俺は歩く、会議室の方へ。
静かに一定のリズムで歩を進める。胸にはつい先ほどまで何も無かったが、今はひし形の、鷹の模様の、ちょうどメダルほどの大きさの、銀細工が付けられていた。ただの人が見れば、普通の綺麗なバッチ。見る人が見れば、その精巧な造りに思わず声が出てしまうような、そんなバッチだった。
全くこんなバッチに何の意味があるのか?ダセェ。と、そう先ほどまで思っていたが、これには魔力のようなものが有るらしい。
周りの人間の態度は一目瞭然。コレを付けているだけで特別扱い。
『NGCSの搭乗者か』『すげぇ、俺も乗りたい』『あのバッチいいよなぁ、かっこいい』
俺のほしかった物を手に入れる力がこんな小さなバッチにはあるらしい。だがこんなもんじゃない、まだだ、お前らをもっともっと見下してやるために。こんなもんじゃない。。。。それでも俺の目的が達成に向けて動き出したとわかるだけで、顔がニヤケてしまいそうだ。
俺はノックをせずその部屋に入る。第3小会議室だ。中にいたのは5人。男が4人、女が1人。俺はすぐにこの5人が只者じゃないとわかる。なんたって俺は天才だからな。『匂い』みたいな物でわかる。全員俺と似た『匂い』がする。だが俺と同じじゃない。どいつもこいつも英雄にはなれない。俺と同じ高みまでは登って来れない・・・・木偶の坊だ。
「千藤大尉ですね」
一番近くにいた優男風の男が声をかける。風貌は、髪は普通のショート、目は細く面はそれほど悪くない。階級は中尉。一つ下か
「私は藤山 春樹。階級は中尉です。この隊の参謀を命じられました、よろしくお願いします。隊長」
本来小隊に参謀なんて付かないが、NGCSは特別だった
「千藤だ。よろしく」
そいつは馴れ馴れしく手を出してきた。仕方なく俺は握手をする。まったもって気持ち悪い
それを皮切りに他の奴らも挨拶をしてきた
「堺 総一 階級は中尉。」
「北山 亜美 階級は少尉です。本日付けでこの隊に配属されました、よろしくお願いします」
「上川 祐樹 階級は准尉です。本日付けでこの隊に配属されました、よろしくお願いします」
「金城 浩太 階級は少尉。本日付けでこの隊に配属された、よろしく。」
堺 総一 この中では一番使えそうだ。無造作に伸びた髪を後ろでくくっている。面はいい、俺は頭も面もいいが、こいつと並ぶと少し見劣りしそうだな。
北山 亜美 唯一の女。茶髪。軍は髪を染めることを禁止しているから地毛なんだろう。真面目で有能ですって面してやがる。こいつは知識があってもバカだな。
北川 祐樹 この中では一番使えないだろう。何処にでもいるような真面目な青年って感じだな。この隊に入れたのは努力の賜物ってわけか。だがその先にはいけないな。ただの無能だ
金城 浩太 日に焼けてそうなのか、元々なのか判断に苦しむが肌が黒人のように黒い。角刈りで、筋肉質。筋肉バカか。。。
「これにメンバー全員の詳細が乗っています」
そう言って藤山が、5ページの紙が入ったクリアファイルを渡してきた。
「あとで見よう」
そう言って机に置いた
「では、早速。ミッションのことは聞きましたか?」
俺は―――ああ、と返事をする
「ではそのミッションの概要を説明します。まず我々第10小隊は明日の明朝地下ルート52を使ってパラマ山のふもとまで装甲列車で行きます。そこからミッション開始、NGCSでパラマ山中腹の工場まで移動します。我が軍はすでに何度か爆撃を試みたようですが全て失敗してるようです。この事からパラマ山の工場は相当の兵力を有していることがわかります。戦闘は早い段階から予想されるでしょう。またこの作戦は時間制限つきです。敵の主力前線基地が近くにあるためミッション開始から30分以内で帰還しないといけません。いくらNGCSでも味方の援護なしに敵主力と戦うのは無理があります。予想される内容としては、10分で工場まで到達。5分で情報の正否の確認と工場の殲滅、5分で帰還、となるでしょう。帰還にはルート48を使います。」
そこまで言い切ったあと―――質問はありますか?と聞く
誰も質問をしない、当たり前だ。こんな作戦100%成功するに決まっているたとえ俺以外が愚図のように使えなくとも、俺1人でカンタンに達成できる。それほどまでにNGCSは他を圧倒するほどの力を持っているのだ。
藤山が最後に隊長から一言どうぞと、こっちを向いた。
いままで藤山の説明を聞いていた4人の注目が一気に俺に集まる
「俺達の機体が他とは違うカスタマイズをしている意味、他とは違うカラーリングを施されている意味、そして俺たちが集められた意味は、もう分かっているな。」
第10小隊は俺を英雄にするために作られた
「第10小隊は俺たちを英雄にするために作られた。俺たちに敗北は許されない!以上だ!」
そして俺が英雄たらん道を歩き出した、最初の会議は終わった
続く