「えー…大変お忙しい中ミシュガルド大陸を代表する皆様に集まっていただいたわけなのですが…」
新大陸ミシュガルドの大交易所。
最初にこの大陸に降り立った人達に俺はそう切り出した。
甲皇国の丙家代表ホロヴィズ氏、SHW代表のジャフ・マラー氏、そしてアルフヘイム代表のキルク氏とメラルダ氏。
「……いや、その前に、貴様は何者じゃ?なぜわしはこんな所にいる?」
そう言って俺を睨むホロヴィズ氏、その横ではキルク氏が弓に矢をつがえようとしている。
「お待ちなさいキルク、無駄ですよ。ここは夢の世界、私たちがこの方を害する事も、この方が私たちを害する事もできません
そうでしょう?執筆者様」
メラルダ氏の言葉に俺は少し驚いた。
「もう俺の作った設定が反映され、キャラクターがそれを理解している」のだ。
「え…エルフの伝承か何かですか?」
「世界は板から始まり、創世神が神々を板に集め、数多の世界を作ってもらっている。この世界に古くから伝わる神話です。
そして、神々は時に夢を通じ世界のこれからを人と語らうでしたわね。
この世界を作っている神…」
「あー、俺の名前は呼ぶのNGでお願いします、恥ずかしいので、あと俺はこの世界の創造主ですが皆さんの方が年上なんで、変にかしこまらなくていいすよ。
別に俺、皆さん消したりとかできないししないんで。」
メラルダ氏の言葉を遮り、そう訴える俺。
ご都合主義というかなんというか、まだ落書き置き場や合同調査報告書、本編にも出していない設定をメラルダ氏は知っていた。
そして周りの方々もその説明ですっかり納得しており、これですっごい話がスムーズに進む。
…あ、そっかメラルダさん僧だから実質俺に仕えてるわけなんだよな。
そりゃあ俺の作った設定がこの世界に神話として流布されてるとなったら偉い僧侶のメラルダさんは全てを網羅してておかしくないというわけか。
夢の設定とか世界の設定とかは読者がついてこれなくなるといけないから早いとこ本編でも登場させねえとな…。
「それで、執筆者様とやらは私たちに何か用なの?」
「はい、話の続きに詰まっています」
話を止めてしまっている俺に尋ねてきたジャフ・マラー氏に俺は素直に返答した。
なんだそりゃとかホロヴィズ氏やキルク氏が文句を言う声が聞こえる。
「いや、真剣にまずいんですって、このままじゃ世界の発展と平和が滞ってしまうんですよ」
「世界は超越者達に見られ、その米を得る事で発展する…でしたわね」
「そう、そうなんです。でもどーも描写で詰まってしまって…」
「どんな世界が今後は超越者…読者達に見られるの?」
興味深げに効いてくるジャフ・マラー氏。
メラルダ氏とジャフ・マラー氏は俺の話に興味をもってくれているが、キルク氏とホロヴィズ氏は早く帰らせろという雰囲気が出ている。
そこで、俺は一同の興味を引きまくるネタバレをする事にする。
「えー、まず、メタルメゼツって敵を出そうと思ってます」
「何!?」
「あと、アルフヘイムは俺魔法とかよくわからんので白兎人メインで話が進みます」
「はあ?」
よし、食いついた。
特にホロヴィズさんなんか俺に掴みかからん勢いだが、そこはニコニコ笑顔の女の子スタッフが羽交い絞めにして止めてくれる。
「わしの息子を…戦争でただでさえ苦しんだ息子を改造して辱めるつもりか!」
「いやあ、お宅の国もエルフで似たような事してますし、そこはいいでしょう」
「いいわけがあるか!メゼツを…」
「メゼツさんがどーなるか教えるのは読者様へのネタバレになるから避けてえし…呼んどいて悪いんだけど」
俺のハンドサインで、女の子スタッフがホロヴィズ氏を大外刈りで投げ飛ばす。
頭が地面に当たる刹那、ホロヴィズ氏は消滅した。
「…現実に帰ってもらいました。うん、なんか、マジ申し訳ないけども」
話題選びをしくじった自分にイライラしてしまいながら、周囲に弁明する俺。
他の世界なら兎も角、この世界のホロヴィズ氏は冷淡でも冷血でもない。
創造主たる自分が一番わかってるはずなのにこうなる結果を読めなかったのは我ながらなんと愚かな事だろう。
だが、この世界のホロヴィズは人の為に、家族のために神に掴みかかる様な人物。
それを自分自身で再確認できただけ、よしとしたい。
ここで得たインスピレーションを本編で生かすのだ。
「それで、ほかにはどんな展開が待っているの?」
ホロヴィズの消滅にさして興味を示さず俺に問いてくるジャフ氏。
皆ホロヴィズが嫌いだし、神…超常的で、かつバカが相手だからこういう事もあるだろうというのを心得ているのだろう。
誰も全く動じていない。
「あー…怪獣がバンバン出てきます」
「今現在3体確認されている巨大な怪物の事か」
「で、それがチャッカマンと戦います」
「大筋は決まってるのね」
「で、今学園描写的な部分で止まってます」
「「「がくえんびょうしゃあ?」」」
三人の声がハモり、俺は頭を抱える。
「待ってください、なんで怪獣が頻発する世界で学園が出てくるんですか?」
「いや…なんというか」
「普通、怪獣にどう対抗していくかを描写していくのがセオリーだろうそういうのは」
「そういうのはもう少し先にしたいというか」
「それでつっかえて世界の進行が止まったら本末転倒なのー」
全くその通りだ。
慣れない描写をやろうとしているせいで作品の進行がかれこれ1年近く止まっている。
ここは思い切って違う描写をすべきなのかもしれない。
だが…。
「でもこう、出てくる人物的に学校が一番自然じゃないかというですね」
「そうかも知れないけどもそれで詰まっているの、ここは思い切って別の描写にするのも検討すべきなの」
「そうか…でもどんな…」
「どんな人物にスポットを当てたいんだ?」
「エルフの少年と、あとサイボーグですね、それから敵のアンドロイドが物語りに関わります」
「平和な村にアンドロイドが行ったら騒ぎになりますね」
メラルダ氏の言葉に、うんと頷く俺。
そこだ、閉鎖的な村でアンドロイドが受け入れられるまでの繊細な描写、それができないから詰まっている。
「そうですよね…そこからどうアンドロイドが受け入れられるか…」
「ならもっとアンドロイドが受け入れられやすい環境にそのエルフの子供とサイボーグがいた事にすればいいんじゃないか?」
キルク氏の言葉に、俺はハッとなった。
この人は本当に俺の中から出てきた人物なのか?
いや、元ネタは別の人が作ったキャラだからこういういいアイディアが出てくるのだ。
「それだ…冒険者パーティーなら受け入れられやすい」
「いいじゃないか、決まりだな」
あーつまらん事で時間を無駄にしたという感じで天を仰ぐキルク氏。
そんな退屈だったなーみたいな対応されるとちょっと意地悪したくなる。
「キルク氏、貴方のパーティーの構成を言ってみてください」
「あ?……荷物持ちの見習いのジテンとよそ者のユージーン……少年とサイボー…いや、さっきまで絶対違ったよな?」
「世界を書き換えました、おめでとうございます、今より貴方は結構描写されるキャラクターです」
「何ィ!?」
何か文句を言う前に、俺はさっとキルク氏を現実へ帰還させる。
キルク氏、本編での活躍、頼みましたぞ!
さて、と俺は残ったメラルダ氏とジャフ・マラー氏に頭を下げる。
「いやはや、皆様のおかげでチャッカマン第三話の続きが書けそうです、本当にありがとうございました」
「いえいえー、でも…」
「わかってますよー、本編での活躍はご期待くださいな」
やはり見返りを期待しているらしいジャフ・マラー氏にサムズアップし、現実へ帰ってもらう。
なあに、あの手の人は現実でも架空世界でもよっぽど悪事しなきゃ地位が緩んだりはしないんだ。
多少いい目見たって読者は自然に感じるだろう。
「では私も…」
「あの…ちゃんと本編ではもっとちゃんとした神が出るんで、ご心配なく」
「ふふ…別にこのままでも構いませんわよ」
そう言って笑顔で現実へ帰るメラルダ氏。
アカン、神は優しいお姉さんに弱いとかそういうのが神話でなりたっとるんかな?
メラルダ氏めっちゃいい人やん、惚れそうや。
「さあってそれじゃあ…」
「あのお…」
早速執筆へ向かおうとした俺をアシスタントの女の子が呼び止める。
「私にも…何か…」
「あー…」
そうだ、せっかく手伝ってくれたのに何もしないんじゃ神として義理が立たない。
しかしこの娘は俺が作ったキャラじゃないし名前も設定されていないから、本編で出すのは難しいだろう。
今もこの、両側を結んでる髪型をなんて呼んだらいいのかわからず描写しにくい娘だ。
そもそも俺も彼女気になってたんだけども、どうだしていいかわからないってのが強かったので出せなかったりしているのである。
「…うん、まあ、こう、俺のキャラと抱き合わせになるけども、なんかこう、いいようにしよくわ」
「は、はい!」
嬉しそうにそう言って、現実へ戻っていく女の子。
いやはや、一仕事増えてしまったな。
さて。
読んでくれた読者の皆様、この場を貸してくださった…いや他の神の名前は言っちゃだめだよな。
兎に角一枚絵を投稿してこうしてキャラクターと語らう場を用意してくださった方、ありがとうございました。
これからもミシュガルドを応援してくださいね!
……っよし、カメラとめm