Neetel Inside 文芸新都
表紙

深淵の瞳
act break

見開き   最大化      


   -actbreak-

 やけに真っ赤な部屋だった。

 そして、やけに血なまぐさい部屋だった。この部屋はちゃんと掃除をしているのだろうかと、ふとそんな場違いな事を考えてしまう。

 手錠がやけに重いが、その感触もあと数時間の話だ。

 この赤いのは、はたしてこの「眼」が原因だからなのだろうか? いや、もう考えないでおこう。

――出ろ。

 鉈を抱えた男が、意地汚く唾液を垂らしながらそう叫んだ。尋常ではない声量にももう慣れた。

――ふふ。

 思わず笑みを零してしまった。

 全ては、way:の、あの男の手で踊らされてただけの事で…。

 人質も、結局はただの「偽物」にしか過ぎなかった。

 コピーという意味ではない。

 この世界には本当に分かり合える人間なんていないのだろうか。

 なぁ、教えてくれよ。Mr.suicide……。

 なぁ、教えてくれよ。水島……。

 なぁ……。

 尋常ではない量の血液が散っている壇上に僕は登る。

 ああそうだ。最後に一つ『彼女』に届け物をしなくては。

 あえて彼女に送ろう。君に全てを託したいんだ。

 君に――


 鉈は、そこで振り下ろされた。

       

表紙

硬質アルマイト [website] 先生に励ましのお便りを送ろう!!

〒みんなの感想を読む

Tweet

Neetsha