深淵の瞳
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やけに真っ赤な部屋だった。
そして、やけに血なまぐさい部屋だった。この部屋はちゃんと掃除をしているのだろうかと、ふとそんな場違いな事を考えてしまう。
手錠がやけに重いが、その感触もあと数時間の話だ。
この赤いのは、はたしてこの「眼」が原因だからなのだろうか? いや、もう考えないでおこう。
――出ろ。
鉈を抱えた男が、意地汚く唾液を垂らしながらそう叫んだ。尋常ではない声量にももう慣れた。
――ふふ。
思わず笑みを零してしまった。
全ては、way:の、あの男の手で踊らされてただけの事で…。
人質も、結局はただの「偽物」にしか過ぎなかった。
コピーという意味ではない。
この世界には本当に分かり合える人間なんていないのだろうか。
なぁ、教えてくれよ。Mr.suicide……。
なぁ、教えてくれよ。水島……。
なぁ……。
尋常ではない量の血液が散っている壇上に僕は登る。
ああそうだ。最後に一つ『彼女』に届け物をしなくては。
あえて彼女に送ろう。君に全てを託したいんだ。
君に――
鉈は、そこで振り下ろされた。