Neetel Inside 文芸新都
表紙

まほうつかい おんな レベル1
○月×日 数百年後の誘い

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「お、おなかが減った時は優しい人からおむすびを貰いなさいって、お、お母さんの遺言なんだな」
 言わずと知れたヤマシタ画伯の殺し文句ですけれど、本当は画伯の母親は元気一杯に画伯より長生きしたそうです。にわかに詐欺師だね、キヨシ。

 そんな与太話はどうでも良いです。
 最近ふと不安に駆られました。私はこれでいいんでしょうか。石とか投げてて良いんでしょうか。ポイ。ポイ。ポイ。やった……! ついに、ついにナックルボールをマスターしたわ! って、一体それが何になりましょう。私は別にドラフトを狙っていません。
 まほうの使えないまほうつかい。相撲の取れない朝青龍。ヤムチャ。戦力外にも程がある。今のまま一つの呪文も覚えることなく月日を重ねたなら、必然私は中高年になっても石ころメラ。更年期障害に悩みながらねずみ花火メラです。まほうつかい(38)、レベル1。不憫過ぎる。想像するだに 「イヤあああっ」 ってならざるをえません。
 募りゆく焦燥感。このままでは非常に危険です。一人で抱え込んでいると夜も眠れなくなってしまいそう。
 いつまでも夢見る少女じゃいられませんので、すでに無駄に年月を過ごしてしまったに違いない人生の先輩に相談に行きました。
 
「ねー、おばさん」
「お・ね・え・さん。なーに?」
「あのね」

 私はカウンターの向こうのルイーダおばさんに悩みを打ち明けました。
 両親のいない私にとって、おばさんは何でも包み隠さずに話せる親代わりみたいな人です。

「……貴方はね、今のままでいいのよ」

 コトリ、と私の前にミルクを置いて、おばさんはそう答えてくれました。

「戦いは勇者に任せなさい」
「ええー」
「それに、あなたに世界を救うのは無理」
「どうして?」
「だってあなたは躊躇無く世界を半分貰っちゃうタイプだもの」

 失敬な。

       

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