Neetel Inside 文芸新都
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会社でお姉さんと仲良くなったのに凹られた
〜VIPPERよ!窮地の凹を救え!そして聞こえるスネークの鼓動〜その2(09/06/26うp)

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 どうしたらいいのか。俺は如何にしてこの仕事をやっつけたらいいのだ。
昼休みも終わりに近づいている。駄目だ、もう今日中に解決は出来ないだろう。
これでまた「ポカ職人」などというあだ名を付けられ、現場から物笑いの種にされてしまうのだろう。
住人からの回答も「あきらめた方が良い」や「無理なものは無理」という意見が多い。
不本意だがここは工場長に相談して、赤字覚悟で外注に依頼して貰う様話を進めてもらおう。

決断した俺は最後にスレのリロードを行った。住人の励ましを最後まで読んでから冥府、すなわち工場長のデスクへと旅立とうと思ったからだ。
だが、読み進むうちに俺に身震いさせるようなレスがあった。

>>まず状況話してみろ。
>>知り合いの元設計屋になら解ることもあるかもしれん。
>>コピペをメールで送るから簡潔に
>>かつ解りやすく文を書いてくれ。
>>俺がお前さん一人で盛り上がってwww連発された文章を添削してるうちに
>>質問の意味まで改編しちまったら意味ないからな。

俺は多少慌てながら、今ここにある危機について説明した。
そのレスをくれた住人はどうやら本人が解決手段を案じるのではなく、
元設計屋の知人に頼んでこの俺に知恵を授けてくれるらしいのだ。

彼からの回答を待っていると、TIGが事務所に入ってきた。
やめてくれ、今俺は忙しい、どちらかというと鉄火が目当てなのかもしれないが、彼女がまだスイーツ(笑い)なランチからまだ帰還していないという事は、会話相手としての矛先は、悪意を殺意を含みつつ俺に向かってきてしまうじゃないか。
俺は祈る気持ちでPCに夢中な振りをしていた。
TIGはゆっくりとこちらのデスクに向かってくる。万事休すか。

TIG
「ぃよぉ~凹ぉ、プレスの田中のおっさんが嘆いとるぞw
なんで事務所は出来もせん仕事を安くでとって来るんやってよぉ?」

いやそれ俺じゃないから。この件で営業担当してたのは工場長だから。
そう思いながら横目で工場長を見ると、彼はタバコをくわえながら見積書と格闘している。
よほど忙しいのだろう、昼休みまで仕事に追われるとは。いや俺もだけど。
ていうかそこは聞いとけよ、あんたが取ってきた仕事だろ?なんで俺が追い込まれてんのさ。
と、そこで丁度昼休み終了のサイレンが鳴る。

TIG
「ま~どっちでもええけどよw俺には面白い話やからなあw」

サイレンで聞こえにくいのを良いことに小声で俺に耳打ちをし、TIGはゆったりとした足取りで現場に出て行った。うるせえこの小物野郎が。
とりあえず胸を撫で下ろした俺は再度スレをリロード。すると例の人物からレスが入った。

>>回答きたぞバカモン
>>トン数的には不可ではない
>>1.5*12*12*3800*41÷12*8*1000=33829920/96000=352tあればまがる
>>500トンプレスが弱って居たとして計算しても352*1.3位の余剰負荷を見ても
>>457t前後問題はプレスに入らない点だけどしばらく時間くれってさ

こ、これはなんとかなるんじゃないのか?
すぐに更なるレスが

>>返事来たぞ。
>>普通に考えたら絶対に無理なわけだが
>>門型プレスにいつものままオス型メス型を取り付けようと思うな
>>オス型メス型を門型プレスに対して今は平行についていることと思うけど
>>それを直角に取り付けられるならおそらく曲がる。
>>昔の門型、プレス型には90度ずつ角度がつけられるようなボルト穴がついてるはずだから
>>まずはいっぺん見て来い、
>>そしてプレス工に聞いてみろ。12mmなら型はポピュラーだからあるはずだ。
>>プレス屋に話しは上手くやれよ。
>>持ち上げて、おだてて、うまく動いて貰ウのも裏方の仕事だ。
>>ただの物売りの営業からの助言だ。
>>じゃあ俺は客先入るからまた落ち着いたら報告くれな。

なるほど、プレス型の取り付け向きを変えるのか。
取り付けさえ出来れば理屈で言えば十分に曲げられる。
どうしてうちの連中はこれに誰一人気付かなかったんだ?
兎に角、この対処方法をプレス工のおじさんに話して可能かどうかを後で検討してもらおう。
その後スレ内では賞賛のレスが相次いだ。

>>なにこのなんでもつくるよ的ふいんきwwwwwwwwwwww

>>すばらしい連携に感動

>>↑なんじゃそりゃw

>>某スレの二人が
>>凹の仕事の為に、アドバイスしてくれたんだよ
>>あとは わかるな?

>>ほう、あの二人かww頼もしい

どうやら助言をくれたのはどこかのスレのスレ主らしい。
その後プレス工にその解決方法を提案してみると、プレス工はプレスの雄型に穴を開け、
ガスで取り付け部分に切り込みを入れることでプレス型の取り付け方向変更を可能だと言った。
良かった、どうにか午後にはプレス型の改造を済ませ、今日中に完成させられそうだ。
素晴らしいじゃないかVIPPERの広く深い才能の泉よ。

事務所に帰りいつの間にかランチ(笑)から帰還していた向井にバレないようにスレを開き、
住人に結果報告を済ませた。
レスが返ってくる。

>>なんか全然わかんないけど、
>>こういうインターネッツの繋がりって、
>>素敵だしワクワクするね~

>>すげぇ、凹が無理難題押し通して男を見せやがった

>>なにこのスレ暖かい…………

>>鉄工所だもんwwwwwwwwww

だれが上手い事を言えと。
だがしかし本当に温かいな、このスレは。俺は今すごく嬉しさと誇らしさと生暖かさで一杯だ。
今晩のお握りにも力が入るってものだよ。ありがとうVIPPER。
一息つこうと更衣室の方に行き、給茶機でお茶を淹れようとしたところで、同じくお茶を飲みに来た鉄火と鉢合わせした。

鉄火
「かっこいいじゃん凹、意地みせたらしいじゃんw」


「あ、うん。いや俺の知識じゃないけど」

鉄火
「プレスの田中さんびっくりしてたよw凹が後ろから来て突然説明始めるから凹が壊れたか、ってw」


「あ、そっちのびっくりなw」

鉄火
「いやいや、まあ冗談抜きで感心してたよ。会話能力は無いくせにねw」
「それはそうと・・・」


「ああ?」

鉄火
「なんで昼来なかったのよぉ~!!」

鉄火がいきなり俺にドンケツを食らわせる。なにすんだこのハレンチ姉ちゃんが。
だが彼女のダイビングピーチボンバーを食らった俺は幸せに包まれながらどうみても顔は正直です。ほんとうにありがとうございました。
誘ってもらってもいないのに行けないと言うと、鉄火は怪訝な顔をしながら

鉄火
「う~・・・・・そうなんだ・・・」

とだけ言い、お茶をすすりながら更衣室から出て行った。
何だって言うんだ。
そんな鉄火との謎を含んだやり取りのあと、三時の休憩時に住人に改めて礼を伝えた。

>>仕事上手くいってよかったな。
>>それからこれからも、ややこしい仕事どんどんまわってきそうだなwwww

>>凹の株が1あがった!

>>TIGの不満度が3上がった

>>鉄火の好感度が1下がり(昼休み放置)
>>3上がった(でも実は仕事だった)

>>そして更にそれを見たTigの不満度が3上がった

>>上手くいってよかったなww
>>でも最初にできないって言った職人さんへのフォローも忘れずにな

>>なんか順調に孤男を卒業していけそうな流れだなww
>>専門のアドバイスした人達に尊敬の念を抱かざるを得ない(敬礼

>>くっそ、鉄火の一挙手一投足に萌える・・・
>>凹、俺と変わってくれ

>>鉄火好き

>>激しく同意

余計なレスも混じってはいるが、鉄火ファンが多くて何よりだ。
だが先程のアドバイスをくれた御方はもう居ない様だ。なんだか寂しい。
どこかのスレ関係者って事は分ったのだが彼は、いや彼女かもしれないけど・・・・・・
一体・・・・一体誰だったんだろう。



       

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