死体を喰うケモノ
二年前
多くの人々を乗せたその客船は、その命の密度には軽すぎるほど、簡単に沈没した。
突然の出来事だった。原因はおおやけにされていないが、乗組員の操縦ミスだったと推測されている。
とにかく、あまりに唐突だったので、救助ボートで脱出する猶予も、彼らには与えられなかった。
結果。
客の九割は死亡。
残りの一割は奇跡的に命を繋いだ。
彼らが生き残れたのは、運び出される直前だったボートを、運良く発見することができたからである。
半壊したボートだけを頼りに、丸一日と及ぶ航海の末、遂に陸地へたどり着いた。
しかし歓喜に溢れる彼らに、厳しい現実が鎌首をもたげる。
何もできなかったのだ。
むろんそれはいくぶん比喩的な表現で――しかし事実を如実に示していた。
そこは、呆れるほど不毛な孤島だった。
確かに木々は生えている。小動物もわずかながら生息する。
しかし彼らには、それをどうにかする技術など持ち合わせていなかった。これが食べられるかどうかの表記は、あたりまえながら記載されていない。やけになってその辺の木の実を食べて、中毒死する者もいた。
そう。
まるで試験だった。
大量殺戮の第一次試験を終え、この島で生き残る第二次試験が、彼らには課されていた。
衣食住が保障されないこの島で生き抜くこと。
餓死。
餓死。
病死。病死。
餓死。
病死。病死。
時を経るにつれて、死は着々と連鎖していく。
けれども永遠に続くかと思われたこの地獄にも、終わりがあった。
偶然通りかかった一隻の船が、彼らを発見したのだ。
終わりを告げる鐘が、衰弱のなかを静かに鳴り響いた。
重く辛い試験は、何名もの脱落者を残して終了した。合格者が三名もいたのは、奇蹟以外に呼ぶほかない。
それから二年後。