Neetel Inside 文芸新都
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文藝夏企画 作者変え&FN祭会場
「トンネル守(原作:『怖い話』より)/山優」

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 俺たちは山奥のトンネルに向けて歩き出した。後輩の一人がこう聞いてきた。
「リーダー。どうしてこんなことするんすか」
「お前も生意気になったな。これは伝統なんだよ。伝統。俺らの族は七月十四日、トンネルの真ん中に石を置くんだよ。口答えすんな」
 と答えはしたが本当になんでこんなことやる必要があるんだよ。と自分でも疑問に思う。
 トンネルは不気味だった。しかし、俺はまるで自分の家にでも入るようにトンネルに入った。ビビッてたんじゃ後輩に馬鹿にされちまう。
 一人だけビビリの後輩がどうしても入れなかった。俺は怒鳴る。
「てめえ。それでも俺たちの族の端くれか」
 それでも後輩はついてこなかった。よほどビビリなんだろう。が、やがて俺たちがトンネルの真ん中に向かって歩き出すととぼとぼとついてきた。
 
 トンネルの真ん中には何者かがいた。
「幽霊すかっ。やばいっすよ。逃げましょう」
 と言う後輩もいたが俺は近づいていく。ここで逃げたらリーダーとして面子が保てない。
 よく見るとその者は国鉄の職員のようだった。寝ているようだ。みなにそれを知らせる。
「おいチキンども。安心しろ。ただの国鉄のおっさんだ」
 その言葉を聞いて皆が近寄って来た。まったくさっきまでの恐怖心はどこに行ったのか後輩の一人が国鉄のおっさんを蹴った。
「うげっ」
 目は覚めたようだ。おっさんは逃げようとするが哀れなことに周りは完全に包囲されていた。皆で殴ったり蹴ったりする。
「おいやめろ」
 俺が言うと暴行は終わった。後輩の一人が聞く。
「なんでやめるんすか」
「こいつに怪我させると面倒なんだよ」
 俺はそう答えるとおっさんに話しかけた。
「おい。おっさん。今日のことはなかったことにしろ。そうしねえとどうなるか分からねえぞ」
「は、はい」
 おっさんは完全にこちらをビビッていたようだった。そのときふと俺にある考えが浮かんだ。逃げ帰ろうとするおっさんに言う。
「おい。おっさん。幽霊が出たことにしちまえ。そうすれば誰もここら辺によりつかねえ」
「は、はい」
そうおっさんは答えるとダッシュでトンネルの出口にへと向かっていった。

       

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