Neetel Inside 文芸新都
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光と僕を渦巻く時間

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●光と僕を渦巻く時間



眩しい。

…どうしてだろう、なんだか懐かしい。

真っ白な光に飲み込まれそうになる。

触れたら壊れてしまいそう。

そこには何があるの?

僕を解放して、

僕らの螺旋を取り戻して。









ねえ、寂しい?

ひとりでいるのは哀しい?

君はひとり?

 僕がいるのに。





鳴り響く沈黙に耐え切れず僕は声にならない悲鳴をあげる。

 僕を解放するのはその光だけ。

 闇は全てを飲み込もうと僕の足元に隠れている。

 世界で僕はひとりぼっち。

 誰も助けてくれはしない。









水面に波紋を広がらせながら僕は世界を包み込む。

サ、ミ、シ、イ

僕は壊れるまでここでこうしていなければいけないよ。

…螺子が緩んで針が進まなくなるまでだろうか。

それでも、誰かが手をつないで帰っていく。

誰も僕を待ってくれない。

僕は永遠にここに留まり続ける。




僕を残していかないで。

 僕には君しかいないんだ。

 どんなに喚いても黒い鳥のように君は残酷で冷たい。









―さよなら。








ゆっくりと目を開けるとそこには見覚えのある場所。まるで幼い頃に戻ったのような感覚になる。目の前に広がるのはめいっぱいの光と闇。―ああ、夢を見ているんだな―そこは夜の遊園地だった。
 幼い頃、決して家から近いわけでもないのに、何故だか週の半分以上ここに居た気がする。それも、夜。おそらく父が死んで母が働くようになったからだろう。僕はひとりきりの家から抜け出すと当たり前のようにそこへ向かった。
 夜の遊園地は昼間の姿とは打って変わって見えた。真っ暗な闇に対抗するようにメリーゴーランドの光はまわりつづけ、観覧車は不気味な色の光を蠢かせ、その光景はなんだか生々しいというか、とてもグロテスクだった。
 僕はここに来て何を求めたのだろう。闇に飲み込まれることを恐れながらどうしてわざわざこんな場所に通い続けたのだろう―。
 僕には父も母もほとんどいないようなものだったから、人一倍愛情を欲しがった。そして僕を受け入れてくれるモノには異常なほどに依存した。
しかし当然周囲の人間は僕を薄汚い子供とけぎらった。だから僕は唯一僕を受け入れてくれる夜の遊園地と―いつもなにをしていても僕をつきまとう時間に依存した。僕は彼らを愛し、彼らは僕を愛した。
 ある夜そこへ来てみると観覧車は取り外され、ティーカップやメリーゴーランドは人の作った蠢くモノによって壊されていた。ソレはギギギと大きな音をあげてメリーゴーランドの屋根にのしかかり、破壊し、そして破片を集めた。僕の夢は何日もたたないうちに少し以前の面影を残した薄汚いゴミのカタマリになった。
 僕は僕を唯一受け入れてくれる彼を失ってしまった。僕は苦しんだ。来る日も来る日もひとりきり家で声にならない悲鳴を上げた。
 だから僕は僕を殺した。もうこれ以上何も失わないと思った。しかし、僕は僕を常につきまとっていた時間を永遠に失ってしまったのだ。
 彼らは唐突に僕の前から去っていってしまった。小さくさよならといって。彼らは黒い鳥のように残酷で冷たかった。



直後、世界が暗転する。




これは夢?








君は戻ってきたんだよ。

僕は君とここに永遠に留まり続ける。

       

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