彼らはいつものように校門をくぐり、校舎の中へと入っていった。
昇降口にはクラス分けの紙が張ってあった。新太と駿は同じ一組で、担任は去年と同じ山中。ニーナは二組だ。駿は惜しそうに言った。
「うはっ。三年連続で三人同じクラスにはなれると思ったのに」
ニーナは慰めるように言った。
「しかたないよ。あと私は部活があるから帰りは一緒に帰れないから」
彼らは二階に上がると各々の教室に入っていった。教室にはほとんど人がいなかった。黒板にはこう書かれてあった。
入学式の用意をしに体育館に行くこと。
新太と駿はなるべく遅く行くことにした。作業をしたくないのだ。だらだらと教室で話す。やがて、クラスメイト達が帰ってきた。
新太と仲の良い岡田もその中の一人だ。岡田は新太に声をかけてきた。
「よう。新太久しぶりだな。サボったのか」
新太は反論する。
「今、来たばかりなんだよ」
が、岡田はそれが嘘だということを感じ取った。
「そうか。そういうことにしてやるよ」
と岡田はにやつきながら言った。新太は少しムカッとした。が、こんなことでいちいち怒ってはいられない。新太は話題を変えた。
「そういえばお前が前言ってた漫画面白かったよ」
「そうだろ。面白いだろ」
岡田は嬉しそうに言った。
そのうち担任の山中が入ってきた。山中は三十くらいで背が低い。そして、鼻の穴が異様に大きい。山中は挨拶を終えるとこう言った。
「今日は入学式が終わったらそのまま解散だ。明日から授業が始まるので頑張ろう。じゃあ、皆体育館に行こう」
と。また、挨拶をして皆だらだらと体育館に向かって歩いていく。
新太は自分の席に座ると壇上を見上げた。そこには先生や生徒会の人間達がいた。
その中には彼が好意を抱いてる女性—森本桜もいた。彼女は副生徒会長なのだ。
桜は生徒会長の石橋と付き合っているという噂もあるが新太はそんなことちっとも信じていない。
入学式は滞りなく終わった。駿がやってきて言った。
「今日俺んちで遊ぼうぜ。いいゲームを買ったんだ」
新太はこう言って断った。
「ごめんな。今日は無理だ。でも、一緒に帰ることはできるぜ」
彼にはこれからやることがあるのだった。駿は、少しがっかりようだったが
「ならしょうがないな」
とあきらめた。
二人は様々な話をしながら自転車で家へと向かった。例えば、一組の担任の山中は何故あれほど鼻の穴が多いのか等々である。
そんな話をしているうちにいつのまにか駿と別れる場所まで来た。駿は
「じゃあな」
と言って新太に手を振りながら自分の家へと向かっていった。新太も手を振りながら
「さようなら」
と言い返した。
それから、彼は一人で黙々と自転車をこぎ続け、無事自宅に到着した。
彼がやること。それはここ三日間宿題のために我慢していることだ。
それは……ゲームだった。パソコンゲームだ。ジャンルはエロゲー。
彼がエロゲーを始めたのはこの春休みからだった。
興味本位でエロゲーを買った。十八禁だったが簡単に買えた。身分証明を求められることはなかった。あまりに、簡単に買えたので拍子抜けしたぐらいだった。
これまでに二つのエンディングを見てきた。一つはメインヒロインとのハッピーエンドだった。もう一つは誰とも結ばれずに終わるエンディングだった。
あまりに悔しかったのでネットで攻略情報を探した。そしてあるエンディングを目指してこつこつとプレイをしてきた。
目指しているエンディング――それはハーレムエンドと呼ばれるものだ。ヒロイン五人全員と主人公が結ばれるエンディングだ。
彼は一時間ばかり、攻略情報に忠実に従い淡々とゲームを進めた。そして、やっと待ち望んでいた瞬間がやってきた。エンディングが始まったのだ。無論ハーレムエンドだ。
主人公が五人全員と行為後の余韻に浸っているところでエンディングは終わった。彼はにやにやしながらその光景を見ていた。
そしてその性器は勃起していた。彼は自分の性器をしこしこし始めた。パソコンの近くにはティッシュ箱が用意してある。やがて精子が勢いよく飛び出した。
「ふぅ」
彼は思わず呟いた。
一体何回このゲームで抜いたのだろうか。ふと彼は思った。が、もはやそれは本人も分からないほどの回数になっていた。
彼は自分の精子をくるんだティッシュをゴミ箱にぶち込んだ。