Neetel Inside 文芸新都
表紙

ロリロリ戦隊ロリレンジャー
第二話 青い空!そんなの関係ないヒキコモリ!

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 ニュースを見てわかったことだが、智ちゃんは自殺したようだった。俺は目でテレビの動画を追いかけながら画面を眺めていた。
 環君の後追い自殺・・・

 夕食を食べたかどうか覚えてはいない。本当はハンバーグなんて夕食にでてなかったかもしれない。俺の記憶を疑いたくなる。
 自分の部屋のタンスの中の服の海を泳ぎ、智ちゃんからもらったマフラーを深海からだした。
 智ちゃんのにおいがする。俺の智ちゃんがここにいる。俺は智ちゃんを抱いた。そして、俺はふかふかな殻に閉じこもる。

     

 俺の好きだったはずのアニソンが聞こえる。外が明るい。どうやら、もう朝らしい。俺は自身の携帯電話に手をのばし、アニソンを消す。俺手作りの萌えアニメのキャラのキーホルダーが笑っている。こんなにこのアニソンは不快だっただろうか? このキーホルダーの笑顔が憎いと思ったことがあっただろうか?
 昨日の出来事が夢ならいいのに。自分の部屋の人の頭より少し大きいくらいのテレビをつける。ニュースが流れていた。昨日の出来事だ。一日で同じクラスの生徒が二人いなくなっているため、当然話題になっているようだった。一人は失踪、一人は自殺。   
 俺は急いでチャンネルを変え、アヒルの中の人の番組に変えた。そしてまた、俺は自分の世界に閉じこもった。目の前が暗い。俺が認識できるのは臭覚のみ。智ちゃんが目の前にいる。
「藍那ちゃん。ごはんできたわよー!」
 おふくろの声だ。俺は自分と智ちゃん二人だけの世界を一切発さない。
「ゆうちゃん。藍那ちゃんを起こしてきてくれないかな?」
「ふぁーい」
 頼りのない間抜けな返事をしたのは、俺の兄の日比野 結城(ヒビノ ユウキ)。中学二年生だ。趣味は俺と同じ。まぁ、ゆうちゃんにネットについての知識は教えてもらったから当然だ。
「おきろー。あいなー。朝だぞー」
 異邦人が俺の元にやってきたらしく、異邦人は俺の世界を右手と左手という騎士達によって俺の国を侵略する。
「やめて・・・・・・学校に行きたくない」
「・・・・・・そうか」
 智ちゃんと家で遊んだことがあったため、兄は智ちゃんを知っている。兄はニュースを見たらしく、この状況を理解し、この場を退場した。いつも頼りなさそうに見えた兄はおふくろに上手く説明してくれるかどうかが心配だ。

     

 ドタバタドタバタ・・・
 俺は二度目の現実逃避をし、智ちゃんとの楽しい時間を過ごしていたときだった。足音が俺を智ちゃんのいない世界へと無理やり連れ戻す。誰だろうか。ゆうちゃんは学校に行っているはずだ。親父は単身赴任中だが、帰ってくると聞いていない。携帯のデジタル時計を確認したが、おふくろはパートに行っている時間帯のはずだ。何事だろうか。俺はベッドから体を起こした。
 ドアノブの音、ドアが開く。
「私と共に来てください」
 チェンジお願いします。本当に。デリヘルを頼んだ覚えも、家庭絵画講師を頼んだ覚えも、家庭絵画講師をよぶような人形を持っている覚えも無い。この不法侵入してきたデリヘルは誰かと思えば、昨日の北欧美少女金髪ツインテールのメイドさんだ。
 しかし、このデリヘル嬢はチェンジを無視する上、俺の服の襟を鷲掴みにする。こんな拉致プレイ初めてだ。顔の表情をデスマスクのように変えない。俺はほんの少し、蟻よりすこし大きいくらいの恐怖心を抱いた。首に巻いた智ちゃんのおかげで不安な気持ちも少しはやわらぐ。

     

 俺は家の外に連れて行かれる。俺はパジャマに着替えず寝たため、昨日と同じ服だったのは不幸中の幸いだった。パジャマで外にでるなんて恥ずかしい。金髪ツインテールのメイドさんは、俺の住んでいる家の鍵を閉める・・・・・・? えっ!?
「おい、おまえ! どうやって家に入ってきた!」
 俺は思わず怒鳴り声をあげてしまった。
「針金を使いました」
金髪ツインテールのメイドさんが俺の方を振り向き、顔の表情を一切変えずに言った。針金を使った割には早いな。裏で泥棒でもして生活しているのだろうか。
 金髪ツインテールのメイドさんはもくもくと俺を引きずっている。
「ところで、おまえ、俺をどこに連れて行くつもりだ。いや、どこの国と言ったほうが正しいか」
 金髪ツインテールのメイドさんはこちらを振り向いて、無機質な視線光線を浴びせる。心が一瞬転んだように思えた。
「どこの国にも連れて行きません。新しい一筋の光を浴びた人を感知しましたので、その人の家に行くつもりです」
「どうやってみつけたんだ」
「私が光を浴びて得た能力のおかげです。この能力は一筋の光や、黒い光線を浴びて怪物化したものを感知する能力を持っています」
 そういえば、この金髪ツインテールのメイドさんは俺の家の場所を知っていたのも、俺の目の前に突然現れて戦えといったのも、この能力のおかげだろうか。
「そもそも、おまえ独りで行ってもよかっただろ。なぜ、俺を拉致る必要がある」
「貴方の同級生の方です。ですから、説得しやすくなると思いました。」
「どうして同級生だと言い切れる」
「ネットで調べました」
 これが噂にきく、スパーハッカー(笑)という奴か。都市伝説かと思っていたよ。
 そういえば、まだ授業中だよな・・・・・・みんな、どうしてるかなぁ・・・・・・
 ん?授業中?
「そういえば、今授業中だ。その人の家に行っても、俺の同級生はいないはずだ。なに?欠席でもしてるのか?」
「いいえ、ひきこもりの方です」
 ラッキー、クッキー、ヒッキーの方ですか。そういえば、あいつ、新クラスになってから学校に来た覚えないな・・・・・・

     

 それは去年、俺が小学二年生のとき。季節は夏休み明けの9月。まだVIPではらきすた気団が猛威をふるっていた時期だ。

     

 2-3、俺が二年生のころいたクラスだ。
 そのとき、俺は携帯で、アニメを見ていた。どうやってアニメを携帯に入れたかは未来の国から禁則事項で罰せられていることにでもしておこうか。
「やーい! やーい! 大向病がうつる!」
「パンツ泥棒になるですぅ! 触ったからパンツ泥棒になるですぅ! えった!」
「ふぇ・・・・・・ボク、パンツ泥棒じゃないよ・・・・・・ふぇぇぇぇぇん」
 DQN・・・・・・って小学生の男子に使うのは適切なのだろうか。男子三人グループは髪を顔に覆い隠した少女の周りでさわいでいた。
 髪を顔に覆い隠した少女の名前は大向淳(オオムカイジュン)。わりと可愛いほうだと思っていた。
「・・・・・・」
 淳にゃんは机に座り、下を黙りながらうつむいていた。机の上には小さな池ができていた。ちなみに、淳にゃんとは某エロゲの女装ショタと字が違えども名前の読み方が同じだったので、俺が名付けたあだ名だ。
「男子! やめなよ!」
 あまりにもかわいそうだったので、俺は芳野さくらを装備した携帯を投げ捨て、声がでてしまった。
「かわいそうなことあるですか! こいつのお父様はパンツ泥棒ですぅ!」
 この、“のびた”・・・・・・もとい“メガネザル”・・・・・・いや“メガネネギ”の方がいい。“のびた”だったら様々なパロディ漫画ののびた君一人一人にお詫びしなければならない。“メガネザル”もメガネザルにとっては申し訳ない。彼のやせ細った体質とメガネから、俺の脳内ニックネームはメガネネギにした。
 このメガネネギが言ったのは紛れも無い事実。そう、淳にゃんの父親はこの年の夏。市のプール浴場で女子児童のパンツやスク水をイッパゲしたとイッパ・・・・・・モッパらテレビで話題になっていた。なんでも盗んだ数が尋常じゃないから話題になっていた。百人分。毎年イッパゲしていたという話もある。なんとも羨ましい・・・・・・じゃなくてイッパゲな話だ。
「だからこいつに触ったらパンツ泥棒だ!」
 リーダー格の男子が言ったのは、無茶苦茶な理論だった。ゲーム脳、野球脳も無茶苦茶な理論だが、こいつの言っていることには納得する余地がなかった。余地があったら納得というホタテの貝殻でも投げ捨てたいものだった。
まさに、小学生・・・・・・小学生だよな。
「そんなことないでしょ! 男子!」
「藍那ちゃんのいうとおりだよ?」
 俺の後ろからひょっこりでてきた少女は・・・・・・思い出したくない。省略。あのときの笑顔がまぶしすぎる。
「先生に言うよ!」
 小学生にとっては先生は絶対的存在、唯一無二、わかりやすくいえば、太陽。先生は司法権、行政権、立法権の全ての権力を握っていらっしゃるお方である。こうすれば、ひとまず、事は終わらせれると思っていた。
「女子うぜぇー。おまえら行くぞ!」
「ふぇ・・・・・・ボクパンツ泥棒じゃない・・・・・・」
「おまえもさっさと行く!」
 リーダー格の男子は泣き虫男子の襟をひきずって自分の席に退場した。
「大丈夫だった? 淳にゃん?」
「・・・・・・ありがとう」
 淳にゃんの顔の天候が雨から回復して快晴へと変化した。これで終わればよかった。

     

 その日の放課後
 小動物のように小さかった・・・・・・省略。と一緒に靴箱に来たときだった。
「・・・・・・ヒック・・・・・・ヒック・・・・・・ない」
 淳にゃんだ。淳にゃんの天気は大雨。大洪水がおきている。例年にない現象だ。研究心がうずいてきた。
「どうしたの? 淳にゃん?」
 俺は淳にゃんに尋ねた。
「・・・・・・ヒック・・・・・・ヒック・・・・・・ない」
 スコールを振り落とす淳にゃんの指をさした方向には靴箱があった。
「靴をなくしたの?」
「・・・・・・ヒック・・・・・・ヒック・・・・・・コクリ」
 淳にゃんがうなずく。どうやら靴をなくしたらしい。
「私、探してくるよ!」
 俺は言った。ここで、誤解をまねかないために俺の一人称は外では私を使っていると注釈な。
「****ちゃんは先生に伝えてきて!」
「わかった!藍那ちゃん!」
 俺は走った。女子トイレ・・・・・・用務員室・・・・・・階段の踊り場・・・・・・体育館・・・・・・体育倉庫・・・・・・自分のクラス・・・・・・ぬぬ?
 俺は自分のクラスに来たところで立ち止まった。
「大向の靴げっとー」
「やめた方がいいと思うよ・・・・・・」
「大向さんのお父様は数々の女子から水着やあれこれを盗んだですぅ。だからこれは正しい行為なのですぅ」
「そうかなぁ・・・・・・」
「さっそく、靴投げ大会しようぜ!」
 例の悪餓鬼三人組だ。リーダー格が淳にゃんの靴と思われる靴を持っていた。
「こらぁ! 男子達! そこで何してる!」
 俺は拡声器無しで拡声器を使っているのかと思うくらいの音を発した。
「やべ! 女子だ! 逃げろ!」
 リーダー格の男子は逃げろ逃げろスイッチをあわててONにした。そのとき
「あっ!」
 リーダー格の男子の持っていた靴は空を飛び、金魚の水槽にドボン。
「お・・・・・・おまえがいけないんだぞ!」
 おまえが政治家になったら、他人に悪いことを擦り付ける悪い政治家になるな。
「ちがうでしょ!男子!」
 俺はもちろん反論する。
「こら!三人組!」
 先生だ。といっても、これだけだったら語弊がある。当時の俺のクラスの担任だ。後ろにはひょっこりと淳にゃんと小さい・・・・・・省略。
「・・・・・・!?」
 淳にゃんは自分の靴が水槽の中で金魚と水泳大会をしていたのを目撃したようだった。
「・・・・・・!!」
 淳にゃんは腕を目にあてて走った。それ以後、俺は淳にゃんを見ることはなかった。
 余談ではあるが、男子達はもちろんこっぴどく叱られた。

     

「つきました」
 俺が心の押入れから探し出した小学二年生のころのアルバムを読んでいると、金髪ツインテールメイドさんの声が未来へと送り返した。
「ここが、淳にゃんの家か・・・・・・」
 二階建ての家だ。ドラえもんののびたの家やちびまるこちゃんのまるこの家。例えをいくらでもあげれそうな、中流庶民、日本を代表する一軒屋。
「はいりますよ」
 金髪ツインテールメイドさんはゆっくりと針金をだす。
「ちょっと待てよ。最初は玄関のチャイムくらい鳴らせよ」
「日本にもチャイムはついていたのですか?」
 日本をバカにしてるのか。いや、こいつなりのアメリカンジョークかもしれない。真顔で言うな。真顔で。
 金髪ツインテールメイドさんの細い指が呼び鈴のボタンに触れる。
 ピンポーン
 ・・・・・・
どうやら、このチャイムはただの屍のようだ。
「いないようですね。では、鍵を開けましょうか」
 と、金髪ツインテールのメイドさんが言ったときだった。
「・・・・・・藍那ちゃん?」
 淳にゃんの声だ。淳にゃんの声がスピーカーからする。
「淳にゃん! 久しぶり! 鍵開けてくれる?」
「・・・・・・」
「開けてくれないかな?」
「・・・・・・いいよ」
 淳にゃんの返事と同時に開ける音
「開けました」
 金髪ツインテールのメイドさんがお得意の針金テクで開けてくれたようだ。返事を聞く前から、開けようとしていたらしい。少しはまってやれよ。

     

 階段をゆっくりとゆっくりと降りてくる音。
「・・・・・・おはよぅ」
 淳にゃんが玄関にでてくる。前髪がのびて、目の前まできている。体を覆っているのは青色のパジャマ。
「・・・・・・だれ?」
 俺の前に立っている金髪ツインテールのメイドさんのことをいっているらしいな。
「私の名前はMalina・天田(マリナ・アマタ)です。そして、こちらは日比野藍那です」
 そういえば、金髪ツインテールのメイドさんの名前初めて聞いたな。マリナか。どんなあだ名がいいのだろうか。ところで、なんで苗字だけ日本人なんだ?そういえば、俺は金髪ツインテールのメイドさんに名前を教えてやった記憶はない。俺の名前も調査済みか。すごいな、スパーハカー(笑)って。
「私と共に戦いなさい」
 俺が始めてこのメイドさんとであったときと同じ事を淳にゃんに対して言った。以前俺に見せたことのある表情と全く同じ無表情な顔で。
「・・・・・・?」
 淳にゃんはどうすればいいかわからない様子だ。正常な反応。健康状態、良好にチェック。
「・・・・・・待って」
 どうしたんだ? 淳にゃん? 何をしてるんだ? 突然オナニーしたくなったのか? トイレか?
「・・・・・・あがって」
 しばらくたった後、淳にゃんがまた飛びだしてきた。

     

 淳にゃんに案内され、階段を上ってすぐの部屋は淳にゃんの部屋のようだった。ベッドがひとつ。パソコンがある。割と綺麗だが、ところどころにほこりが目立つ。掃除してない部屋を急いで片付けたのだろうか。案外、物置とかに無理やりものを押し込んでいたりして・・・ブワッ! 押入れを開けたとたん雪崩だ!
「・・・・・・話はここで・・・・・・え!?」
「大丈夫ですか? 藍那さん?」
「お・・・私は大丈夫だよ」
 突然の出来事に動揺して、俺は久々、いや初めて友達の前で俺を使うとこだった。金髪ツインテールメイドさんの前でも使ったことはあるが、まだ俺は友達だと認めてはいない。俺はようやく雪の中から這い上がって、現在自分のいる場所を確認した。芳野さくら、朝倉音夢、天枷美夏。なんだ、アニメの見すぎか。いや、違う。これはフィギュアだ。この雪にはエロゲ、ギャルゲ、その他フィギュア各種が見える。ごめんなさい、こういう時どんな顔すればいいかわからないの。
「・・・・・・」
「・・・・・・おなか空いたなぁ。ところで、淳にゃんのお母さんってどこにいるの?」
 とりあえず、スルーの方向で。淳にゃんの意外な一面を見た気がする。まさか、淳にゃんのような人物がエロゲなんてしてるとは思わなかった。この年齢でエロゲとか趣味にしてる人は同じ邪気眼の能力者を持つものを探すのよりも難しいことだろう。
「・・・・・・パート」
「いつも、お昼どうしてるの?」
「・・・・・・菓子パン。食べる?」
 部屋に飾られてある時計をみるとジャスト正午。
「よければ、私が作りましょうか」
メイドさんことマリナさんが声を発した。
「・・・・・・うん」
「賛成。マリナさんの料理が作れるとは思わなかった」
 てっきり怪物を料理するだけかと思っていたよ。
「それでは、何がいいでしょうか?」
「・・・・・・カレー」
 気分も安らいできたからハンバーグ作ってもらおうかな。何ヶ月のハンバーグになるかなぁと思っていたら先を越されてしまった。
「材料を買ってきますので、私はこれで失礼します」
 メイドさんがゆっくりと退場した。
「エロゲ見つかったくらいでくよくよしちゃ駄目だよ」
「・・・・・・」
「一緒にエロゲでもしようか?」
「・・・・・・うん」
 エロゲを見られて恥ずかしがってる子にどういう対応をすればいいのかわからなかったので、とりあえず俺はこういう反応をした。

     

 俺は淳にゃんと一緒に部屋を片付けて、一緒にエロゲをした。淳にゃんはこういう状況は初めてだろう。俺も初めてだ。淳にゃんも攻略済のエロゲらしいが新感覚だ。ごめんなさい、こういうときどんな顔をすればいいの? ぱぁとツー。

     

「買出しから帰ってきました。今からカレーを作ります」
 マリナさんが帰ってきたようだ。
 カレーによるハーメルンの笛の音に誘われて、淳にゃんと一緒に階段を下り、マリナさんの調理場にやってきた。
「マリナさん。何か手伝えることはある?」
「・・・・・・僕も」
 マリナさんのとなりに俺と淳にゃんはひょっこりひょうたん島。そういえば、淳にゃんの一人称って僕だったか。
「マリナさん・・・・・・? 泣いているの?」
 無表情で砂漠のようだったマリナさんの目が今はオアシスになっている。
「泣いていません」
 と言いながらそっぽを振り向く。
「独りにさせてください」
 マリナさんに言われ、俺達は淳にゃんの部屋に戻る。

     

「カレーができました」
 マリナさんの声がする。マリナさんの顔は、いつものように砂漠に戻っている。あれは蜃気楼だったのだろうか。いや、あれは現実だった。たしかに泣いていた。なぜだろうか。
「・・・・・・美味しい」
「マリナさん、このカレーおいしいよ」
「ありがとうございます」
 マリナさんが走りながらトイレに向かう。どうした? そんなにトイレにでも行きたかったのか? と冗談はこれくらいにして、トイレで泣いたのだろう。なぜ、カレーで泣くのだ?

     

「ごちそうさまでした」
 淳にゃんと供にカレーを食べ終わる。
「淳にゃん? たまには学校にこいよ」
「・・・・・・僕、変態の娘」
「そんなことないよ、人間は生まれながらにして変態なんだよ。ただ、淳にゃんのお父さんは暴走しちゃった感じかな」
「・・・・・・悪餓鬼三人組怖い」
「淳にゃんを虐めるような奴がいたら私が守ってあげるよ」
 俺は淳にゃんの髪から目を見つけ出し、じっと見つめる。
「・・・・・・本当?」
「本当だよ!」
 俺は今日、いや俺内の表情年間ランキングベストテンで1位に光臨しそうな笑顔を見せた。
「・・・・・・あのとき、藍那ちゃんが始めて悪餓鬼三人組を追い払ってくれた」
「そういえば、そうだね」
「・・・・・・智ちゃん元気?」
「・・・・・・」
 俺は一瞬で自分の言葉にアストロンがかかった。
「・・・・・・?」
「・・・・・・死んだ」
「・・・・・・なんで?」
 淳にゃんの家という立方体の空間に言葉が響く。
「信じられないかもしれないが、怪物になって・・・」
 俺はあのことをかくかくしかじか。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
 この三点リーダはどっちが智ちゃんで、どっちが俺のだろうか。いつの間にか戻ってきて空気とユニゾンしているマリナさんの三点リーダも含んでいる。
「ただいまー!」
 空気嫁、空気。誰だよ。
「・・・・・・おにいちゃん」
「おにいちゃん帰ってきたのか?早いな」
 淳にゃんのおにいちゃんをなぜ知っているかというと、ゆうちゃんこと俺の兄貴と友達だからだ。ゆうちゃんが中学にはいったとき知り合いになったらしい。それ以来、いい友達になっている。ちょくちょく俺の家にきてMUGENをして遊んでいた。こなたとかハルヒとか銀様とか使っていたがこういう付き合いもありなのかねぇ。もう、二人でイッパげ・・・じゃなくて肉体関係までに発展していてもおかしくないな。いや、おかしいか。と一人突っ込み。
「・・・・・・今日五時間授業」
 もうそんな時間か。時間がたつのが早いな。まるで、誰かさんの都合がかかわっているのじゃないかとも疑えてしまう。
「あ、藍那ちゃん来てたんだ」
「こんにちは。淳にゃんのおにいちゃん」
「そちらのメイドさんは・・・・・・?」
 そうだよな。普通気にするよな。メイドビッグバンがおきていない世界じゃ、俺のメイドだと思い込むことも無いしな。
「友達のマリナ・天田だよ」
「私の名前はマリナ・天田です」
「なんで、メイドさんの格好をしてるんだい?」
 そういえば、俺も気になるな。てっきり、怪物を倒すための戦闘服だと思っていたが。
「博士の趣味です」
「??」
「??」
「??」
 さぁて、ここでまたクイズです。さっきの三点リーダに引き続き、この??はそれぞれ誰のでしょうか?また伏線か。
「あっ! もうこんな時間! 淳にゃん。僕は藍那ちゃんのおにいちゃんの家に行ってくるからね」
 そういえば、そろそろ、ゆうちゃんも帰ってくる時間か。淳にゃんのおにいちゃんはカバンを投げ捨て、制服を着替え、外にかけだす。ここは電話ボックスの中じゃないぞ。スーパーマン。

     

「ところで、マリナさん。なんで、私は淳にゃんの家にいるんだっけ?」
「ですから・・・・・・淳さんは・・・・・・」
 その一刻・・・・・・外に一筋の黒い光が。そして、黒い光の先にいるのは熊、いや、違う。顔が無い。そうでもないようだ。熊の顔と思われるところに淳にゃんのおにいちゃんの顔が埋め込まれている。淳にゃんのおにいちゃんの顔は無機質になっている。淳にゃんの部屋の窓から人面熊を見ることができる。またしても、あの黒い光なのか。
「私と供に戦ってください」
 マリナさんは淳にゃんにたいして手をさしのべた。
「・・・・・・無理」
 俺と供に窓の外の様子を見た、淳にゃんは声を震え上がらせて言った。
 俺は窓の外を見る。熊は小学生の群れに襲いかかろうとしている。その小学生の群れは見覚えあるな・・・・・・たしか、あれは悪餓鬼三人組か!?
「俺はあいつを狩りに行く」
 大急ぎのため、初めて俺は友人の前で俺という一人称をチョイスしてしまった。
 たとえ、悪餓鬼三人組だとしても、死んだら俺のように悲しむ人がいる。たとえ、母親一人だけだったとしても、誰も悲しませたくない。
 そう、心に誓ったとき、俺は光を見にまとい変身した。真っ赤なマフラーが、真っ赤なマント、真っ赤な鎧、真っ赤な髪の毛に見事にマッチしている。
「・・・・・・藍那ちゃん!?」
「あなたも戦ってください」
 淳にゃんの驚きにあふれた声とマリナさんの声がする。
 俺は急いで淳にゃんの部屋の窓から飛び降りる。二階から飛び降りたというのにも、俺は無傷だ。無傷だと“記憶”されていたから飛び降りたのに、俺の“記憶”されてない意識は驚いている。俺は疾風のように道中を駆け抜けた。

     

 悪餓鬼三人組の悲鳴が混ざり合い黒色となっている。人面熊による恐怖、熊に襲われてる恐怖、自分達より背が高い熊による恐怖。これらの恐怖が混色をして、絵の具を混ぜあった悲鳴をだしているのだろうか。近所の人達はなんでこの光景を見ないのか? ただの子供の鬼ごっこだとでも思っているのか?
「ホークストライク!!」
 人面熊の後ろから俺は奇襲をかけた。シリアスな場面なのにこの掛け声は恥ずかしい。お願いだから俺に入ってきた中二病患者、黙ってれよ。
「グワアアアアアアアアアアアアアアアアア」
 人面熊の叫び声。いや、泣き声といったほうが正しいか。
「いまだ! 悪餓鬼三人組逃げろ!」
 悪餓鬼三人組は、突然現れたヒーロー・・・・・・と自分で言うのは恥ずかしいので後ろに(仮)とでもつけておこう。突然現れたヒーロー(仮)をじっと眺めているだけだった。
「グワアアアアアアアアアアアアアア」
 人面熊の鳴き声と供に鈍器と化した腕が襲ってくる。俺はその鈍器を次々と剣でなぎ払う。この剣というのはもちろんエターナル・ホーク・ウィング(笑)。この剣はけっこういい仕事をしているので、そろそろ(笑)を外そう。敬意をこめて、エターナル・ホーク・ウィング“さん”とでも呼んであげようか。俺と人面熊の剣と鈍器による攻防戦。人面熊の右、左のパンチを剣で受け流す。
 しかし、人面熊の右ストレートが俺のおなかを貫いてしまった。俺は吹き飛ばされ、電柱柱にぶつかってしまった。痛い・・・・・・痛感は正常らしい。そういえば、この体って仮の体なんだよな。そしたら、この仮の体で死んだとき、死んだときと同じ痛みを味わって、元の体に戻るってことか。考えただけでも恐ろしい。俺が体制を戻す前に人面熊は悪餓鬼三人組の元へ走る。
「ふぇぇぇぇぇぇぇん!!こわいよおお和国くん!!」
 和国(ワクニ)というのはリーダー格の名前だ。ショタ担当がリーダー格の右腕を抱きしめる。
「お・・・おれ・・・俺様だって・・・・・・」
 リーダー格はツンデレでいうデレ、つまり、いつもは見せない表情を見せている。
もう、駄目だ。悪餓鬼三人組は人面熊に殺される。と思った矢先。
「・・・・・・大丈夫?」
 悪餓鬼三人組の前に突然、青白い光の壁だ。青白い光の盾を手の平を開いて発生させているのは淳にゃん。日本の姫様スタイルだ。青い着物を羽織り、髪を青く染めている。人面熊の右腕が淳にゃんの発生させたバリアーらしきものにぶつかる。
「・・・・・・僕を虐めたとしても、死ぬなんて望んでない!」
 淳にゃんは優しいな。
「・・・・・・元の優しいおにいちゃんに戻って」
 人面熊は一向にバリアーらしき壁に対して、攻撃を続けている。
 銃声による交響曲が聞こえる。この交響曲は聴き覚えがある。マリナさん!
 マリナさんは表情を変えずに金色の銃という指揮棒を片手に人面熊の背後から演奏を浴びせている。
 よし、今がチャンスだ!俺は直ちに体制を立て直し、人面熊の元に走っていった。
「ウィングストライク!!」
 俺は地面を強く踏み、大空を舞い、人面熊の頭、いや体か。体の上から人面熊を切りつけた。人面熊は真っ二つになった。そして、ゆっくりと体は消え去り、もとの淳にゃんのおにいちゃんになる。淳にゃんは淳にゃんのおにいちゃんの元へ駆け寄って「・・・・・・大丈夫?」と心配そうに淳にゃんのおにちゃんの体をゆすっていた。
「名前は・・・・・・?」
 悪餓鬼三人組のリーダー格が俺に対して尋ねる。俺が誰だかわからないのか? まぁ、それだったらこちらにとっても都合がいい。名前は何にしよう。エターナル・ホーク・ウィングさんって言うのもなんかなぁ。全員小学生女子児童だからロリロリ戦隊ロリレンジャーなんてね。ちょうど、赤、青、黄がいることだし。でも、それも安直過ぎるし・・・・・・
「ありがとう! ロリレッドさん!」
 ちょ・・・・・・。普通はwwwをつけないべきだが、やっぱり表現的にはwwwをつけたほうが正しいか。ちょwwwwwwwwwwww俺いつのまに独り言しゃべってたんだ。
 悪餓鬼三人組は俺達ロリレンジャーに向かって手を振りながら退散している。弁解の余地なし。まぁ、それならそれでいいか。
「・・・・・・ロリレンジャー・・・・・・素敵」
「ロリレンジャー・・・・・・いい名前ですね」
 淳にゃんとマリナさんはつぶやいた。本当にいい名前とか、素敵とか思っているのか?
俺達は元の姿へと戻っていく。

     

 こうして、俺達はロリレンジャーとして戦いの日々を送っていくことになった。
 また後で話題に触れるが、この後男子達の元でロリレンジャーごっこが流行るようになった。お願いだからやめて欲しい。本当。

       

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