Neetel Inside ニートノベル
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この世の果てまで
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  物語/折り返し地点



 あれからずっと歩き続けてきた、ってこの世界でのわたしの物語はきっとそんな感じ
で始まると思う。

 あの洪水がすべてを飲み込んで、全部がナシになって……思い返すとつい最近のこと
のようだ。洪水は40日間続いて、そしてこの世界が姿を現した。わたしはこの世界を
見て泣いた。何もない、荒野。以前、よく見た夢と同じ光景。わたしはこの世界でキョ
ウジくんを探す旅をするんだと知った。
 それからずっと歩き続けてる。肩に下がるハチキュウだけをお供に。

 朝が来て、昼、そして夜が来て、また朝が来る。それだけの日常。洪水を生き延びた
前の時代の町を楽しんだり、何もない荒野にぽつんと生えてる草を見つけて心があった
かくなったり……わたしはどこに留まらず、歩き続けた。世界を。何もない世界を。
 どうしてこうなったんだろう?もう、この世には、わたし1人しかいないんだろうか?
孤独。寂しい。でも、予感は止まない。いつか、キョウジくんに会える気がする。彼は
きっと、わたしとの再会を待っている。この、何もない世界で……

 寂しいよう、寂しいよう。やっぱり、1人は寂しい。頭がおかしくなりそう。あの頃
はアミがいて、サクラがいて、キョウジくんやケンジくんが馬鹿やってて、カミカワく
んがふらふらしてて、シンジくんがipod聴いてて……今は遠き栄光の日々!

 もう何年経ったんだろう?何百年か経ったんだろうか?相変わらず、わたしは死なな
い。死ねない。意識は尖ったまんま。記憶は鮮明なまんま。わたしだって人間だから、
諦めたくなって、自分の頭に引き金を引いたりしたけど、怪我はすぐに治っちゃって、
死ぬことも出来ずに、なんだかそんな自分がおかしくなって、あはは、と笑って、また
旅を続けてる。

 …………

 ずり下がる外套をぐいっと顎上まで持ち上げて、わたしは、歩いてる。予感は強くな
ってる。なんだか、そろそろ、会えそうな気がする。まず初めに、彼になんて言おうか?
何百年と溜め込んできた無限に近い愛の言葉を囁いてやろうか、それともわたしを置い
ていったことを罵ってやろうか、それとも……それともいきなり手を掴んで歩き出しち
ゃおうか……なんてね。妄想。ずいぶんとわたしも1人上手になったもんだ。これも長
年の鍛錬のタマモノ。

 世界をどこかしこ周ったけど、実は、まだ日本には行ってない。もし日本に行って会
えなかったら世界中どこにもいない気がするから。なんだかドキドするんだ。怖いんだ。
でも、わたしの足は日本へ向かっている。予感が強くなってきたから?ううん。違う。
 昨日、1羽のフクロウを見た。わたしの上空を飛び回って、そして日本がある方角へ
飛んでいった。フクロウは幸運を呼ぶ、というのをどこかで聞いたことがある。だから、
勇気を出して行ってみようと思う。この世界で初めての生き物を見たから。
 もしキョウジくんがこの世界に現れたらどこにいても感じ取れるって思うんだけど、
まだその感じはない……でも、たぶん、その時は近い。もちろんわたしの妄想。だから
わたしはわたしたちのはじまりの場所を目指そう。

 このまま世界は終わるのかもしれない。それでもかまわない、とわたしは思う。けれ
ど、せめて、世界の終わりはキョウジくんと見てみたいと思う。そして世界を終わりを
見てから、キョウジくんとこの世界から、世界の終わりから逃げ出すんだ。これも妄想
だけど、さ。でも、これくらいは叶えて欲しいって思うんだけど。これって贅沢かしら?

 わたしは空に向かって発砲する。スタートの合図だ。ハチキュウは乾いた音を立てて
銃弾を空へ飛ばす。さて、行こうかな。懐かしの我が母校に。






 続く




       

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