ? わ。どうしよう。私の装備が、ひのきのぼうが、いつの日かロトのつるぎって呼ばれちゃう。
 いけない。時間がありませんでした。びりびりが治まってしまう前に、いざスペル!
 ラ……あれ、なんて言ったっけ、あの呪文。ラ、ラ、ラ……ラブソングじゃなくて。えっと。ラ……ライ……? あれ?
 あーもうわかんない。もういいです。どうせ出ないよ。分かってる。分かってた。ちょっと言ってみただけだもん……。

 念の為 「ザケル」 って叫びましたが、やっぱり何も起こりませんでした。ガッシュは読んだのに。

       

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