第9章 鉱山脱出!!
ロイドは剣を構え果敢にもゴーレムに向かっていった
「オマエノ剣ナド効カナイト言ッテイルダロウ、気ガ狂ッタカ?」
ゴーレムはそう言うと拳を振り上げた
「死ネエ!!」
「今だワトソン、風属性の弾を奴の胸にぶち込め!!」
ロイドの合図と同時にワトソンは魔法銃を引き抜いた。
「ウィンドブレット!!」
ゴーレムの拳が振り下ろされようとしたその時、銃から発射された鎌鼬がゴーレムの胸を切り裂いた。
「ヌウウウウ!!」
ゴーレムは苦痛に胸を押さえた、岩の体は削り取られそこから王石がかすかに見えた。
「やはり、こいつは風が弱点だったんだな!!」
ロイドは走りながら剣先をゴーレムに突きつけ、その剣は真空の刃を纏った。
「疾風の高速突き、ゲイルズスラスト!!」
次の瞬間、聖剣イングラクトはゴーレムの胸を貫いた。
「俺たちの勝ちだ。」
ロイドは露になった王石をゴーレムの胸から抜き取った。
「グオオオオオオオオオオ!!」
ゴーレムは叫び声を上げながら、ただの岩の塊となって崩れ落ちた。
「これで3つ目だな・・・・。」
ロイドは息を切らしながら王石を袋に入れた。すると突然、大きな揺れが起きはじめた。
「何、地震?」
ユリアは戸惑い、辺りを見回す。さらに、広間の天井が徐々に崩れ始めた。
「これは・・・・、落盤だ!! おそらく王石を失ったことで鉱山のバランスが崩れ始めたのだろう。」
そう言っている間にもまた天井が崩れた。
「この鉱山は崩れるぞ、脱出だ!!」
ロイドは魔力を使い果たして倒れている、ワトソンとジョアンを揺すった。
「おい、動けるか?」
「うん、なんとか動けるよ。」
「私も大丈夫ですわ。」
2人は起き上がると、鉱山の異変に驚いた。
「ここはもう崩れる、急いで脱出するぞ!!」
ロイドたち4人は大急ぎで駆け出していった。狭い坑道を必死で駆け抜けていくが、崩れ落ちた岩が後ろから通路を塞いでいく。しかも、だんだん落盤が近づいてきている気がする。
「まずいな、このままだと間に合わないかもしれない。」
ロイドたちの頭の中に不安がよぎった。
「あれは、トロッコだ!!」
ワトソンが叫んだ。見ると古びたトロッコが線路の上に停まっていた。
「あれに乗れば間に合うかもしれない、みんな乗って。」
ロイドたちはトロッコに飛び乗った。
「乗ったはいいが、お前操縦できるのか?」
「構造は車と似たようなものだよ。え~と、これかな。」
ワトソンが左側についている棒のようなものを倒すと、トロッコは軋んだ音を上げながらゆっくりと動き出した。
「ビンゴ!!やっぱりこのレバーがブレーキだったんだ。」
トロッコは次第にスピードを上げていった。この通路は下り坂になっているので、重力で自動的に加速する仕組みだ。すると、目の前にカーブが見えてきた。ワトソンがレバーを引っ張り上げると、トロッコは甲高い音を立て、火花を散らしながら減速する。
「うーん、ブレーキが甘いな~。スピードがなかなか落ちない。」
トロッコは猛スピードでカーブに迫る。このままでは脱線してしまうかもしれない。
「みんな、体をイン側、カーブの内側に傾けるんだ!!」
ワトソンに言われるままに、ロイドたちは体を左に傾けた。
「曲がれーーー!!」
ワトソンは前にある鉄の輪を目いっぱい左に回した。するとトロッコは左に傾きながらカーブを曲がった。
「ふう、なんとか曲がりきれた。」
ワトソンは額の汗をぬぐった。
「このトロッコはブレーキが利きにくいみたいだ。カーブは重心移動で曲がるしかない、協力頼むよ。」
「分かった。なんとか生きて脱出しよう。」
ロイドたちはうなずいた。
一方そのころ町では・・・・
「大変だーーー!!拾参番鉱山で落盤だぞ!!」
町の住民が騒ぎ立てながら鉱山の周りに集まってきていた。
「なんで突然落盤なんて起きるんだ? あそこは廃鉱になったはずだろ。」
「さあ?そういえば、ついさっきここに人が入っていったらしいぞ。」
「おいおい、大丈夫なのか?」
そこへ武器屋の親父が現れた。
「おい、落盤があったて聞いてとんで来たんだが、本当か?」
「ああ、ゲンゾウさん。本当だよ、今もすごい地響きがするだろう?」
「なんてこった。実はわしの店に来た騎士風の男がここへ入っていったんだ。なんでも鉱山にあった変な石を探すとか・・・・。」
ゲンゾウは額に手をあてた。
「ええい、こんな所でぼさっとしている場合じゃねえ!! 助けに行くぞ!!」
ゲンゾウは鉱山の中に入ろうとした。
「ゲンゾウさん、鉱山の中は危ねえよ。あんたまで落盤に巻き込まれちまうぞ。」
町の男たちはゲンゾウを抑えた、
「ええい、離せ!!くそ、若いの、無事でいてくれよ・・・・。」
ゲンゾウは無事を祈るしかなかった。
再び、拾参番鉱山内
「右、左、左!!」
ワトソンの合図に合せてロイドたちは重心を移動し、うまくカーブを切り抜けていた。しかし、落盤はすぐ後ろまで迫ってきていた。
「まずい、落盤が迫ってきている、出口はどこだ?」
「見て、光が見えてきたよ!!」
ワトソンが指差す方を見ると、白く輝く穴が見えた。トロッコは猛スピードでその中へ突っ込んでいった。
「うわああああ、鉱山からなんか飛び出てきたぞーーーー!!」
「逃げろーーーーー!!」
トロッコは勢い余って、入口の高台から飛び出し宙を舞った。
「どういうことだ、俺たち空を飛んでる?」
何がなんだかよく分からないまま、今度は猛スピードで落下し始めた。
「うわあああああああああ!!」
トロッコは轟音を立てて墜落しバラバラになった。地面には穴が開いた。
「痛たた・・・。皆無事か?」
ロイドが立ち上がった瞬間、鉱山の入口は岩に閉ざされた。
「間一髪だったね。」
ワトソンも立ち上がって言った。
「おお、お前たち無事だったか!!」
ゲンゾウはロイドたちのところへ駆けて行った。
「あんたは、武器屋の親父。心配かけたな。」
「落盤があったと聞いて、とんで来たんだぞ。しかし、『死の鉱山』から生きて帰ってくるとは。あんたら只者じゃねえな。ところで、あの変な石は手に入ったのか?」
ロイドは袋から王石を取り出して見せた
「ああ、おかげで手に入れることが出来た。」
「そうか、そりゃ良かった。」
「俺たちはこれから宿へ行く。明日にはこの町を発つ予定だ。」
ロイドはそう言って宿へ向かおうとした。
「そうだ、お前に渡したいものがあるから、出発する前にわしの店に来い。」
あたりがすっかり暗くなったころロイドたちは宿へ着いた。部屋へ入るとロイドとワトソンは疲れがどっと出て、そのままベッドへ倒れこんだ。
「痛たた、まだ全身が痛むな。」
ロイドたちの体にはトロッコごと地面に打ちつけれた痛みが残っていた。
「しょうがないよ、あんなところから落下したんだから。ところで、あの親父さんは誰?」
「王石の情報をくれた武器屋の親父だ。渡したいものがあるって言ってたが、なんだろうか。」
一方、隣の部屋ではユリアとジョアンが休んでいた。
「あ~、疲れた~。今日は別々の部屋みたいね。」
ユリアはベッドに突っ伏した。
「別々って、殿方と同じ部屋のときもあるんですか?」
ジョアンは驚いた。
「そうよ、部屋がいっぱいのときはそうなっちゃうわ。」
「私にはちょっと抵抗がありますわね~。」
「大丈夫よ。ロイドは騎士道精神の塊の様な奴だから、そんなことしないし。ワトソンはハンドル握ると性格変わってハチャメチャなことやりだすけど、普段はとても優しいし。」
ユリアは杖を握った。
「もし、変なことするようならあたしが黒焦げにしてあげるわ。」
「はあ・・・。」
こうして夜は更けていき、4人は眠りについた。
翌日
ロイドは懐かしい音で目が覚めた。この高く響く金属のような音、エルロードでもよく聞く音であった。そう、鉄を打ちつける音である。鍛冶が盛んなカントラでも朝からところどころでこの音が聞こえてくる。ロイドはつい故郷を思い出してしまった。
「国王陛下はお元気であろうか・・・・。俺がいない今騎士団はどうなっているだろうか・・・・。」
「ロイド、どうしたの?」
ワトソンの声でふと我に返った
「ああ、すまん。鍛冶の音で故郷を思い出してしまった。さて、朝食にするか。」
一方、隣の部屋では
「ユリア、朝ですわよ。起きてください。」
「う~ん。ラファエル~、まだダメよ~。」
ユリアは変な寝言を言っていた。おそらく幼馴染のラファエルといちゃいちゃしてる夢でも見ているのだろう。
「ラファエルって誰かしら?とにかく、起きてください。」
「ふあ~。おはよう。」
ユリアは眠い目をこすりながらようやく起きた。
「寝言でラファエルって聞こえたんですけど、誰ですの?」
「えっ、ああっ、あたしの幼馴染よ。それより朝食行こうか。」
ロイドたちは食堂で朝食を済ませると、宿を出た。
「そういえば、武器屋の親父のところへ行かないとな。」
一行は武器屋へと向かった。
「おお、お前らか。もう出発するのか?」
ゲンゾウは朝早くから鉄を打っていた。
「ああ、世話になったな。」
ゲンゾウは奥から何やら刀のようなものを持ってきた。よく見ると、昨日振った刀より短く、片手剣ほどの長さしかなかった。
「餞別だ、持って行け。」
ゲンゾウはそれをロイドに手渡した。
「これは?」
「そいつは、脇差っつう小型の刀だ。急ごしらえでこんな物しか作れんかったが、切れ味は打刀に勝るとも劣らねえ。いつでもそんなでかい剣振り回せるとは限らないだろ。なんかの役に立つはずだ。銘は決めてねえ、お前が考えろ。」
ロイドは脇差を腰に納めた。
「すまない、ありがたく貰っておこう。そういえば、まだ名乗ってなかったな。俺の名は『ロイド・アルナス』、エルロード魔法騎士団長だ。」
「わしは『ゲンゾウ・カツラギ』だ。良かったら、またカントラに来てくれ。」
ロイドとゲンゾウは握手を交わした。
「ああ、また来よう。それじゃあな。」
ロイドたちはゲンゾウに手を振りながら、店を後にした。
ロイドはビュリックの荒れ地を歩きながら、脇差を抜いてみた。美しい輝きを放つ刀身には、波のようにうねる刃紋が刻まれていた。
「銘か・・・。こいつの銘は『漣(さざなみ)』だ。」
ロイドは波のような刃紋から脇差に「漣」と名づけた。こうして、聖剣イングラクトと名刀漣の双剣がロイドを守ることとなった。
「見て~。目の前に街が見えてきたわよ~。」
ユリアは声を上げた。
「これは・・・、なんて巨大な街だ・・・。」
ロイドは目の前の光景に声を失った。街にはいくつもの巨大な建物が、まるで塔のように立ち並んでいた。そして無数の煙突からは黒い煙が吐き出され、列車や自動車が縦横無尽に走り回っていた。
「あれが共和国首都ビュリックだよ。」
ワトソンは誇らしげに言った。
第9章 完