《──世話がない、なんてことは解っているんだ。解っているんだけども、そうすることを今更止められない。何故なら、今までそうして来たから。それが、自分のスタイルだからね》
【……そんなことしなくたって、私やポポロカは始めから……】
《始めから、何?》などという無粋な詮索はしなかった。ただ、それに対して苦笑を漏らす権利くらいは、梔子高千穂にはある。義務とも言えるが。
羨ましい、とは思わなかった。
隣の芝生は青い、という言葉がある。自分の所持している芝生と隣人の所持している芝生を見比べて、どこか自分の方が朽ち果てているように見える様を描いた、他人が持っていて自分が持っていないという劣等感を表現する言葉だ。
自分の芝生が青いのだから、ハユマの芝生を羨む理由は無い。
梔子高千穂の心情を表現するならば、「どうです、うちの芝生は? まぁお宅の芝生も負けず劣らず青々と茂っていますがね」と言った所だろうか。
《私達のような人間はね、つくづく身勝手なのさ》
ハユマが、伏せた目を梔子高千穂に向ける。
《自分一人の力で何でも出来るところを見せ付けたい。見せ付けて、自分に魅力を感じて欲しい。自分のことを、凄い奴だと思って欲しい。そんなことを考えているクセに、だ》
誰かさんには、口が裂けようが自白剤を投与されようが、漏らすことは出来ない本音。
でも、ハユマになら言える。この、誰かさんではないけれど、この上無く誰かさんにそっくりなハユマになら、自分の本音を漏らすことが出来る。
《……実を言うと、いつだって助けを求めてる。『君なら大丈夫さ』って思って欲しい気持ちとは裏腹に、『君を助けるよ』という言葉を、いつだって待っているのさ。そんな矛盾の葛藤があるからこそ、言えない。言わなければ伝わらないことは解っているけれど、言えないんだ》