女と男・天使と悪魔
23世紀と世界
2246年 春
新しい学校で新しい仲間と高校生活を始めることになると、少女たちは活気にあふれる・・・しかし登校している少年たちはどこか暗い表情をしている。
(ああ・・・また知らない人たちとうまくやっていかないといけないのか・・・・)
たいていの少年たちはこのような考えを持っている。なぜなら、男はこの世の中に14%しか存在しないからだ。
22世紀にドラえもんは現れなかったが、かわりに女性同士によって誕生した子供が生まれた。実際には実用化されるようになったのは22世紀からで裏では21世紀の終わりごろから出回っていた。その仕組みを簡単に説明すると。片方の女性の細胞の染色体から、遺伝となる情報を電子化して、それを液体に男性の精子と同じ役割をするように組み込み、それを女性の卵子に触れさせればよいだけだ。実に簡単で実用的なグッズも23世紀では販売されている。さらに女性と女性からは遺伝子的に100%女性になるのである。しかし男性と女性のときは50%これでは男性の人口が減って当然なのである。
どの国もこれを認めている。しかし、こうなると必然的に女性が増えすぎてしまう。そして起こったのは「男性差別」。
カイムがこれから通う高校では男女クラスというものが設置されていずに、すべてが普通クラスであった。男女クラスとは、その学校の男子全員と女子というクラスで、普通クラスとは、男女がすべてのクラスで均等に分けられているクラスである。
「自己紹介します。俺の名前は魁夢!
こうやって紹介してもわかりにくいので書き直します。
俺の名前はカイム!運動はあまり得意ではありませんが、
ひらめきのよさはピカイチだと思っています。」
魁夢という文字が消された後にカイムと書き直されていた。ちなみにこの時代意は苗字というものが存在しない。2158年にアメリカが苗字をつけなくてもいいようにしたのをきっかけにして、ほかの国でもそうなったのだ。
「咲です。みんなと仲良くしていきたいと思っていますのでよろしくお願いします。」
基本的にみんなやっつけ仕事のような感じで自己紹介が済んでいく。そんな中、とんでもないことを言い出したものがいた。
「春です。女性と仲良くしていきたいと思うでよろしくお願いします。」
教室の後ろにひっそりと固まっていた男子たちが凍りついた。
(このクラスにもやっぱりいた。男性差別者・・)
女性にとってはどうでもいいことだが、男性はいま、確実に権利を失いつつある。
イギリスでは、かなり早いころから男性国外追放が騒がれていて、世界で1番早く男性国外追放が実現した。この国に見習ってほかの国も関を切ったように、国外追放を始めた。今、男性国外追放をしていない主な国といえば日本・中国・韓国・ドイツ・トルコ・カナダ・ブラジル・オーストラリアぐらいのものだ。その仲でも日本は唯一の男性の人口が35%を超えている国なのだ。その大きな原因は、秋葉原にある。位置は元埼玉県なのだが、秋葉原男性特区の男性の人口は95%を超えている。ほかの国の国外追放をされた男性たちもかなりの割合で女性不振に陥るので、秋葉原のような世界はだいぶ居心地がよくて、ここに住み着くのである。しかし男性の殆どが大人であり現在でも男性の人口は減りつつある、そんな国でも「男性削除テロ」というものが時折行われていて、これも男性の人口減少に大いに力を貸した。
「カイム・・・男性差別とか怖いと思ったことないの?」
「咲・・・知ってるだろ?幼馴染なんだし、
あんなしょうもないイジメなんかに俺は屈しない・・・
それに俺は珍しく女にモテル男なんだぞ。」
「そうだったね・・・・じゃああたしが心配しなくても大丈夫だね・・・・」
「あたりめーだよ!お前は俺に関わんなくてもいいんだよ。」
「うんそうだね・・・」
「カイム殿!女などと話さずにこっちに来て語らいましょうぞ!」
「わかったよ亜州蘭(アスラン)。茂肋(モロク)のとこに行って待っててくれ」
アスランは丸く大きな腹をゆすりながらやせたモロクが手を振るもとへと走っていった。
「男ってたいていがああなっちゃうのなんでだろ・・・?」
咲はわかっているのにカイムに問いかける。
「咲。それは聞こえたらよくないから二度というなよ・・・」
「ごめん・・・・・」
カイムはこの時代に生まれてしまった。という不幸だけであのように、みんな男がアキバ族になってしまうのだから、仕方がないものだと思っている。でも、それを馬鹿にしている女は多く、当然のように男性は社会の隅に追いやられていくのである。
*アキバ族とは、秋葉原に住んでいるような人のことで、21世紀前半で言うヲタクの、2次元重視型のようなもの。
もう日が傾きだして、カイムがアスラン・モロクと帰ろうとしていると、周りをクラスの女に囲まれた。そいつらは、とても苛立っているように見えた。