Neetel Inside 文芸新都
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美少女70万人vsタクヤ
第十一話@同等者(バグ)

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第十一話「バグ」

 亜夕花は俺の父親だ。
 ――何故か。
 それは、俺がアイドル好きということを知っているのは世界で親父一人の男しかいないからだ。
「……」
 ナミも結衣も唖然としていた。
 完全性転換だけではない。
 その容姿は十代さながらに若く見える。
「いやあ、これ私、いやワシの妻をモチーフにして遺伝子組み替えてみたんだけど、
 息子に出会って早々『レイプ』されるとは思わなかったわ」
「あれは逆レイプだろ」
 俺の当然の主張だ。どう考えても誘ってきたのは親父だった。
 そしてうちの母親は俺を産んだ時に死んでいるが、アイドル……だったらしい。
「若気の至りってやつ? ほら、まあ母親の愛情ってやつだと思って、大丈夫」

 ――話しを本題に戻そう。
 親父は何をしに来たのか、タクヤはそれを聞かずにはいられない。
「ワタイ(私+ワシ)がこっちにきたのはタクヤ、
 今お主がやってるかなーり、やばいことについてじゃよ」
「頼むからその可愛い顔でじじ臭く話さないでくれ」
「だめか、まぁ簡単にいうとお前の力、それ、他にも使ってる奴がいる」
 ぎこちない標準語だが、今更気がついた。
「なんだって?」
「タクヤの呼び寄せた70万に含まれる能力者ですか」
 ナミの言葉に親父もとい、亜夕花は難しい顔をして答えた。
「そうなるね……。およそ10万につき一人。
 全部で七人はいると見ていいだろう」
「七人の……創造者……」
「まあ、今のお前らがそいつらに接触していれば確実に終わっていたと、私は思うよ」
 亜夕花はバッグから取り出したモニターを見せた。

「奴らが操るのはイマジン。
 想像の中でも最も端的なもので、そしてタクヤが持っている能力とは似て非なるものだよ」
 亜夕花は家の中から適当な紙を見つけてそれを記入した。
A→生命の創造
B→死の創造
C→修羅の創造
D→時の創造
E→不変の創造
F→想像の創造

     

G→???
「なんだよ、Gの???って」
「それは私にも調べがつかなかった。もしかしたらそこにはタクヤ自身が入るのやもしれん」
「このAからFは具体的に能力者の特徴を書いたものなんでしょうか」
「そう、読んで字の如くだけど、彼らはそれらに絶対的な干渉をし、
 この世界を直に影響させるイレギュラー中のイレギュラー。
 7つのバグだと思ってほしい」
「あ、もしかしてこの死の創造ってネストのあいつが使った奴じゃないの」
 結衣が指を指して言った。よく考えてみるとそうだ。一瞬で辺りを無に還すその力は死の『創造』ではないか?
「ほう、もうそのうちの一人と遭っていたのか。よく生きていられたな」
「こいつの創造はまさに創造でしかなかったんだ。死というか、無の創造だな」
 タクヤたちは自分たちの身に起こったことを振り返って説明した。
「なるほど、それなら納得がいく。
 しかし、そいつは厄介だな。
 対峙しただけで戦闘にならないんじゃ勝ち目などない」

「……」
 だからこそ、タクヤは何かを手に入れたはずだった。
 でも、それが思い出せない。
「追い打ちをかけるようだがタクヤ、
 今お前がやろうとしている美少女孕ま○計画は彼女らにバレているようなんだ」
 亜夕花はモニターの画面を変えて御剣市の一部が映し出した。
 そこには美少女たちがごまんと集まり、ある人物の統率下において演説を繰り広げていた。
『――我々を脅かす男がこの街にいる。我々を玩具のように弄び、自らの性欲のために奴隷とする男がいるのだ』
「なんだこれ」
 俺はもう何かの冗談にしか聞こえなかった。
 まあ、事実もあるが。
「こいつらはもう組織化していてな。十二万の数を従える組織らしい」
「デタラメだ……」
「リンクポトン社を覚えているかね?
 あそこはもう既に二十万の支持率を得た、間接的な連合軍になっているぞ」
「そんなのとどう渡り合うんだよ……それどころか、もう街には出られないんじゃないか」
「ふふふ、そのために私がやってきたんだろう」
 亜夕花は微妙な胸を一杯に張って言った。
「ところで、ここにいる二人は仲間か?」
 タクヤに問われたその二人はナミと結衣をさしていた。
「ナミは俺の眷属だけど……結衣は――」
「当然、私も行くわよ」

     


 あっさりと答えるが、結衣の目は真剣だった。
「そうか、それじゃあこれからについてだけどな……」

 ――三分後。
「「えぇ――!」」
「本気ですか」
「本気だよ☆」
 それは初めに仕掛ける対象がリンクポトン、二十万の勢力を持つ連合軍さながらの組織だったからだ。
「いきなりラスボスに挑むようなもんじゃないか。何でっ」
「何でって、さっきも言ったよ」
「今の現状でリンクポトン以外に叩きやすい組織があるか?
 アンサー、ない。二十万とはいえ、頭を潰せば組織は壊滅するか?
 アンサー、する。今の段階で手の内を知っているのは?
 アンサー、リンクポトン」

 つまり――、といいかけたところでタクヤが静止させる。
「勝算は?」
「百」

 笑うしかなかった。
 確かに性転換までしてしまう糞親父だが、
 頭だけはこの力を作っただけあって相当のキレ者だ。親父が百といえば絶対に違いない。
「ナミはどうだ」
「今までの戦闘経験からするとタクヤの性欲が消えない限りは百には出来ません」
「……」
 面白いことをいう……。
 タクヤは後でナミに折檻することを決めた。
「亜夕花、作戦も当然用意してあるんだろうな」
「もちろん。ぬかりないよ」

 ――――。
 御剣市の中心都市にリンクポトン社はあった。
 流れゆく人と交通の波を見下げて、社長令嬢、
 水無瀬鏡華はその白磁の肌に浮く、朱色の唇を振るわせた。
「私がこの街をもとの姿に戻して見せます。みつき、鈴音」
「「はい」」
 彼女に呼ばれた二人は凜とした装束を身に纏いながら応えた。
「タクヤの側近、ナミという女を何としてもこちらに引き入れるのです。
 そうすれば、少なくとも勝率は確実に上がります」

     


「わかりました」
 二人は顔を見合わせた後、そう言った。
「では、お行きなさい。あなたたちの力があれば、下手な援軍も返って邪魔でしょう」
 オフィスの分厚い扉を開き、外へ出た二人は溜め息をつく。
「はぁ~」
「どうして私たちがあんなイカレた奴らと面と切って立ち会わないといけないわけ?」
「鏡華が直接行けばいいのに……」
 ただ戦うだけなら不満はない。
 しかし、鏡華の言うことはかなり無茶苦茶であった。
「A―12……、瑞華が辞めたのも頷けるわ」
 二人は頷いてビルから出た。
 涼しい風と春の陽気が吹きつけたのと同時、可愛い声が掛けられた。

「そこの御二人さん☆」
 赤毛で妖艶な笑みを浮かべる女、
 申し訳程度に下げたお下げが幼さを演出し、
 そのギャップが何か本能を撫でるような淫を含んでいた。
 そこには二人を遙かに凌ぐ美少女が立っていた。
「だれ」
 そう先に口を開いたのは聡明な鈴音だ。
 彼女は物怖じすることなく、目の前の女が敵か味方かを図りあぐねていた。
「私は亜夕花。旧姓は望月だけど、二人にはちょっと私の相手をしてもらうよ」
 鈴音がタクヤの姿を見たとき、既にその場は犯されていた。
「鈴音!」
 みつきが叫んだが、時遅く、タクヤの力が彼女達の力の先をいった後であった。
「くっ」
「まさか、二人に俺と同等の力があったなんてね。予想外だったよ」
 隔離空間を展開したタクヤ、ナミ、結衣、亜夕花と鈴音、みつきの二人は対立するように立つ。
「不変と、修羅。間違いないですね」
 ナミの言葉に亜夕花は頷いた。
「同等の力は使った者勝ちというわけ?」
「そういうことらしいな。この世界でお前の『不変』はこの空間を許容したということだ」
「ここは私たちに任せて、亜夕花とタクヤは早く外へ」
 結衣が言い終わるか否かというところで、タクヤと亜夕花は隔離空間から姿を消した。
「どういうこと?」
「こういうことだよっ」
「――っ!」
 結衣が黒スカートを翻すのと同時に鋭利な切っ先が鈴音の喉元へと肉迫した。

     


「あの二人で本当に勝てるのか?」
 タクヤはビル内の美少女軍を倒しながら亜夕花に投げかけた。
「心配だったら早くここの社長、水無瀬鏡華を倒すしかない。
 百という数値の中に精神誤差は入っていないんだから」
 タクヤは予定通り、一人だけ好みの美少女を無力化させた後、
 服を脱がせて抱きかかえる。対面立位、駅弁ファックの状態だ。

「あ゛――っつああぁぁ!」
 激痛に目を覚ました少女がタクヤの胸板で暴れ出した。
 しかし、亜夕花に手首を縛られた少女はもがいたところで、
 タクヤの肉棒に刺激を与えるばかりか、より深く沈んでしまうことになる。
「あっ、ぅ゛ぅ……」
 ――チン。
 エレベータが停止すると同時に数百人という美少女たちに囲まれる。
 だが、彼女達は全員蒼白のまま動かない。
「ひどいっ」
「ぁぁ……」
「やだッ」
 顔を覆う者、仰け反る者、見つめる者、反応は様々だが、誰も仕掛けてこない。
 そう、この作戦はそういうものである。そして、タクヤは叫んだ。

「お前ら、一歩でも手を出して見ろ。こいつ共々怪我するばかりか、中出し食らわせてやるぜッ」
「畜生が!」
「ふざけるな!」
「その子を離せッ」
 タクヤの台詞に美少女達は汚い雑言を浴びせる。女など所詮はこういう生き物だ。
「早く社長の部屋までいかないと俺イっちゃいそうだよ!」
 これが決め手になったのか、彼女たちはたかだか一人の少女の為に道を空けた。
 それもしぶしぶといった感じで、あからさまに睨みつける者もいた。
 手を出そうとする気配があるときは、タクヤの逸物を加えさせた女に一声悲鳴を出させるだけで静止できる。
「どうも」
 亜夕花はそれらを丁寧に威圧しながら、でも警戒を解くことはなく、タクヤを先導する。
 しばらく行ったところで、亜夕花は扉の前で立ち止まった。
「お、着いた?」
「いや、何か雰囲気がおかしい……」
 ぐったりした少女を降ろし、ファスナーを閉める。
 タクヤは目の前の扉をゆっくりと開いた。

       

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