チッチッチッチ…………
時計の音。
慶介の寝息。それ以外何も聞こえない。
ボクはというと未だ寝れずにいた。ベッドには入っているんだけどな。
なんでだろ。今日は寝ちゃいけないような気がする。
寝てしまえばまた怖い夢を見てしまう。そんな気がする。
時間はもう次の日となっていた。
「図書室でも行こうかな……」
本も読めば眠くなるだろうと図書室へこそこそと向かった。
さすがに真夜中の学校は怖い。ボクの脳内にもしかしたらあそこの扉から手が出てくるかもしれない、とか被害妄想が浮かび上がる。
ほら、そこに通った女の子なんか……ま、るで……?
「幽霊……」
なるべく小声で呟いた。
呟いたはずなんだけど彼女はこっちをみた。ボクに気づいたらしく音も無く近づいてくる。
不気味に一歩一歩忍び寄ってくる少女の姿に普通は恐怖または不思議に思う者がいるのかもしれない。だが、ボクは堂々とした歩き姿。ロングの髪が揺れる絹のような艶やかさに心惹かれた。
「なにをしているんだ。もう消灯時間は過ぎているんだが?」
冷静に聞く。
「じゃあ、キミはなんでボクと同じようにここにいるの?」
「……キミはバカなのか? 私の質問に答えなさい」
それもそうか。
「ボクは普通に忘れ物を取りに……」
嘘だけどね。
「こんな夜間に? 先生も連れず? 忘れ物を取りに来たときは必ず担当の先生と一緒に行くはずなんだがな?」
「うっ……」
痛いことを言ってくれる。ここで嘘を塗り固めたとしても少女は簡単に削ぎ落としてくれるだろう。
「わかった。ホントのこと言うよ。図書室に行こうとしたんだ。本を借りにね」
氷のような冷徹な目に嘘はつけず……といっても、ついたとしてもまた矛盾を問いただしてくる感じがするから素直に話す。
〜Pandora Box〜
夜間徘徊
しばらく彼女はボクの目を見て嘘でないことがわかると、
「ホントのようね……いいわ。私も本を読みに来たから一緒に行きましょう」
「……あれ? もしかして昨日の図書室で読んでた子って……」
「そうよ。私。リフレッシュしたいときとか眠れないときに行ってるの。それに名前くらい覚えときなさいよ。私はこの屋憧(やどう)学園生徒会会長三年 霧梓 燕南(きりし えんな)。名前くらい聞き覚えないかい?」
知ってて当たり前のことのように話す。
「ありません」
即答する。
生徒会長は唖然とした表情で、
「え……うそ……」
「いやぁだって朝礼とか全く行きませんしね」
蓮葉や慶介といっしょに昼寝したりドッヂボールやら鬼ごっこやらかくれんぼをしてその間は遊んでる。子供だなぁ。
「ま、まぁ、仕方ないわね。そういう生徒もいるみたいだし」
しょうがない、と自分に言い聞かせるようにブツブツいっている。
「さて、今夜は何読もうかな?」
図書室についたボクは童謡や絵本が置いてある列で何かを探していた。
「あら、キミは子供みたいな本を読むのかい?」
「えぇボク実は記憶喪失なんでなにか手がかりはないかと適当に本を読んでるんです。昔のボクも本だけは好きだったみたいですし」
「そう、なんだ。すまない」
会長は聞いてはいけなかったかのように気まずそうに謝ってきた。
「いや、いいですよ。べつに。それに今のボクは『本人』なのに『本人』じゃないって親からも言われてるんですから」
「……不安にならない?」
「え?」
会長は本を手に取り椅子に座る途中で話してきた。
「急にいままでのことが……生きてきた証が全て無くなって時代というか時の流れに置き去りになってしまったことに……不安にはならないのかい?」
そんなこと考えたこと無かった。だって起きたら『自分』は『自分』じゃない自分になっていて今までの自分は何もかもわからないまま……そのまま『自分』は『ボク』となった。今の生活に充実もしているし全く不安要素などない反面これでいいのか? 本当にこのままでいいのか?とふと思ってしまうことがある。
いつかは取り戻さなくちゃいけないと思っている………………『ボク』じゃない『自分』の記憶。
「不安はありません。でもいつかは記憶が戻ったらいいなぁって思うくらいですよ」
決意は心の中にしまった。
会長はボクに向かって微笑を浮かべ、
「キミはいつもそうだったな……」
「なにかいいました?」
「い~や。まったく」
肩をすくめるとまた自分の持っていた本を読み始めた。
ボクもなにか読み始めないとな。
そう思ってボクの目に止まったものは『おねえちゃんがくれたもの』だった。
気になって手に取ろうとしたら………………
「図書室に誰かいるのか!?」
「!?」
この声は……やばい! 生活指導の山吹だ!!
「会長……これ逃げた方がいいですよね?」
「キミは先に行け。ここは私が掛け合ってみよう」
さすがは会長。物怖じしない。というかこういう状況になれているのだろうか。
「では、また会おう。愁夜」
「は、はい」
会長は前の扉から出て行った。ボクもその隙に裏口から出て行った。…………………………あれ? 本名いったっけ?
「ホントのようね……いいわ。私も本を読みに来たから一緒に行きましょう」
「……あれ? もしかして昨日の図書室で読んでた子って……」
「そうよ。私。リフレッシュしたいときとか眠れないときに行ってるの。それに名前くらい覚えときなさいよ。私はこの屋憧(やどう)学園生徒会会長三年 霧梓 燕南(きりし えんな)。名前くらい聞き覚えないかい?」
知ってて当たり前のことのように話す。
「ありません」
即答する。
生徒会長は唖然とした表情で、
「え……うそ……」
「いやぁだって朝礼とか全く行きませんしね」
蓮葉や慶介といっしょに昼寝したりドッヂボールやら鬼ごっこやらかくれんぼをしてその間は遊んでる。子供だなぁ。
「ま、まぁ、仕方ないわね。そういう生徒もいるみたいだし」
しょうがない、と自分に言い聞かせるようにブツブツいっている。
「さて、今夜は何読もうかな?」
図書室についたボクは童謡や絵本が置いてある列で何かを探していた。
「あら、キミは子供みたいな本を読むのかい?」
「えぇボク実は記憶喪失なんでなにか手がかりはないかと適当に本を読んでるんです。昔のボクも本だけは好きだったみたいですし」
「そう、なんだ。すまない」
会長は聞いてはいけなかったかのように気まずそうに謝ってきた。
「いや、いいですよ。べつに。それに今のボクは『本人』なのに『本人』じゃないって親からも言われてるんですから」
「……不安にならない?」
「え?」
会長は本を手に取り椅子に座る途中で話してきた。
「急にいままでのことが……生きてきた証が全て無くなって時代というか時の流れに置き去りになってしまったことに……不安にはならないのかい?」
そんなこと考えたこと無かった。だって起きたら『自分』は『自分』じゃない自分になっていて今までの自分は何もかもわからないまま……そのまま『自分』は『ボク』となった。今の生活に充実もしているし全く不安要素などない反面これでいいのか? 本当にこのままでいいのか?とふと思ってしまうことがある。
いつかは取り戻さなくちゃいけないと思っている………………『ボク』じゃない『自分』の記憶。
「不安はありません。でもいつかは記憶が戻ったらいいなぁって思うくらいですよ」
決意は心の中にしまった。
会長はボクに向かって微笑を浮かべ、
「キミはいつもそうだったな……」
「なにかいいました?」
「い~や。まったく」
肩をすくめるとまた自分の持っていた本を読み始めた。
ボクもなにか読み始めないとな。
そう思ってボクの目に止まったものは『おねえちゃんがくれたもの』だった。
気になって手に取ろうとしたら………………
「図書室に誰かいるのか!?」
「!?」
この声は……やばい! 生活指導の山吹だ!!
「会長……これ逃げた方がいいですよね?」
「キミは先に行け。ここは私が掛け合ってみよう」
さすがは会長。物怖じしない。というかこういう状況になれているのだろうか。
「では、また会おう。愁夜」
「は、はい」
会長は前の扉から出て行った。ボクもその隙に裏口から出て行った。…………………………あれ? 本名いったっけ?