Neetel Inside ニートノベル
表紙

自分流自己満足短編集
シナリオ1『ウチワタの贄』

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人外ロリババアとショタ、インピオ

あらすじ
村に鬼が現れて村人を脅す。
「生け贄として若い男を捧げないとこの村に厄をもたらす」
恐れおののいた村人は村で一番若い少年を鬼に差し出す。
鬼がショタをしぼりぬちょぬちょぐぷぐぷ

鬼の正体は化け狸で若い男の精を絞りたいがゆえにあれしていたと
→村の長に教えて貰った術を試しに使ってみたらいとも簡単に狸だと判明する(オチの導入
 ウチワタは生まれ育った里付近の人里で人間を騙して遊んでいたのだが、それも度が過ぎさすらいの坊主に退治されてしまう。命こそ奪われなかったものの退治された際に善行を百回積まないと里には帰れないという術を掛けられた。それ以来善行を重ねる日々を過ごす。今回鬼に化けて村を訪れたのは適当な理由を並べて若い男を物色したかった為。想いの力や自身の主食に関しては嘘はついていない。鬼は縄張り意識が強く、大物の側に小物は寄らない。そこで自分が大物の鬼を演じることで村の付近の鬼を引かせようとしていた。

オチ
1 悪行がバレた狸は反省する。だけどショタと良い感じになったのでショタはたまに絞らせる関係になるでオワリ
2 狸では鬼は追い払えまい 鬼が来る狸が巨大な鬼に化けて追い払う

やりたいこと
ですます口調のショタ、鬼が小柄な女の子の姿をしているとしりナメるが脅され下手にでることに
「破ァッ!」で鬼の正体が露見
こりゃしっぽをつかむでない
子種、赤子汁 ういのう、ういまらじゃのう




人物
ウチワタ
鬼に化けた狸、ロリババア。ショタコン。


**


村の近くの山に鬼が出たと聞いたのは今から一週間前の事だ。前に鬼が出た時同様に村は大騒ぎになった。話によると今回の鬼は僕らの村の長に取引を持ち掛けてきたのだという。最近は人里を脅かす鬼が何処も出て大変に物騒だ。そこでこの村の若い男を一人、贄として差し出せば他の鬼共からこの村を守ってやろうとその鬼は長に提案をした。去年の暮に村に来た鬼は食料を求め田畑を荒らし、その次の鬼は家畜を攫っていった。どちらも有無を言わさず、嵐の様にやってきて村には恐怖だけが残った。その恐怖が深く根付いていたからだろうか、村の長は鬼の提案を二つ返事で了承した。

「はぁ、はぁ……。や、やっと着いた。こんな所に本当に鬼がいるのか」

そこで村で一番若い僕に贄としての白羽の矢が立ったという訳だ。数年前に長に拾われて以来、村の人々には随分と良くしてもらった。もしここで鬼に食い殺されてしまっても村の人々に恩を返せるのならそれで本望だ。

「鬼も物好きなものだ。わざわざこんなに山奥に住まうとは」

長の話によると長い山道を越え、更にその奥の獣道すら無い廃れた廃墟に鬼は居るのだという。目の前のそれが件の廃墟だろうか。村に住んで数年になるがこんな場所があるなんて聞いた事も無かった。そもそも鬼がどんな姿をしているのかも知らないのだ。村のきまりで鬼が出た時には子供は決して外へ出てはならないことになっている。その存在を家の壁越しに感じた事はあるが、実際に目にするのはこれで初めてになる。だが、待てよ。もしかするとこちらが認識するよりずっと早くに鬼が僕を食い殺してしまうかもしれない。山道を歩き進んできた故の疲労か、或いは鬼への恐怖なのか、膝が笑った。

「……ここで立ち止まっていても仕方がない。取り敢えずは中に入ろう」

朽ちて今にも倒れそうな門を潜り、その先の扉を大げさに叩く。しかし予想以上に脆かった扉は木屑を散らしながら叩いた箇所がガラガラと崩れ落ちた。

「しまった。扉を壊してしまったぞ」

しばし途方に暮れるが、扉が壊れた程度ではここから引き返して村に帰る理由にはならない。そう考える自分がいて思わず苦笑してしまう。勇み足で来たものの心の底では人ならざる者の贄となるのが怖いのだ。軽く笑った後に顔を引き締めそのまま扉に生じた穴に手を掛けて扉を開けて歩みを進めた。すると玄関の先の廊下に朱色の着物に身を包んだ少女がぽつりと立っていた。

「え? お、女の子?」

「……」

慌てる僕とは対極的に着物の少女は酷く落ち着いているように見えた。

「な、どうしてこんな所に女の子が?。い、いや、こんな山奥来ちゃ危ないぞ。それに、ここには鬼が――」

「戯けが。扉を壊しよって。人の子がこんな所に何の用じゃ」

「……な」

年齢は明らかに僕より若い。否、幼いと表現した方が適切だろうか。背丈は僕より頭一つ小さく、整った顔立ちで凛とした表情をしているも、まだあどけなさが残っている。一見、少女そのものだ。しかし、目線を少し上げれば額には2本の小さな角と外見とあまりにも不釣り合いな言葉から、少女が人ならざる者だということが聞くまでもなく理解できた。鬼だ。紛れも無くこの少女は鬼だ。

「どうした。狐につままれたような顔をしよって。まあ良い、山道は疲れたであろう。先ずは上がって茶でも飲め」

「え、あ、……ど、どうもありがとうございます」

促されるままに僕は少女の後を着いて行った。


**


廃墟の中は外観から想像できない程に片付いていた。壁や天井に所々穴が開いているが、塵や埃が見当たらない。

「ほれ、茶と菓子じゃ。遠慮せず食うがよい。……どうした。そんな目移りさせて。何か変なものでもあったか」

ちゃぶ台の上に茶が入った湯呑み二つと煎餅が並べられる。少女は慣れた手つきで自分の湯呑みに茶を注いだ。

「あっ、いや。ここは永らく人が住んでいなかった聞いていたんで。……その割には家の中は随分綺麗だなって思って」

「わしが全部片したのじゃ。見事なもんじゃろう」

「は、はあ……」

それにしても変だ。壁や床、家具は掃除を欠かしたことが無いかの様に磨き上げられている。まるで新品同様だ。随分と長い間放置されていた場所だと長から聞かされていたが、とてもそうには見えない。

「なんじゃ、気の抜けた返事をしよって。少しは驚くと思ったのじゃがのう」

「驚いてますよ。なんでこんな……。家具なんかも一通り揃っていて。……ひょっとして僕、既に化かされています?」

「阿呆が。わしを狐や狸風情と一緒にするでない。いきなり失礼な奴じゃの」

「あっ、す、すいません。そんなつもりは……」

「まあ良い。そんな事より、ぬしはどうしてここに来たのじゃ。道に迷った挙句、ここにたどり着くのはちいとばかし難しいからの」

「は、はい。ここに鬼が居ると聞いて、き、来ました。村と鬼の取引でお話をする為にです」

「ほう、なるほどのう」

「それで、確認になるんですが、貴女が鬼……さんですか?」

「如何にも。わしが件の鬼じゃ。ウチワタと呼ぶがいい」

ああ、やはり鬼だった。熊の様な大男に角が生えたものと勝手に想像していたが、これは想像の斜め上を行った。

「う、ウチワタさんですか。僕は平助と申します」

「平助、平助か。分かった。それで、取引の方はどうなったのじゃ」

「は、はい。僕がその、……に、贄です。ウチワタさん、僕らの村を守って下さい。お願いします」

ウチワタは着物の裾を口元に持って行きくすくすと笑った。人のそれよりも明らかに鋭く尖った八重歯がチラリと見えた。

「なるほど。なるほどのう。ぬしが贄か。そうか、そうか」

「は、はい、そうです。その、僕で大丈夫でしたか?」

「うむ、大いに結構じゃ」

「よ、良かった」

「いやはや、まさか辺境の地でこんな上玉にありつけるとは思わなんだ。来てみるもんじゃのう。いやあ、良かった、良かったのう」 

そう言いながらウチワタは態とらしく袖で口元を拭う動作をした。

「あ、ありつけるって、……やっぱり、僕、ウチワタさんに、その、食べられるんですか?」

「あ? なんじゃて?」

「だっ、だから、僕、これから、ウチワタさんに食べられるんですよね!?」

ウチワタは目を丸く見開いたかと思うと、次の瞬間膝を叩いて笑い出した。

「はっはっは! こりゃ傑作じゃ! それじゃあ何か、ぬしはわしが人を食らう鬼だと申すのか! それは良いのう!」

「ち、違うんですか!?」

「平助よ、ぬしの村の長からは何も聞かされていないのか?」

「何もって。……に、贄として鬼の元に行けとしか……、言われてないです」

「はっはっは! 長も酷い事をするものじゃ! いやあ、愉快、愉快じゃ。久々に笑わせて貰った」

ウチワタは茶を一口飲む。そして再度思い出したかの様に笑った。

「……ぬしよ、考えてもみろ。わしが人を食らう鬼だったとして食い物目当てならば、村を守る見返りに、わしはぬし一人だけではなく多くの人々を求めるであろう。仮にそうだとしても、村に交渉を持ち掛けるより先に村を襲った方が簡単じゃろうに。そうは思わんか」

「まあ、そうかも知れませんね。じゃあウチワタさんは人喰い鬼じゃなくて、僕も食べられないって事、ですか?」

「そう言っておろうが。しかし、このウチワタが人喰い鬼だと思われていたとは。くふふふ……」

「そ、そうなんですか。……よ、良かった。でも、それならば何故僕はここに?」

「そうさのう。実を言うとぬしの憶測も間違いではないのじゃ。半分正解ってところかのう」

「と、いいますと……」

「鬼にも色々おっての。鬼としての力が弱い鬼は人や獣等の普通の動物同様、飲み食いが必要になってくるのじゃ。ただ、やはり鬼は鬼であって人や他の獣などとは違う。妖かしの類である以上、鬼の力の源は人の想いの力なのじゃ」

「あ、妖かし? 想いの力?」

「そうじゃ。人喰い鬼を例にするとしようか。ぬしよ、奴らは何故人を喰らうと思う?」

「それは……、ええと、お、お腹が空いてるからですか?」

「根本はそうじゃの。単に人の肉の味を覚えて選り好みする様になったというのも正解じゃ。多くの人喰い鬼がこれに当たるのじゃが、より力の強い人喰い鬼の場合、理由がもう一つある」

「もう一つ、ですか」

「うむ、それが人の想いの力じゃ。人から妖かしへの信仰や親しみの強さが、妖かし自身の強さに比例するのじゃ。ただその逆もあっての。人から畏怖されている妖かしも人から恐れられる程にその強さを増すのじゃ」

「じゃあ、人喰い鬼は人から怖がられる為に……その、人を?」

「忌々しいがその通りじゃ。本能的になのか、何処かで知恵を付けたのか、これを理解している鬼も中にはおっての。鬼という妖かしは基本的に図体ばかり大きいウスラトンカチだらけな種族なんじゃが、偶に別格がいるのじゃ」

「その内の一人が、ウチワタさんってことですよね」

「察しが良いのう。わしの溢れ出る人徳が、ぬしにそう言わせたのかのう!」

「ウチワタさん、鬼なのに想いの力の事知っていて、図体が大きいウスラトンカチじゃないですし」

「おぬし、わしに食われないと分かって多少余裕が出てきたな? まあ、良い」

ウチワタは自らの膝をポンと軽く叩いた。

「ここは辺境の地で人も数も少ない。故にそれ程の鬼はまず生じないので安心するのじゃ」

「……なるほど」

「……と、人喰い鬼で話が逸れてしまったの。わしがぬしをここに読んだ理由じゃったな。単刀直入に言うと、わしは人の精を主食としている。飲み食いせぬ代わりに人の精を喰らう鬼なのじゃ。今の話の人の肉を人の精に置き換えたのがわしじゃ」

「ひ、人の精ですか?」

「そうじゃ。ぬしの一物から出る赤子汁こそ、わしが求めるものじゃ。そういう点じゃわしも人喰い鬼共の事は馬鹿にできんかのう。今晩からたっぷり絞ってやるから覚悟するのじゃぞ? くふふふ」

「ちょっと待って下さい、ウチワタさん。精や赤子汁って何のことですか? それって僕から、し、絞る? ……絞って出てくるものなのですか?」

「へ?」

ウチワタはポカンと口を開けたまま、あああ、と長く声を漏らした。その後に目元を袖で覆いながら両肩震わせた。どうやら笑っている様だ。

「う、ウチワタさん? 僕、何か変な事聞きましたか?」

「ぬああ……。まさか知識も無ければ精通も未だ来ていないおのこを寄越すとはのう。長もやってくれる」

「ど、どうかしましたか?」

「くふふふ。まあ、良い! ぬしよ、平助と言ったな?」

「は、はい」

「ありがたく思え。今晩はわしが直々に手ほどきしてやろう。光栄に思うが良い、人の子よ。文字通り腰を抜かしても知らんぞ」

そう言うとウチワタは湯呑みに残ったお茶を飲み干して立ち上がった。

「わしは夕餉の支度をする。それまで寝るなりなんなり休んでると良い」

「あっ、ちょっと待って下さい、ウチワタさん! 結局僕は何をすれば!?」

「分からぬのならば、分からぬままで良い。それはそれで楽しそうじゃからな。では暫し待つのじゃぞ!」

言うや否や麩がピシャリと閉められてしまい、それ以上の問答は続かなかった。暫くすると包丁でまな板を叩く小気味良い音がウチワタの鼻歌と共に聞こえてきた。

「と、取り敢えずは、殺されないで済むのだろうか。いや、まあ。良かったというか、なんというか」

安堵と疲労で思わず欠伸が出た。そう言えば今日は昼からここに着くまでずっと歩いていたのだ。疲れるのも無理も無い。膝に何度か力を淹れると少しズキズキと痛んだ。

「それにしても馬鹿に眠い。ウチワタさんも言っていたし、少しの間横にならせてもらおうかな」

畳に寝転ぶと再び欠伸が口から漏れる。絶え間なく聞こえる包丁の音とウチワタの鼻歌が微睡みに誘った。


**


「ほれ、夕餉が出来たぞ。いつまで寝ておる。ちゃっちゃと起きるのじゃ」

「あ、おはようございます」

「何を寝ぼけておる。今は黄昏時じゃ。顔を拭いて目を覚ませ」

「ど、どうも」

ウチワタから濡れた手ぬぐいを渡される。ぼやけた顔をがしがしと拭くと幾分思考がハッキリしてきた。窓から覗く外はすっかり暗くなっている。あれから小一時間程眠ってしまっていた様だ。

「すいません。慣れない山道で疲れていたもので、すっかり眠ってしまいました」

「よく分からん相手の家で寝るなぞ不用心にも程が有るぞ。わしがその気なら夕餉の材料にされてもおかしくなかったのじゃぞ」

「え、あ、やっぱり食べる気でいたんですか」

「冗談じゃ。話を巻き戻すでない。ほりゃ、ぬしも手伝うんじゃよ。台所から茶碗と箸を持って来い。わしは鍋を持ってくる」

そう言うとウチワタは奥の部屋に行った。僕は慌てて立ち上がりその小さな後ろ姿を追った。


**

食卓の中央には大きな鍋が陣取っている。鍋の中は色とりどりの野菜とぶつ切りで大きめの肉がほろほろと煮立っていた。その量も凄まじく見ているだけで腹が満たされていく様だ。

「いただきます」

「うむ、遠慮せず食うが良い。沢山作ったのでおかわりもするのじゃ」

「凄い豪勢ですね。野菜と肉がこんなに沢山入った鍋なんて僕初めてです」

「ぬしの村の長が持ってきてくれたのじゃ。わしは食わんでも平気なのじゃが余らすのも勿体無くての。これは村との取引の成立とぬしの歓迎の意を込めたものじゃ。少しばかり贅沢をしてもバチは当たるまい。ほれ、分けてやるから茶碗を貸せ」

「すいません。ありがとうございます」

ウチワタは僕から茶碗を受け取ると菜箸で鍋の中の具材を茶碗に盛っていく。肉、肉、野菜、肉、肉、肉。更に肉、肉、肉。茶碗にどんどんと肉が重なる。

「おのこならこれ位容易いじゃろ。何にせよぬしは沢山食べて精を付けてもらわなければわしも困るからの。ほれ、食え」

茶碗はかなりの重量を増して手元に返ってきた。

「量も凄いですね。……が、頑張って食べます。……あむ」

「うむうむ、食うが良い、食うが良い。味見もせずに取り敢えず作ってしまったのじゃが、どうかの。美味いか? 適当に作ったとは言えわしの料理の腕を見縊るでないぞ。暇つぶしにじゃが、人に化けて街の料亭で働いてたこともあるんじゃ。味噌が少ししか無かったので少々薄味になってしまったがのう」

「うん、美味しいですよ。凄い美味しいです。肉なんて食べる機会滅多に無かったですからね。ところででこれ、何の肉ですか? 鳥や豚ではないですよね? まさか牛?」

「人の肉じゃ。意外と美味かろう?」

「ブッ!」

「冗談じゃよ。真に受けるでない。村の長から貰ったと言ったじゃろうに。牡丹じゃ」

「ゲホッ、ゲホッ。……やめて下さいよ。結構笑えない冗談です」

「くふふ、すまんのう。あんまり美味そうに食うのでからかってみたくなってな。どれ、わしもいただくとするかの」

ウチワタは自分の茶碗を手に取り鍋から具材を拾っていく。

「あれ? ウチワタさんて飲み食いはしないんじゃ」

「食べれないと言った覚えはないぞ。食べなくても平気というだけで食べない事も無いのじゃ。誰かと食を共にするのは久しくての。偶には良いじゃろう。それとも何か。鍋の中身を全部一人で平らげる気でいたか?」

「と、とんでもないです! というよりこれを僕一人で平らげるのは大分無理があります」

「ならばわしも遠慮無く頂くとしようかのう。……はぐ、んぐんぐ。……うむ! 我ながら良い出来じゃ! ほれ、ぬしももっと食べんか。折角の肉がわしに全部食われてしまうぞ」

「はい! それでは改めて、いただきます!」

肉や野菜がウチワタの小さな口に飲み込まれてくかの様に消費されていく。僕も負けじと鍋をつついた。


**


鍋の具材が残り半分に差し掛かった時、既に僕は箸と茶碗を置いていた。美味い。確かに美味いのだが、それ以上に量が凄まじい。とてもじゃないが一回で食べ切る量ではないと僕が音を上げるとウチワタは一言、「勿体無いのう」と言った後に黙々と鍋の残りを食べ始め、瞬く間に鍋の中身を空にしてしまった。僕はというと満腹で今にも破裂しそうな腹を擦りながら畳に横になっていた。

「腹八分目といった所か。まだ食えなくも無いが、食後の楽しみがまた別にあるしのう」

「……まだ食べれるんですか。人は見かけによらぬものとは言ったものですね」

「なんせわしは人ではなく鬼じゃからな。人と比べてもらっても困るのじゃ。にしてもぬしよ、これから夜の営みだというのにその体たらくはなんじゃ」

「い、いとなみ? なんのことですか?」

「ぬしの無知にはもう突っ込まんぞ」

「申し訳無いのですけれど、少し休んでても良いですか? 食べ過ぎて腹が……」

「かー! だらしないのう。おのこがそんなでどうするのじゃ!」

「ほ、本当にすみません。少し休ませて貰えれば、後でいとなみでも何でもするので! ……う、うぷ」

「言ったな? 確かに聞いたぞ? ならば、わしは寝床の支度をしてくる。準備が整う前にその腹をどうにかしておくんじゃよ」

「は、はい。分かりました……」

「……まあ、あまりにも具合が悪いと立つものも立たんからのう。ぬしもそこまで急ぐ必要もない。休んでおれ」

ウチワタはそう言うと麩をピシャリと閉めた。


**


あれから何度か麩の奥からウチワタが早くこちらに来いと催促をしてきた。その度に直ぐには応じられない事を伝えるとウチワタは悪態混じりに引き下がった。そんなやり取りを何度も繰り返している間に日は落ち、窓から吹いてくる夜風が冷たくなった頃にもなると、幾分か腹の具合が良くなってきていた。立ち上がり、一度背伸びした後に、麩の前に行きゆっくりと開ける。ウチワタは敷かれた布団の上に突っ伏していた。顔を布団に埋めているので起きているのか寝ているのか定かではない。

「すう……すう……すう……すう……」

いや、この規則的な呼吸は寝ている時のそれだ。しかしそうなると困った。起こすべきだろうか。何にせよ確認の為に一度声を掛けてみなければ。

「ウチワタさん、すみません。お待たせしました。具合が良くなったんで、その、いとなみ? 出来ますよ、ウチワタさん。ウチワタさん?」

「すう……すう……、んんむ……」

「ウチワタさあん!?」

「んがっ!? な、なんじゃ、わしは寝とらんぞ!」

「うわっ、びっくりした」

「んうむ……、やっとか。待ちぼうけでこのまま寝入る所だったのじゃ」

「思いっきり寝てましたよ、ウチワタさん」

「寝ておらぬと言うておろうに。それじゃ始めるとするかのう。ほれ、いつまでそんな所に突っ立っておる。こっちゃこい」

ウチワタは布団をぽんぽんと叩きながら手招きをした。

「はい、それではお隣失礼します」

「おっと、座る前に着物を全て脱げ。裸になるのじゃ。ほりゃ早くせい」

「は、裸にですか? ウチワタさんの前で? そんな、いきなり……」

「おうおう、予想通りの反応をしよる。だが恥ずかしがっていても何も始まらんぞ」

「いや、だって」

「ぬしは贄としてきたのであろう。だったらわしの言う通りにせい。ほりゃ、さっさと脱がんか」

「わ、分かりました。全部ですよね? ぬ、脱ぎますよ」

「うむ、それで良い。……いや、良くない。何を隠しておるか。手を退かすのじゃ。見えぬであろうに」

「だ、だってここは、その、ふ、不浄の、その、あれですし! それに無闇矢鱈に人に曝け出していい所ではないはずで」

「あまり駄々を捏ねるでないぞ。ぬしが拒むのならわしも村を守らんぞ。ほれ、良いのか?」

「だっ、駄目です! 良くないです!」

「ならば言葉だけではなく行動で表してみるのじゃ。手を退かせ」

「……分かりました。……うう」

「最初からそうせい。ま、初々しい反応も嫌いじゃないがの」

僕は両手を股間から退かし、そのまま腰の後ろに回した。

「こ、これで良いですか?」

「んふふふ。うむうむ、良いぞ良いぞ。歳相応の一物じゃなあ。ちんまいのう。ほっかむりじゃのう。ういのう」

「そ、そんなにじっくりと見ないで下さいよ……」

「駄目じゃ。ところでぬしよ、幾つか聞いても良いかの」

「……なんです?」

「ぬしは己の一物から子種が出る事を知っておるか?」

「な、なんですかそれは」

「知らんならそれで良い。では、この一物から小便以外のものが出たことは?」

「ありませんね。何かの病気ですかそれは」

「……質問を続けるぞ。それでは今まで一物を自分で弄ったり他者に弄くられたりした事はあるか?」

「あっ、ありませんよ、そんな事。物心ついてから堂々と誰かに見せたのはこれで初めてですって」

「そうかそうか、うむ、良いぞ。正真正銘の初物と来たか。これは胸が疼きおる。どれ、ぬしよ。こっちゃこい」

ウチワタは布団の上に正座をし、自らの太ももをぽんぽんと叩きながら手招きをする。

「膝枕じゃ。早うせい」

「膝枕ですか。少し照れ臭いですね」

「見た目だけならぬしより明らかに幼いおなごにされる訳だからな。じゃがわしはぬしより倍の倍の倍以上生きてる身じゃ。少なくともわしに対しては照れる必要はない」

「わ、分かりました。それでは失礼します」

僕はウチワタの膝に頭を向けてそのまま横になった。細く頼りない腿の感触が後頭部越しに伝わる。

「これで大丈夫ですか? 重くないですか?」

「平気じゃ。それよりも頭をもそっとこちらに寄せい。これでは中々届かぬぞ」

何がと、問おうとした瞬間にウチワタの右手は僕の股間を指差している事に気がついた。多少躊躇したものの、僕は黙ってウチワタに従った。

「良し。では始めるとするかのう。夜伽の始めじゃ」

「よ、よろしく……お願い、致します」

「そう硬くなるな。これからすることはぬしにとっても心地の良い事じゃ。気楽に捉えるのじゃ。……あっ、そうそう。硬いだので思い出したがぬしに質問がもう一つあった。自らの一物が熱く、硬くなった事はあるかの」

「そっ、それは、……あ、ありますね。朝起きた時とか、硬くなってますね……」

「うむうむ。それは健康であることの何よりの証拠じゃ。恥ずかしがらんでも良いぞ。ぬしよ、一物がどういった時に膨らむか知ってるか?」

「……朝起きた時に以外に何かあるんですか?」

「あるから聞いてるのじゃ。まあ見ておれ。では握るぞ」

反論をする間もなくウチワタの手が僕の一物をやんわりと握った。突然の出来事に僕は目を白黒させ、最後にウチワタの顔を視線を移す。ウチワタは既に僕のことを見ていて、目が合ったのが分かるとにっと白い歯を覗かせて笑った。

「はっはっは、これは握ると言うよりは包むと言った方が良いのかのう。わしの小さき掌でぬしの一物が玉袋まですっぽり隠れてしまったぞ。んふふ、やわこいのう」

「ちょっ、う、ウチワタさん!? そ、そんな、いきなり!」

ウチワタは空いた左腕で僕の上半身を押さえ、僅かな抵抗も直ぐ様無力化されてしまう。藻掻く僕をお構い無しにウチワタは右手に掴んだ一物をくにくにと優しく揉みしだいた。

「今はわしに身を委ねるのじゃ。ほれほれ、どうじゃ? 良くなってきたか?」

「そっ、そんなっ、ちょ、ちょっと待って下さいって! や、やめっ」

「待たぬし止めぬぞ。ぬしもおのこならこれしきの事で弱音を吐くでない。ほれほれ、もみもみっと」

「んっ、……あっ! う、ウチワタさ……あっ、何か、なっ、何ですかこれっ」

「んふふ、段々と熱を帯びてきたの。こそばゆいか? 辛いか? 自分より幼いおなごに大切な所を弄ばれるのはどうじゃ。心地良かろう? このまま、こうやって愛撫を続けると……ほうら、硬くなってきおったぞ」

「え、……あ? な、何で? んくっ! う、ウチワタさん、な、何をしたんですか!?」

「特別な事はしとらんよ。男の一物というのはこういうものなのじゃから安心せい。こんな風に刺激されると男なら誰だってこうなる。或いはやらしい事を思うとな。ほれほれ、もうちょっとじゃ。意識を一物に集中せい。わしの小さな手がぬしの一物を撫でくり回す感覚だけを感じるのじゃ。他の事はなあにも考えんでもよいからの」

ウチワタはそう言うと僕の股間を刺激しつつ、身体を押さえ付けていた左手を離し、自らの体の方へぎゅっと抱き寄せた。

「はっはっは、こうしているとまるで赤子をあやしている母親の様じゃのう。おなごに甘やかされるのか好きか?」

「はあ、はあ、……ちょ、そ、それどころじゃ、うくっ、……はあっ」

「初めての快楽に息も絶え絶えって所のかの。おっと、十分に大きくなったな。良いぞ。実に良い。ほれ、ぬしも見てみろ」

「はあ、ふう。……お、大きくなって、ますね。ここまで大きくなったのは初めてです」

「うむうむ、雄々しくそそり立った摩羅……とまでは行かんが、まあ歳相応じゃのう。完全に膨れても皮は被ったままだしの。だが逆にこれはこれでそそられるものが、んふふふ。……あるのう」

「……どういう意味ですか」

「気にするでない。とまあ、この様に男の一物というのは刺激されればむくむくと膨れ上がる。何故こうなるかについては追々説明するのじゃ」

「は、はあ」

「ではここからが本題じゃ。結果から言ってしまうと、このままぬしの一物を愛撫し続けると小便とは別の物が吹き出てくるのじゃ。それこそがわしの求めし人の精。ぬしにはそれを出して貰いたい」

「それも、その、鬼の力か何かですか? それとも男なら誰でも出るものなんですか」

「無知なのも面倒くさくなってきたぞ。膨れた一物から精が出るのは人間本来の機能じゃ。河童が尻子玉を抜くのとは訳が違うのじゃ」

「なるほど、それを聞いてちょっと安心しました」

「そういうのは最後の手段じゃ。まあ、みておれ」

ウチワタは硬くなった僕の一物を握り直す。先程のやわやわとした愛撫とはまた違った触れ方だ。握り込みながら一物の表皮ごと上下に滑らせる。ウチワタの手が往復する度に今まで経験したことがないびりびりとした感覚が股間から頭の頂点に突き抜けた。

「どうじゃ? これは手淫と言ってな、文字通り硬くなった一物を、このようにっ、上下にっ、擦るんじゃ。……ぬしは初めて故、少々力を抜いてやってはいるが、大丈夫か? 痛くはないか?」

「いっ、痛くはないっ、ですけど! こそばゆいというか、腰全体がむずむずしてっ」

「良い傾向じゃ。それで良い。そのこそばゆさが段々と快楽へと変わってくる。今はただ一物からくる刺激だけを感じてれば良いぞ。それにしても小さきおのこの一物と言っても本質は変わらんのう。先っぽや括れが特に反応が良いのう。ほれ、ここはどうじゃ」

「さ、先っぽ? ……んぁあ! ちょっ、ウチワタさっ、あっ」

「わしの手がぬしの弱い所を通る度に腰を浮かせって、うい奴め。ではこういうのはどうかの。親指と人差し指で輪っかを作って、ほれ、ぬしのぷっくりと膨らんだ先っぽだけを集中して……ほら、しこしこ、しこしこ」

先を擦られる度に下半身がぞくぞくと震える。耐え切れず両足を力一杯ばたつかせるが、ウチワタはそれ以上の力で押さえ付けた。更に一物の先への刺激が加速する。

「あっ!? ……がっ、そ、それっ! やっ、止めっ」

「はっはっは! 腰がばね仕掛けの如く跳ねよるな! ほれほれ、どうじゃ? 辛いか? 辛いだろうな! 先だけでじゃなく竿の方も触って欲しいか!?」

「ち、違……そうじゃな、くて! っくぅ、……ふうぅ、う、ウチワ、タさん」

「弱音なぞきいとらんぞ! わしにどうして欲しいか言ってみるんじゃ。ほれほれ、泣き言だけでは手は止められぬぞ。しこしこしこしこ、と。竿の方もこの勢いで擦って欲しんじゃろ? ならば自分の言葉で言うんじゃ!」

「あっ、ぐ! あっ!? ああぁ! あーっ!」

「最早、人の言葉も喋れぬか! 泣こうが喚こうが決して止め――……、あっ、あー、あー。すまぬ、ちと興奮してしまった」

ウチワタは僕の一物から手を離した。陸に打ち上げられた魚の様に口をぱくぱく開き、荒く細かい呼吸を繰り返す僕を宥める。

「はっ、はっ、げほっ! ふっ、ふぅっ、はぁ……」

「大丈夫か? すまんのう、久々のまぐわい故つい血が騒いでしまった。ほれ、もう苛めたりせんから安心せい。ひとまず深呼吸でもするのじゃ」

「……は、はい」

頷きながら幾度か深呼吸を繰り返す。

「ふう。あ、あの、ウチワタさん」

「なんじゃ、ちいとは落ち着いたか?」

「ウチワタさんの言うまぐわいっていうの、続けられるか自信が無くなってきたのですけれども……」

「だあ! だからすまぬって! 普通はあそこまでせぬとも出来るものなんじゃって! 今のはわしが先走ってしまっただけじゃ!」

「……本当に大丈夫でしょうか」

「大丈夫じゃて。ほれ、腰を突き出せ。今度は優しくしてやるのじゃ。そう、ぬしは初めてなんじゃからな」

言われた通りに腰を伸ばしと再び僕の一物がウチワタと対面する。ウチワタは右手の五指を丁寧に曲げて優しく一物を包んだ。

「今まで性欲に取り憑かれた様な輩を主に相手にしていたからな。正直言うと知識も何もない初心の初物相手は初めてなんじゃよ。……と、わしが弱音を吐いていては何も始まらんな。では再開するぞ」

「……はい、よ、よろしくお願いします……」

ウチワタは僕の一物を握り直し、上下にゆっくりと擦り始めた。

「んふふ、なんだかんだ言いつつもぬしの一物は硬くなったままじゃよ? 案外さっきの責めも中々具合が良かったんじゃないのか?」

「……さっきみたいなのはちょっと、勘弁して下さい」

「冗談じゃよ。ま、ぬしが仕込みがいがあるのは変わらん。順を追ってじゃな。段々にじゃ。段々に。所で今の愛撫はどうじゃ? 竿の根本から先へ……。こう、皮ごとしこしこと擦られるのは。先ほど違って辛くはないじゃろう」

「んっ……、な、何だか変な感じがします。 こそばゆいというか……」

「ならばもうちいとばかし強く握るぞ。まずは男の快楽というものをぬしの身体にしっかりと刻みつけてやるのじゃ」

ウチワタはそういうと僕の一物に右手を艶めかしく這い寄らせた。

「びくびくと暴れだしてきたぞ。先っぽだけの愛撫とは違って心地良かろう。





ちんこの説明 手コキ勃起絶頂するが精液は出ず 玉袋弄くって出せるようにしてからフェラ→射精 もういっちょフェラ射精
やりたいこと これが自慰じゃ、もっともわしと暮らしている間は絶対にするでないぞ ぬしの子種は全てわしのものじゃ
        やはりまだ精通前だったか。
        歳相応の皮被りな一物かういのう

着物から御札が落ちる
なんじゃこれは
すっかり忘れていました、村長から渡された魔除けの御札です。なんでも狐や狸なら相手なら正体を暴いて拘束できると聞きましたが、でもウチワタさんは鬼ですから大丈――

その刹那、御札の表面が青白く瞬き、バチバチと音を立ててウチワタの周りを囲んだ。光は素早く収束した後に細長く伸び、縄の様に撓る。先端が鎌首をもたげ、ウチワタの方を向いたかと思うや否や、光の縄はウチワタに即座に巻き付き雁字搦めにした。

な、なんじゃあ! なんじゃあこれは! 動けんぞ! おい平助、わしに何をした!?
えっ、あっ!? ウチワタさんにも効果があるのかこれ? いや、でも何で!? 本物の鬼なら絶対効かないって……あ、あれ、ウチワタさん、その、尻の方から、何か……。これは、……た、狸の尻尾? それに額の角も無くなってて、獣みたいな耳が頭の上に。それじゃあ、ウチワタさんって鬼じゃなくて、た、狸だったんですか!?
……あっさりバレてしまったのう。くそう、ぬかったのう。……まあ、見ての通りじゃ。わしは鬼ではなく化け狸じゃ。
な、なんで鬼に化けてたんですか! 
狸なんぞの力の弱い妖かしが鬼退治を申し出た所で、ぬしら人間は、はいそうですか任せますよとはならんじゃろう。事を円滑に進める為じゃ
弱いんじゃ鬼から村を守れないんじゃ……
話は最後まで聞け。鬼は縄張り意識が強くてな。自分より格上が居る場所には他の鬼は寄り付かんという習性がある。そこでわしが強そうな鬼に化けてその存在を知らしめれば、ここらの雑魚鬼なんぞ村には近寄りもしなくなる。正体を隠してたのはその為じゃ。敵を欺くには先ず味方からということじゃのう。
お、鬼に対してハッタリかますってことですか
簡単に言うとそうじゃな
で、でも万が一そのハッタリを知らない鬼やハッタリに動じない鬼が来たらどうするんですか?
安心せい
ウチワタの右手が


ここでもうおわりでした。

       

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Neetsha