1日目
「まずは君の使う魔法の属性を調べよう。」
そういうといい男、もといアベルさんは綺麗な黄金の球をだした。
「こいつを見てどう思う?」
特に何も変わった印象をもてない…
「すごく…大きいです。」
なんか、こう会話のキャッチボールが微妙にちぐはぐな感じがする…
「うれしい事言ってくれるじゃないの。こいつは君がどんな魔法が使えるかを教えてくれるものなんだ。さぁ、手に持って。」
手に持った瞬間。俺の頭の中にあのときの火事が浮かんだ。
思い出したくないから別のことを考えようとすればするほど炎のイメージは濃く、鮮明になっていく。
気がつくと俺の手には炎が纏っていた。
「……炎か。」
何故かアベルさんの声が弱弱しく聞こえた……
2日目。
今日はマシロの家の庭でアベルさんと本格的な魔法の決闘の特訓が始まった。
何故かマシロも一緒にいる。
「君は特訓しなくて良いのかい?」
「私は昂介さんの回復役です。というかそれが修行です。」
……なるほど。
そして特訓が始まった。
「最初の目標は炎を出すことだ。それ以外は考えなくて良い。」
「ハイ。」
右手に炎のイメージ。赤くて、熱いイメージを連想する。
が、出ない。1分程頑張ってイメージを持続させても上手くいかない。
「ちょっと休憩しよう。」
特訓が開始してから3時間経ってからアベルさんは言った。
マシロは暇そうに飛んでいる蝶をぼんやりと眺めている。お気楽なものだ。
「もっと集中するんだ。」
突然、背後にいたアベルさんがささやいた。
正直かなりビビッた。というか引いた。
「魔法で大切なのは集中力だよ。」
そう言われた俺は再び右手に炎のイメージを連想した。
しかし、どう頑張っても炎は出ない。
1歩も前進できないまま終わるかと思った時。右手からかすかに火がついた。
「今の…もしかして…」
「…成功だね。」
静かにだがはっきりとアベルさんは言った。
そうか…遂に俺にも魔法が出来たか。
なんだかうれしくて涙が出てきた。
「昂介さん。泣くのはまだ早いですよ。明日からは更に厳しい特訓が待っていますよ。」
「そっか…ってことは今日は終わり?」
「そうだ。続きは明日だ。それと明日は疲労が溜まるからね。覚悟しといてよ。」
……ここからが本当の地獄だ…そんな気がした。
3日目
「今日は昨日より大きい炎を作るんだ。」
まぁ、予想していた特訓だ。だが彼の言葉には続きがあった。
「――5秒以内にだ。」
冗談だろ?小さい火でさえだすのに1分程の時間がかかる。
ましてや大きいものなど……
「無理だろ?」
突然、アベルさんがそんなことを言った。
「俺もこんな短期間では無理だと思った。でもそれを可能にする方法が1つだけある。」
「それはなんですか?」
「ここにタイマツがある。火を灯して君の右手をそれで焦がす。」
なんですと?
「心配いらない。マシロに回復させてもらえば何回でも出来る。」
なるほど。
「右手を炎で包めば君もイメージがより鮮明になるだろう。それにこの特訓方法はマシロも回復の練習が出来る。」
一石二鳥というわけか……
「やらないか?」
俺は頷いた。