Neetel Inside 文芸新都
表紙

LOST WORLD
第1話 ハジマリ

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「君は、魔法使いなんだ。それもただの魔法使いじゃない。才能に満ち溢れているんだ。」

いきなりだが目の前に座っている男にこんなことを言われた。

もちろん俺は気が狂っている連中ではないし、妄想野郎でもない。

では何故このような事を宣告されたのか、少し時間を遡って説明しよう。

その日は中学の卒業式であった。

三年間過ごしてきた仲間と最後の時間を…と言えば格好はつくのだが、残念ながら最後まで馬鹿やってた。

で、校長から最後の怒りを浴び、帰路についていたのだが、家の近所に近づくにつれなんだか騒がしくなってきた。

気のせいかサイレンの音も聞こえる。家の方向に黒煙が昇っているのが見えた。

不安は的中。

俺の家、燃えてます。すっごい勢いで燃えています。

近くにいる野次馬の会話を聞くと、

「噂だと、夫婦喧嘩が原因らしいザマスよ。」

「そんなふざけた出火原因があってもいいの?」

「隣の奥さんが火事になる直前まで二人が喧嘩しているような声を聞いたみたいザマス。」

…そうだ!そんなことより父さんと母さんは大丈夫だろうか……!

近くの消防隊員に聞くと、

「救助に何人か向ったけど誰もいなかったみたいだよ…?」

おい、そんなはず無いだろ。

家に帰る前に電話したらちゃんと出たし、俺の家から学校までは歩いてそんなにかからない。

もし俺が電話に出た後に火事になったらこんなに早く火は回らない。

かといって、火事になってから電話に出るのもおかしい。

……どうなっている?

「……コウスケくん…だね?」

振り返るとそこには黒い外車に乗った一人のオッサンがいた。

呼ばれた名前が『昂介』なら俺のことなのだろうか…

「俺の事ですか?」

一応確認。でもこの人は明らかにちょっとヤバめな人だと俺の第六感が予言している。

「早く車に乗って!奴らが来る!!」

第六感的中。このオッサン、誘拐しようとしてる?

あいにく、俺はちゃんと昔から『知らない人にはついて行かない』と躾けられてきた健全な少年だから乗らない。

「何ボーっとしてる!!死にたいのか!」

消防隊員さーん!ここに変なオジサンがいますよー!

…ってオッサンどうした?顔青いぞ。

「伏せろ!!」

その声が言い終わる前か後か、そんなことはどうでもいい。

とにかく、今大変なことが起きた。

大爆発。俺は車が障害物となり軽く吹っ飛ばされるだけで済んだ。

だが、厄介なことに腰が抜けて立てなくなった。

そして、更に厄介なことにあの変なオジサンが俺を車に拉致して猛スピードで走り出した。

「出せ!この変態!!」

俺は声の音量フルパワーで叫んだ。

「死んでもいいなら出してやるぞ。」

またしても言い終わる前に後ろの方で爆発が起きた。

どうやらこのオッサン、爆発の事と関係があるようだ。

だったら俺が車に残ってオッサンが降りたらいいジャマイカ!

早速オッサンに掴みかかろうとしたが、困ったことに体が動かない。

腰が抜けて動けないのではなく、もっと別の力が働きかかって俺を押さえつけているようだ。

俺動けない、後ろから爆発、オッサン爆走。

俺的には最悪の状況。

「……昂介君だったね。悪いけどちょっと眠っててくれるかな?」

それが俺の聞いた最後の言葉だった。

       

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