「・・・はぁ」
狭い部屋の中でため息をつく少年がいる。そう、俺だ。
どう考えてもオッサンくさいしぐさだが、そんなことは気にしないでほしい。
さて、何故ため息なぞをついたのか。
答えは簡単、部室の看板を見ればわかるハズ。
そこにはこう書かれているだろう。
「文芸部」と。
あぁ、そうさ。
アイデアが浮かばなんだ。
誰かアイデアをくれよ、俺が書き起こしてやるぜ。
・・・・・・アホか俺は。
「どうしたの、恵一」
「んのわぁっ!?」
突然、後ろから声がかかる。
「なんだぁ、華菜か。驚かせんなよ」
「なにぃ?その言い草は?」
意地の悪い口調で華菜は言う。
こいつの名前は、月宮華菜(つきみや かな)。
文芸部で、俺以外の唯一の部員。
あまりにヘンテコな髪型と低い身長。
いわゆる、なんだ。「妹キャラ」?
そんなかんじのヤツだ。
「おい、何のようだ?」
「先生がよんでる」
「あ、今日補習あったんだ」
三言で出て行く俺もどうかと思うが、教師の発言には従わざるを得なく、
俺は自分の教室に行くハメとなった。
教師に呼ばれ、教室へ戻った俺だ。
しかし、そこには誰かがいる、ということは無かった。
俺は一人、無人の教室でただ居残っている。
「・・・あぁ~、小芝のヤロー、遅い!」
小芝とは、ウチの担任の瀬高のことだ。
頭がハゲてきて、小さな芝生のように見えることからこのあだ名がついた。
(そういや、なんか外が騒がしいけど・・・?)
俺は、廊下に出てあたりを見渡した。
するとそこにはとんでもないものがいた。
「宙に浮く人間」である。
信じられるかい?いや信じられないだろう。
俺だって今日の今、はじめて見た。
そして、そいつは着地した後、廊下のムコウへ走っていった。
(何だったんだ?アイツ・・・)
「コラ、何で外へ出ている?お前は補習生のハズだろうが。戻れ」
後ろから、小芝が声をかける。
「って、そんなことより、今の見ました?人が宙に浮いてるの」
小芝は、それを聞いて答える。
「はぁ?人が宙に浮いた?んなわけがあるか!さっさと戻れ!!」
何か変だ。
あの人間は、どうやら小芝には見えてないらしい。
・・・あいつ、いったい何者だ?
どうにか補習を終了させて文芸部部室へと戻ってきたのだが、
それを出迎えてくれたのは、
おなじみ、月宮華菜と、
先刻、宙に浮いていたヤツだ。
「・・・・・・お前ら、何してんの?」
誰もが浮かぶであろう疑問を投げかける。
「ん~、この子がここに走ってきたから拉致った」
うそつけ。
「ちぇっ」
ところで、こいつはなんなんだ。
「ん~、如月勇希ちゃんだって」
そうじゃなくて。
「お茶、おいしい?」
無視か。
「・・・・・・・・・・うん」
答えんでいい。
「そっか~、良かった」
ところで華菜よ。
「ん?」
この、勇希とやらはどうしてここにいる。
「だから、拉致ッた」
もういい、黙っとけ。
勇希さんよ、何でここに来た?
「・・・・・・逃げ場が・・・・・・ないから」
のどから搾り出すような声で答えた。
「これ・・・・・・何・・・・・・?」
静かに、テーブルの上に載っている一枚の板を指差す。
あぁ、これは華菜の部員表だ。
ここに着たら、これを表に向けて、帰るときに裏向けにするんだが、
それを華菜は割ってしまったんでな。
「私も・・・・・・欲しいな・・・」
なぜ?
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
沈黙の後、
「逃げ場が・・・・・・ないから・・・・・・」
わかったわかった。
「・・・・・・うん?」
俺も、さすがに何かおかしいことには気づいていた。
しかし、これで確定したようだ。
先刻のことを、思い出してほしい。
そう、俺以外には、この「如月勇希」は見えていないハズだ。
「小芝には見えていない」じゃない。
「小芝にも見えていない」だった。
ここに来るまでに出会った生徒は4人いたが、
その全員が「見ていない」と証言している。
先刻、勇希が浮いていたときにまわりにいた生徒たちもだ。
すなわち、こいつにも見えているハズがない。
「・・・おい、お前・・・」
「ん?」
「勇希が見えてるのか?お前には」
とりあえず、聞いてみたら、何かしら答えは返ってくる
「見えてない」
・・・・・・そうかい。
そうだったのかい。
で、お前は不思議に思わないのか?
「不思議な話オンリーなら、ここにいっぱいあるじゃん?」
といって、横にある本棚へと指を向けた。
「まぁ、そりゃそうだが。
じゃなくて、目の前に透明な人間がいるんだぞ!?」
「あの・・・・・・」
勇希が再び口を開く。
「お茶・・・もらっていいですか?」
そして、意味もない言葉を吐いた。
「ん、勝手にとっちゃっていいよ~」
はいそこ。
どこにいるかなんて、どうやってわかるんだ?
なんか、完璧にそっちに顔を向けていたが。
「ほら・・・カップ持ってるじゃん」
・・・・・・そうかい。
ん?ってことは、体と服類以外は見えているのか?
「だいたい、ね」
勇希、そのへんはどうなんだ?
「・・・私が望めば、見えるようになる」
ほほぅ、そうか。
それじゃぁ、華菜にも見えるように望んでみろ。
直後、
「うわぁ~、こんな格好してたんだねぇ~」
見えるようになったらしい。
「とりあえず、次は誰にも見えないようにしてみたら?」
「・・・・・・はい」
直後、
どういうことだ?俺には、見えているが。
「え、私には見えないけど~」
そこんとこはどうなんだ、勇希よ。
「・・・・・・わからない」
そうかい。まぁ、知ったこっちゃねえや。
「とりあえず、閉めるから部屋から出てくれ」
「わかった~」
「・・・・・・はい」
そして、俺は扉に鍵をした。
DAYS
1話「非日常との出会い」
夕方
「・・・で」
家の前に立っている俺は、
ひとつ気になっていることがあった。
「お前はなんでここにいる!?」
「はい?」
そう、勇希が俺の家にいた。
しかも、2階のベランダに腰掛けている。
「・・・おい、家は?」
「ありません」
即答。
「・・・下宿とかには?」
「行ってません」
また即答。
「・・・どっか寝泊りしてる場所は?」
「橋の下」
恒例の即答。
「・・・何が言いたい?」
「住まわせてください」
恒例の即答。
「・・・そんなん言われても・・・」
「食事代くらい自分でまかないます」
恒例の即答・・・?
「そうじゃなくて、俺の家族にどういえばいいんだ?」
恒例の即答は、来なかった。
「・・・・・・忘れました?」
そうだった、こいつは自分が望まない限り、俺以外の人間には見えないんだ。
ってぇことは、何の問題もないのか?
・・・いや、問題がひとつある。
「・・・そこ、俺の部屋のベランダだよな?」
「はい」
「俺の部屋で寝泊りってか?」
「はい」
「はい、じゃない!」
お前は女だお前と同じ部屋で寝ろっていうのかよおい勇希よ。
冗談じゃないぞ、俺にはまだ彼女さえいないんだ。
近所の住人から怪しまれたらどうするんだ?
「私は、自分で(ry」
じゃなくて、俺の精神に異常をきたす恐れがあるといっているんだよ。
「心配ありません。気配を消すことくらい出来ます」
「・・・どうしてもそこじゃないとダメ?」
「はい」
「なんで?」
「橋の下は寒いからです」
「・・・・・・理由にならん・・・・・・」
よく考えてみたら、華菜のとこに行ってもいいんじゃないのか?
「それは・・・ちょっと」
そうか。
「どぅぅしてもここじゃないと嫌なんだな?」
「はい」
「・・・・・・しゃぁねえ。住まわせてやるよ」
「ありがとう・・・ございます」
なんか口調が変わったな。
その夜、俺は窓から差し込んでくる光によって目が覚めた。
「・・・・・・なんだ?」
窓の外を覗き込んでみると、
「・・・!!」
勇希がいた。
ただいるだけじゃない。
初めて見たときのように、光に包まれて空を飛んでいた。
背中から、巨大な白い翼を出して。
まるで、天使のように。
「あ、おはようございます」
誰でも言いそうな質問を浴びせる。
「お前、何もんだ?」
即答された答えは、こんなものだった。
「神より使わされし天使の一人」
やっぱりな。
なんかおかしいと思ってたんだよコイツ。
人間じゃないとは思っていたが、なんだ。
天使?
神より使わされし天使?
ふざけんじゃねぇよ。
俺はそんなものに耐性を持っちゃいない。
「・・・そうか」
俺は、逃げなかった。
その勇希の姿には、たったひとかけらの寂しさが含まれていたから。
「・・・・・・驚かないんですね」
驚いたさ、一生分な。
「で、俺をどうするつもりだ?」
「どうするつもりもありません。ただ、神の指示によってあなたの監視および保護を
命じられた。それだけです」
・・・保護?
「考える必要はありません。私がいるかぎり、あなたに危害は加えさせませんから」
頼もしいお言葉だ。
しかし、ひとつ気になることがある。
俺の監視って言ってたけど、
俺はいったい何者だ?
「・・・それは・・・・・・」
考える必要がないってか?
「あなたにとって、それを知る必要はありません。それを知らないといけない状況に
なれば、いずれ教えますよ」
そうか。分かった。
ところで、さっきから気になっていたことがあるんだが。
「・・・はい?」
「ズボンくらい履いてくれ。下着まる見えだぞ」
「―――ッ!?」
やっぱり、気づいていなかったようだ。
「見ないでッ!」
その叫びと同時に、光が飛んできて、頭に命中し、そのまま気を失った
「・・・で」
家の前に立っている俺は、
ひとつ気になっていることがあった。
「お前はなんでここにいる!?」
「はい?」
そう、勇希が俺の家にいた。
しかも、2階のベランダに腰掛けている。
「・・・おい、家は?」
「ありません」
即答。
「・・・下宿とかには?」
「行ってません」
また即答。
「・・・どっか寝泊りしてる場所は?」
「橋の下」
恒例の即答。
「・・・何が言いたい?」
「住まわせてください」
恒例の即答。
「・・・そんなん言われても・・・」
「食事代くらい自分でまかないます」
恒例の即答・・・?
「そうじゃなくて、俺の家族にどういえばいいんだ?」
恒例の即答は、来なかった。
「・・・・・・忘れました?」
そうだった、こいつは自分が望まない限り、俺以外の人間には見えないんだ。
ってぇことは、何の問題もないのか?
・・・いや、問題がひとつある。
「・・・そこ、俺の部屋のベランダだよな?」
「はい」
「俺の部屋で寝泊りってか?」
「はい」
「はい、じゃない!」
お前は女だお前と同じ部屋で寝ろっていうのかよおい勇希よ。
冗談じゃないぞ、俺にはまだ彼女さえいないんだ。
近所の住人から怪しまれたらどうするんだ?
「私は、自分で(ry」
じゃなくて、俺の精神に異常をきたす恐れがあるといっているんだよ。
「心配ありません。気配を消すことくらい出来ます」
「・・・どうしてもそこじゃないとダメ?」
「はい」
「なんで?」
「橋の下は寒いからです」
「・・・・・・理由にならん・・・・・・」
よく考えてみたら、華菜のとこに行ってもいいんじゃないのか?
「それは・・・ちょっと」
そうか。
「どぅぅしてもここじゃないと嫌なんだな?」
「はい」
「・・・・・・しゃぁねえ。住まわせてやるよ」
「ありがとう・・・ございます」
なんか口調が変わったな。
その夜、俺は窓から差し込んでくる光によって目が覚めた。
「・・・・・・なんだ?」
窓の外を覗き込んでみると、
「・・・!!」
勇希がいた。
ただいるだけじゃない。
初めて見たときのように、光に包まれて空を飛んでいた。
背中から、巨大な白い翼を出して。
まるで、天使のように。
「あ、おはようございます」
誰でも言いそうな質問を浴びせる。
「お前、何もんだ?」
即答された答えは、こんなものだった。
「神より使わされし天使の一人」
やっぱりな。
なんかおかしいと思ってたんだよコイツ。
人間じゃないとは思っていたが、なんだ。
天使?
神より使わされし天使?
ふざけんじゃねぇよ。
俺はそんなものに耐性を持っちゃいない。
「・・・そうか」
俺は、逃げなかった。
その勇希の姿には、たったひとかけらの寂しさが含まれていたから。
「・・・・・・驚かないんですね」
驚いたさ、一生分な。
「で、俺をどうするつもりだ?」
「どうするつもりもありません。ただ、神の指示によってあなたの監視および保護を
命じられた。それだけです」
・・・保護?
「考える必要はありません。私がいるかぎり、あなたに危害は加えさせませんから」
頼もしいお言葉だ。
しかし、ひとつ気になることがある。
俺の監視って言ってたけど、
俺はいったい何者だ?
「・・・それは・・・・・・」
考える必要がないってか?
「あなたにとって、それを知る必要はありません。それを知らないといけない状況に
なれば、いずれ教えますよ」
そうか。分かった。
ところで、さっきから気になっていたことがあるんだが。
「・・・はい?」
「ズボンくらい履いてくれ。下着まる見えだぞ」
「―――ッ!?」
やっぱり、気づいていなかったようだ。
「見ないでッ!」
その叫びと同時に、光が飛んできて、頭に命中し、そのまま気を失った