Neetel Inside 文芸新都
表紙

玉石混交のショートショート集
G\(作:只野空気)

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「何故だ」
 青年は悩んでいた。
「何故わからない」
 絶望感をただよわせながら頭を抱える青年の正面に鎮座したモニターに映るのは真っ白、だた真っ白な画面だった。
「理解できない」
 青年はもう一度モニターに映し出された真っ白な画面を見て絶望した。
 青年には何故誰も理解できないのかが理解できなかった。こんなにすばらしいものがあるというのになぜ誰もそれを認めないのかと不思議で不思議で仕方が無かった。
「これはすばらしいはずなんだ」
 そうつぶやくも青年は誰からも相手にされていなかった。それでも青年は自分がすばらしいと思えるものをひたすら作った。続けていればきっといつかだらかが評価してくれるに違いないと信じていた。
 
「やった」
 青年が声を上げたのはモニターに映し出された「すばらしい」の文字を見てからわずかコンマ数秒という早業だった。青年は涙を流して喜んだが、なぜか涙はなかなかとまってはくれなかった。青年はそれほどにもうれしいのだろうとほほを伝う涙を拭きもせず喜んだ。
「やっとわかる人を見つけた」
 青年はうれしくなって、また自分がすばらしいと思うものを作り続けた。
 何度も続けるうちに「すばらしい」という文字は増えていった。青年はそのたび「やった」と涙を流して喜んだ。そして青年は前にもいっそう増して「すばらしい」のためにがんばり続けた。
「やっぱり僕はすごいな」
 青年はモニターに映る二十個の「すばらしい」の文字を見ながら満足そうにつぶやいた。
「これからもがんばろう」
 そう自分に言い聞かせるようにして青年はまた作品作りに熱中した。
 
「理解できない」
 ある日、青年は自分より評価された作品を見てそうつぶやいた。青年が見つめるその画面には青年の見たことのような無い賞賛の言葉が映し出されていた。青年はこの程度なら自分のほうがきっとすばらしいに違いないと思い、なぜこの作品がこんなに賞賛の声を受けているのかを考え始めた。
「そうだったのか」
 そして青年はひとつの答えにたどり着いた。
「これは演技にちがいない」
 青年がたどり着いた答えはこの作品の作者による自作自演。そう、賞賛の捏造というものだった。このような自分のすばらしい作品と違ってこのような無様な作品が賞賛される事が理解できなかった青年は早速自らが突き止めた事実を公表した。
「自作自演ですね」
 長ったらしく嫌味を言うのは青年の美学に反していたので短く、そして簡潔に言いたいことを言ってやった。青年はすがすがしい思いでモニターを見つめていた。きっとまた「あなたはすばらしい」とでも言われるのではないだろうかと若干の淡い期待すら抱いていた。
「お前はいったい何を言っているんだ」
 しかし、モニターの向こう側の反応は青年の予想と大きく異なっていた。
「そんなことをして誰が得をするんですか」
「まったくわかっていない人がいたものだ」
 青年は正しいことをしたはずでいたのに、なぜか避難される立場になっていた。
「理解できない」
 青年は自分を非難し続けるモニターをにらみつけ、そして頭を抱えた。
 正しいことをしているのに理解されない。それよりも何故自分のすばらしさを納得してくれないかが青年にはやっぱり理解できなかった。
「あなたみたいに自作自演自作自演と言ってる人は自分がそうだからといって回りもそうだと思ってしまうんですね」
 青年の目はそのひとつの評価に憤りを感じ釘付けになった。
 非難されていたものの、まさか自分がこの憎らしい存在と同類だといわれ始めるなどとは思っても見なかったのだ。それだというのにこれではまるで自分が、自分だけが醜い存在だといわれたようでとても悔しかったのである。
「馬鹿め」
 そうは言ってみたものの、青年はモニターに映った自分へと向けられた評価に純粋に悔しがることが出来なかった。何故か青年は何かが胸のどこかに引っかかっているような妙な感覚を思えていたのである。
 それは何気ないことで妙な感覚から確信へと変わった。
 
「そうだったのか」
 青年は自らの作品へとささげられた「すばらしい」の文字を見て寂しそうにつぶやいた。
「あぁ……まったく、すばらしいよ僕は」
 青年は涙でにじみ始めたモニターをにらみ、そこに並んだ二十個の「すばらしい」を書いた人間を思い出してしまった。
「本当にすばらしい」
 自分のしたことを覚えていなければいけないと思う反面、青年は何も知らなかったほうが良かったのではないだろうかとも思い始めていた。なぜなら、このようなことは覚えていても自分の重荷にしかならないと判断したのだ。
「忘れないぞ」
 しかし、忘れてはならないと判断した青年はそういってこの事実を刻み付けるように涙ながらに皮肉を込めて今まで通り二十一回目の「すばらしい」という賞賛の声を自らの作品へと送った。 
 
 
 
「やった」
 そして青年は二十一個目の「すばらしい」を見て感涙を流した。

     




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「G\」採点・寸評
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1.文章力
 40点

2.発想力
 45点

3. 推薦度
 45点

4.寸評
 「自作自演」を描いた"だけ"の作品。
 アイデアのまま素直に表現しているな、と思いました。ただそれだけで、ストーリーは特にありません。プラスアルファがあれば評価は違ったかなと。
 文章は読みにくさを覚えました。恐らく、一段落に同じ言葉を入れすぎているからだと思います。ケアレスミスも多いのでもったいないと思うものです。

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1.文章力
 50点

2.発想力
 50点

3. 推薦度
 50点

4.寸評
 すいません、自分の頭が悪いのか理解不能でした。ただ文章の流れや着眼は悪くないとは思うので50より下げてませんが…
 同じレベルの読者は多数だと思いますので、もうちょっと伝えたいものに対して理解してもらう努力をしてほしいです。
 最後に、前作もそうなんですが作者様は読者をないがしろにしていないでしょうか。あくまで読者あっての作品です。大切にしてあげてください。
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1.文章力 10点
2.発想力 30点
3.推薦度 20点
4.寸評
 まず、誤字が気になりました。避難→非難など。
 次に読点の少なさ、漢字にすべき字をそうしていない、くどい言い回しが多い等、文章の粗が目立ちすぎるせいか、読んでいてそっちにばかり気を取られます。
 内容に関しても、抽象的すぎて何を言いたいのか、伝えたいのか、全く分かりません……。もうちょっと厚みのある文章を心がけてみてはどうでしょうか。

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1.文章力 60点
2.発想力 50点
3.推薦度 70点
4.寸評

 タイトルからしてそのままなので、オチはあってないようなものだった。意外性も特に感じられず、誰から見てもこれ以外にはオチは考えられないという流れだったろう。そういう意味では、独創性はあまり感じられない作品だった。
 しかし、新都社的に見ればちょくちょく取り上げられるテーマであり、かもし出されている「勘違い男」という主人公の雰囲気も上手く表現されていたように思う。それが読者から見て好意的かは別として。
 「新都社の中での企画に投稿する作品」として見れば、なかなかに面白い作品だったのではないだろうか。
 ただ、文章力としては読点の配置バランスが悪いと感じたり、独特のセリフの口調が現実味薄かったりと、気になる部分もいくつか見受けられた。

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1.文章力 40
2.発想力 30
3. 推薦度 20
4.寸評
 これはコメント欄から生まれたのかな。
 主人公の叙情的な文がなかなか好き。
 地味ながらもコンパクトなオチが付いていてよかった。

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各平均点
1.文章力 40点

2.発想力 41点

3. 推薦度 41点

合計平均点 122点

       

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Neetsha