LOST WORLD
プロローグ
西暦2050年 日本
某県某市に住む15歳の少年「コウスケ」
その日は学校の卒業式。
最後の中学生活を終え、帰宅すると
家が燃えていた。ものすごい勢いで燃えていた。
パチパチと火の粉が飛び散り、あたりにはいつの間にか野次馬がいる。
近所の人の噂話が聞こえてくる。
「何でも、原因は夫婦喧嘩らしいわよ。」
「いやそれは無いわよ。」
「だって私、奥さんがフライパンもってまだ中にいる旦那さんに殴りかかろうとしたのを見たのよ。」
「でもどうやったら火事になるのよ。」
コウスケは何も考える余裕が無かった。頭がパニックになっていたのだった。
気が付いたら、日は暮れ、家は燃え尽き、野次馬は消え、残っているのは救助隊だけだった。
「おい!しっかりしな!大丈夫か?」
近くにいた救助隊の一人が我に返ったコウスケに気づき、声を掛けた。
言いたいことは山ほどあったが、それを飲み込んで、
「父さんと母さんは無事なんですか?」とだけ聞いた。
だが返事はコウスケの期待に反したものであった。
「君はあの家の子かい?」
「質問に答えろ!」
「………残念だが、もう……」
大きくため息をつく。救助隊の人はコウスケを励ましているが聞こえていない。
そこにやってきた1台の黒い外車。
窓を開け運転手が顔をのぞかせて
「…コウスケ君だね?」
その肉付きのよいでっぷりした顔でコウスケをじっと見つめている。
しかし、コウスケは返事をしない。聞こえていないのかもしれない。
「……乗りな。」
運転手がそう言うと、コウスケはためらいも無く車に乗り込んだ。
2時間後、車は高速を走っていた。
「あの、どこ行くんですか?」
なぜかコウスケは落ち着いている。
どうしてか、まるで家の中でくつろいでいるような、そんな雰囲気だったからである。
「いずれ分かる。」
運転手は短く返事をした。
だが、コウスケにはもう一つ疑問があった。
それは、何故あの時ためらいも無く車に乗り込んだか、ということである。
しかし、それを聞いても運転手は答えを知っているはずはない。
車は高速を走っている。もう夜だ。
「寝ろ。」
コウスケは無愛想な人だな、と思った。
だが、それ以外にすることも無いので目をつぶり眠ろうとした。
不思議なことに、睡魔はすぐに襲ってきてコウスケは深い眠りにつくのであった。
車は高速を走り続けた。