私はとんでもない口下手だ。
長い言葉を言おうとすると舌を噛むし、気の利いたことを言おうとすれば途端にわけのわからないことを言っている。
「どうしたの?」
「・・・ん」
顔色を曇らせている私に友達が声をかけてきた。こういうことには気の回る友人を持てて私は幸せだ。
「・・・舌足らず」
・・・何を言っている私は、ここは大丈夫とでも言っておけばいい。余計な心配はさせたくない。そう思って私は顔を隠すようにメロンパンを頬張った。
「良いところだよそれは・・・味がある」
「味?」
「個性?」
「生き様?」
「自分自身?」
考えてるうちに馬鹿らしくなってきた。そうだ、口下手も含めて私だ。
私は自分の口下手を好きになろう。そう思った
六月三日 土曜日
暗く湿気が立ち込めてそうな部屋に汚らしい風貌の男がいた。
剃りきれていない髭。不潔感漂うぼさぼさの髪。吹いてないメガネ。
その男はきんぱっつぁんにも腐ったみかんと言われそうなオーラを纏っている。
「こんな日記書いたらどれくらいの人間が釣られるか楽しみだお」
男は不適に笑った。