Neetel Inside 文芸新都
表紙

会社でお姉さんと仲良くなったのに凹られた
〜(心が)闇ナベ その3〜

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俺から離れ、口を拭いながら彼女は視線を斜め下に固定し、自らの髪を撫でた。

鉄火
「ごめん、コレは忘れて・・・・帰っても忘れてよ。お願いだから向井と付き合ってよ。」


「ふぇ、うぃ」

鉄火からのキスを受けた俺の脳内では、マリオの無敵音とロックマンのティウンティウンが同時に鳴り響いていた。


-会社でお姉さんと仲良くなったのに凹られた-
「(心が)闇ナベ その3」


     

 ナベパーティ当日、我らがGNドライブ(住人さまがた)のレスに反応する間も無いまま、所用で病院に寄り、その足で現地集合のスーパーに俺は立ち寄った。
スーパー入り口にて鉄火と向井が待っているのを確認し、何とも、住人さまがたにも理解し難いに違いない安心感を得、俺は胸を撫で下ろす。
鉄火は俺を見つけるなり向井より一歩前に歩み出て、正面に居る俺に向かって横目を使い、その後さりげなく口にチャックのジェスチャーを俺に向かって表現した。
なるほどね、昨日の事は胸にしまっておけということか。
何ともいえない寂しさと二人だけの秘密を持ってしまった何とも表現し難い充足感が俺を支配した。

スーパーの中では、買い物をしながら女性特有の「ここはお前の日記帳じゃねねえんだ、チラシの裏にでも書いてろ」的な会話が繰り広げられている。
二人の後ろに尾いていきながら、俺は白けた表情で「おこめ券」の旗に欲情していた。
買い物終了後、鉄火の家に向かい、到着後すぐにナベの支度が開始された。
キッチンに並ぶ二つのそれぞれ異彩を放つエロい尻。
どちらにしようかな、という歌でも歌いたい気分だ。

>>なめとんのか貴様はwwwww

支度は整い、いよいよナベが開始されようとしていた。
鉄火は昨日の事などすっかり忘れてしまったわ、とばかりに向井との会話に華を咲かせている。
たまに俺を見る表情が心なしか冷たくも感じる。あくまで昨日のことは忘れてしまえ、という釘でも刺しているのだろうか。

>>そりゃそうだろwwwそこでぶっちゃけるのはお前くらいだ

食材に火が通り、さて食べようかという段になり、向井が突然下を向き、何か言いたげにちらちらと鉄火のほうに目配せをしている。
鉄火はなぁに?と優しい声で向井に話しかける。
向井は少し言いにくそうに困った顔を苦々しい顔を繰り返した後、口を開いた。

向井
「おっ、女の子が男の子の家に夜に遊びに行くって男側からしたら、
 どういう感じなん?ぜ、全部OKってなるん?」

やっと言えた、という顔をして下を恥ずかしそうに見たまま小さい声でいただきます、と言い、彼女のみ鍋に箸をつけ始めた。
俺は硬直してしまった。彼女が俺の家に泊まるつもりで来たことを今、ここで、言いますか。死にたい。

>>向井スッゲェwwwwwwwwww

>>策士向井wwwwww

>>む、向井あざといな。
>>てか、これは無策でいった凹ではなんともならない展開。
>>いきなりお泊まりカードをきられたか

>>しかも向井からは一言も泊まったとはいってないあたりがエグイ。

>>相対的に鉄火の不器用さと直球さが凄くまぶしく感じる
>>向井えげつねぇwwwwwwwwwwww

>>だが表情を察するに彼女も心苦しいのと恥ずかしいので胸一杯なんだな

う、動けない。俺の両側では二人の女性が鍋をつつき始めている。
かたや、真っ赤な顔で下を向いたまま。
かたや、真っ赤な顔で横目で俺をジト見したまま。
今回ばかりは思う。ここに、相棒とも言うべき男友達が俺に居たならと。

向井の攻撃と防御を兼ね備えた天地魔闘の構えが、俺を切り裂く。
そもそも住人さまがたとの何のブリーフィングも無しに、紙装備にボーンククリでリオレイアに挑んだも同然な俺が全く迂闊だった訳だが。
向井と鉄火はそれからしばらく無言でもくもくと鍋をつついていたが

鉄火
「それってありなんじゃない?普通の男ならHまでいくでしょ?」

てっかのこうげき

ぼこは3のダメージ

ぼこHP3/6 MP6000/6000 LV2


>>HP低すぎだろwww

>>その前にMPのみ高すぎww魔法使い通り越して大魔道www

>>まてまてwwその前に未使用のMPってwwww

>>「凹手出してないのかよ、ヘタレだな」って言いたいんかね

>>これは地獄鍋wwwwwwwwww


俺の所見では、向井といけないことをいたしてしまった鬼畜男、それが凹
という印象を鉄火は抱いているようだ。

向井
「そ、そうやんね、そうやんねーーーーーー(笑)」

鉄火
「そりゃそうじゃんかw普通の男なら、いや私が男なら向井食っちゃうよ」

>>おwさすが鉄火、収拾つけようとしてきたな

>>まてまて凹と俺以外の住人よ
>>この娘二人、何気にすっげえやりとりしてないか?
>>以下俺の勝手な想像な
>>向井「イェス!これでお姉ちゃんに釘刺せた!」
>>鉄火(心の声)『んーーー・・・じゃあこれで』
>>鉄火「そりゃ行くよ、普通の男なら向井食っちゃうよ」
>>向井(心の声)『えっ・・私食べられてない』
>>鉄火(心の声)『凹が手出してなければチェックメイト』
>>な?怖くねえ?

>>・・・・・怖すぎ

>>とにかく手を出してない凹はこのあとどう出たのかww

結局その後、俺は貝のように押し黙り、食べた食材もクタクタの白菜一枚と鶏肉一欠けらのみ。
明らかに動揺を隠し切れなかったのだが、もはや俺にはどうすることも出来なかった。
まさか向井が先日家に来たことを、今、ここで、鉄火に打ち明けるとは。
女って本当に・・・・何を考えているのか。
ああ・・・握りたい

>>お前が何を考えているんだwwwww握るなwww


     

 地獄の闇に包まれた鍋パーティは終焉を迎え、おのおのの帰途に着く。
向井は「お父さんたちが帰ってきてるから」という謎の言葉を残し、颯爽と帰っていく。何だそのスッキリとした顔は。
というか俺たちを二人にしないでくれ。鉄火が怖すぎる。
俺は思う。向井は最大の勇気を持ってとんでもない太さの釘を鉄火にブッ刺したのではないかと
貫きすぎて俺にまで刺さってるけど。

>>当事者のおまいさんがそう感じたなら
>>多分そうだろうね
>>だって当事者じゃない俺もそう思う。

つい先日キスをしたところなのに、もう怒られる。
彼女の顔を見る。困った顔をしている。

鉄火
「ま、こういうのが嫌だったんだよね、こういうの
 凹には分かんなかったかな、向井がどういうつもりで家に行ったのか
 なんでHやったの?」

>>やってねえええええw

>>やってねえw

>>うむ、してないな、Hは

そうだ、してねえっつの、ったく。俺は即座に言い返す。


「いや、してへん。俺童貞やしそんなんいきなりなし崩しに女の子抱くほど困ってないわ。」

ここでだけ言わせてくれ、本当は困ってる。
しょっちゅう握ってるからムラムラしなかっただけさ。

>>正直だな、まあよし

>>っていうかテンパってただろあん時www

鉄火
「25で経験ないのもそうだけど、それは当事者にしか分からないじゃんか!」

あれ、ナニをそんなにムキになるというのかお姐さま。
そもそも俺達二人では会えないんじゃなかったのか?
いや今彼女の家の前でこうしてるこれは成行上そうなってしまったわけですどな。


「いやホント、何もしてない。俺はだってBバージン。」

鉄火
「とにかく彼女の気持ちわかったでしょ?私とアンタが仲良くしてるのも含めて
 それをどうにかしたいって思って言った言葉なんだから、アンタもどうにかしなさいよ。
 彼女と付き合うの?付き合わないの?」

>>ぼ、凹・・・それはそのときの気持ちを正直に書いてるんだろうけど・・・
>>全然空気読めてなかったんだな・・。
>>しかし、鉄火の怒り具合からして希望はあるなこの段階では

な、なんでそうなる鉄火。
じゃあアンタはなんで俺のファーストキスを奪うような暴挙に出やがったんだ。
あんまり表面繕う様な建前正義な物言いばかりしていると、俺もいい加減頭にくるぞ。切れないけど。

>>だってその暴挙に出たのは向井が夜中に家に来たのを知る前だろうがwwwダメだw凹は本当の馬鹿ww

思い切って俺は鉄火の手を掴む。
さあ、男を見せるときだ凹、俺頑張れ


 俺
 「俺がいつまでもうにうにしてんのは鉄火の事が好きやからにキマットルやんか、このニブ女!!」
 鉄火
 「なによ!そっちこそ覚悟してきた女をいい加減な気持ちで抱くなんて最低!」
 俺
 「お前が、好きだ・・・」
 鉄火
 「そ、そのことばまってたの」
                  (妄想終)』

なんて妄想もしてたけど、所詮俺のテクなんて知れたもの、
出た床勝負の男の弱点ここに極まれり

>>妄想部分はいいから事実のみを正確に頼むwwww

よしきた住人様、では続きを
彼女の手を掴んだまま俺は突破口を開く


「向井とは付き合う気にはなれへん。今は無理」

鉄火
「なんで?あんなにいい子やのに!
アンタ前から言ってるけどどういううぬぼれでそういうこと言うわけ?」


「んー・・・」

本日の鍋のときの向井の発言の意図にヒいてしまった事を上手く表現できなかった俺は、ここで引き下がることにした。


「なんつうかね、今は帰るわ、二人では会わないんでしょ?」

鉄火
「ん・・・そうね。会えないね。じゃあ帰って」


「ん・・・」

鉄火が勢い良く俺の手を振り解いた所為で、俺は階段の手すりに手をぶつける。痛い。

鉄火
「じゃあまたね」


「鉄火、俺らって」

ごく自然に口をついて、つきあえるかな、と言えそうな気がした。
だが鉄火の言葉がそれをせき止める。

鉄火
「聞きたくない。帰って。」

>>ああ、なんてダメな対応・・・。
>>そこは向井がダメじゃなくて鉄火が好きといってればGJだったんだが・・・。
>>『二人では会わないんでしょ?』
>>これはだめだぁぁ。

無言で階段を上がる鉄火。
もはや呼び止めることも、追いかけることも出来なかった。
恋愛経験ゼロ、人間関係希薄な俺にはこれ以上どうすることも出来なかった。
黙って帰途に着き、帰宅後も、向井の言葉に俺たちが振り回されてるような気がして落ち着かず、メールで呼びかけたりはしたのだが返信は無かった。

>>それでも凹なら・・・凹ならきっと何とかしてくれる・・・・!!

>>結局鍋で向井暴走、鉄火が誤解だろ?
>>これならまだなんとかなるんじゃね?

>>それよりもお前の発言「もう二人で会わないんでしょ?」が
>>非常に嫌味でまずい件

>>向井と付き合えない理由はだた一つだろ
>>鉄火の事が好きだからでよかったんじゃね?

>>お前はストレートに言うってことを知らないのか?

>>ストレートにいえないのがDTクオリティ

>>墓穴掘るのも大概にしないと鉄火に本気で見捨てられるな。

>>向井ってそんなに悪い奴かな。俺にはそおうは思えんけど。

>>↑うん、俺もそう思った。だって鉄火は応援してくれてると思ってんだろ?
>>ただ凹に「私覚悟できてたのよ」って意思表示だと思ったよ。

その後、住人さまがたからの多くのありがたいお言葉を頂き、俺は自らの失策について知ることが出来た。
結局のところ、俺が正直に鉄火が好きだから向井とは付き合えない、とはっきり言わなかったのがそもそもの原因だったのだ。
俺は、心のどこかで、誰も傷つけずに、かつ自分は絶対条件として一回も傷つくことなく幸せになりたいと考えているのかもしれない。
ともかくこうなってしまったものは仕方が無い。
まずは仕切りなおしで鉄火の誤解を解くところから始めようか。

そう決心した翌日月曜日、鉄火と話す機会もなかったものの
住人さまがたのアドバイスが効いたのか、俺はひとまずは心の平静を取り戻した。

だが仕事を終え帰宅し、住人様がたとの会話に花を咲かせていた俺は
チカチカとメール着信を知らせる携帯に気がついてしまった。
夜更かしでショボつく目をこすりながら携帯に目をやる

向井メール
「あんまりお姉ちゃんと仲良くされると私は困るんだけどな?
 
 お姉ちゃんとは仲良くやりたいし
 
 お姉ちゃんと逢ってるでしょ?」

もう、nice boat endでいいかも

       

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Neetsha