Neetel Inside 文芸新都
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初めて書く人の短編集
なおちゃん

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「ねぇ、帰りにどこか寄ってかない?」


私の直ぐ後ろで声がしたが
それが私に向けられた言葉ではないとわかっている

私にはそんな声をかけてくる友人はいない
友人なんて、面倒臭いだけだ


でも、そんな私にも親友がいる


なおちゃんだ


彼女はいつも同じ場所で
学校帰りの私を待っている

毎日、毎日
学校が休みの日でも、私がそこを通ると彼女は
当たり前かのようにそこにいる


彼女に最初に話しかけたのは私だ
彼女は目を輝かせて私に応えてくれた

久しく感じてなかった、触れ合い

私の問いかけに応えてくれることは少なかったが
彼女はいつも私の後を黙ってついて来てくれる

友人なんて面倒臭いと思っていた私でも
孤独感は感じる
時々それは、大きな壁となって
私に倒れ掛かってくる、潰されそうになる


学校帰りの彼女との交流が、
私を孤独感から守ってくれている


彼女は何故かいつもお腹を空かせていた
私はいつも学校近くのパン屋でパンを買い
川辺で一緒に分け合っていた



  

私は風邪をひいた
学校を休んでしまった
楽しくも無い学校を休んだことはどうとも思ってはいなかった

気になるのは、なおちゃん

今日も私を待ってくれているんじゃないだろうか?
お腹を空かせているんじゃないだろうか?

でも、一日くらい・・・




次の日
私の熱は一向に下がらない
今日もなおちゃんは待ってくれてるんだろうな
昨日来れなくてごめんって謝らないと・・・

私の中の不安感に似た何かは
まるで私の身体を操るように
なおちゃんのもとへと歩ませていた



なおちゃんは待ってくれていた






なおちゃん、昨日は来れなくてごめんね






彼女に声をかけた瞬間からの記憶が無い

気がついた時、私は病院のベッドにいた
倒れていた私を見つけた誰かが
救急車を呼んでくれたらしい

お医者さんが言うには、念のために
明日まで入院しなければいけないらしい


あぁ、またなおちゃんを待たせちゃうな・・・





退院後、私は真っ先になおちゃんのもとへ走る 



なおちゃん!
なおちゃん!



なおちゃんはいなかった

私が待たせたまま来なかったから
なおちゃんは私が嫌いになったのかな


次の日も、その次の日も
なおちゃんはもうそこにはいなかった


なおちゃんと一緒に居た時の感覚
心が開放されたような、あの感覚




これが、友達なのかな










季節はずれの雪が降る卒業式の日

私は数人の友人と共に帰路についていた


なおちゃんがいつも待っていてくれた場所

そこをいつも一人で通っていた私




なおちゃんが居なくなったのはとても寂しい
けれど、私は友達というものを知ることが出来た



なおちゃん、もう一度会いたいよ


ありがとうって言いたいよ






突然鈴の音が、私の前に響いた






久しぶりだね





ごめんね





ありがとう、なおちゃん














          おわり

       

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