「ええと、ちょっといいかな?」
俺は勇気を出して、隣の席の女子に話しかけた。その子は突然話しかけられて、ちょっと驚いたようで、少し間が空いたが、しばらく待つと俺の方を向いて返事をくれた。
「なんですか」
「その、こう、何て言ったらいいのかな。俺の事を好きな女子って心当たりないだろうか」
その時の彼女の顔を何と表現したらいいだろうか。
かわいそうな生き物を見るような目とでも言えばいいのか。なんかそんな感じだった。
「ないです」
そしてもう話しかけてくれるなとばかりに背を向けられた。
「絶望だな」
横で聞いていた神女がぽんと俺の肩を叩いた。
「へっ、わかって居た事さ。逆に闘志が燃え上がるね」
とかハッタリをかましていると、俺の数少ない友人である鈴木一郎が登校して来た。机の上に荷物をおいてから、俺と目があったのに気づいて、とことここっちに来る。
「よう、何かあったん?」
「一郎,俺の事好きな女の子に心当たりないか」
女子の視点からでなく、男子の視点から見ればまた違うかもしれない。そう思って聞いてみたのだが
「それはない」
「マジで」
「永遠に無い」
「マジか」
「世界がひっくり返っても無い」
「マジっスか」
神女だけ楽しそうに笑ってやがった。