第一章 旅立ち
ここは4国のうちの1つ、エルロード王国の首都エルロード。この街は周りが高い城壁で囲まれており、終末戦争期から難攻不落の都市と謳われてきた。そしてその城壁の中に石造りの家々がひしめき合っている。エルロードは古くから伝統的な鍛冶産業が盛んなため、鉄を打つ音や人々の喧騒によって街は活気にあふれている。これらの家々にまれるようにして、街の中心には巨大な建造物が聳え立っている。そう、エルロード城である。
エルロード城 城内
「さて、行くか・・・・・。」
一人の男が窓から城下を見下ろしながら言った。この男は長身で細身の体に騎士風の鎧を纏い、金色の長髪をなびかせていた。彼の名は「ロイド・アルナス」、この物語の主人公である。ロイドは10年に1人と言われる剣の腕を持ち、19才のときに屈強を誇る、国王直属の親衛隊であるエルロード魔法騎士団に入団した。そして現在、弱冠27才にして騎士団長に就任した。
さて、彼が何処へ向かうかというと、それは3日前にさかのぼる。
3日前 謁見の間
「ロイド・アルナス、参りました。」
ロイドは玉座の男に向かって、片膝をつきながら頭を垂れた。玉座の男はひげを蓄え、威厳ある外見をしていた。年は50歳ぐらいだろうか。そう、彼こそが第33代国王「グラハム33世」である。
「うむ、よく来た。まあ顔を上げ給え。」「はい。」
ロイドが顔をあげると、グラハムは口を開いた。
「ロイドよ、王石について知っているかね。」「はい、心得ております。」
「ならば話は早い。最近ある組織が王石を集めているらしいのだ。知っての通り王石はすべて集めると悪魔王の力が手に入り、この世界の支配者になれると言われている。それゆえ、一刻も早くすべての王石を集めて、神界王オーディンのもとへ返さねばならん。」
グラハムは重々しい口調で話した。そしてロイドの方を見ると、真剣な眼差しで言った。
「ロイドよお前の力を見込んで、この重要な任務を任せたい。引き受けてくれるか?」「はい、私の命に代えてもこの任務、遂行して見せます。」
ロイドは自信に満ちた声で答えた。そしてロイドの目は紅蓮の炎のごとく、使命感に燃えていた。
再び現在のエルロード城
ロイドは部屋の隅にある大剣を手に取った。朝の日差しにかざしてみると、あらゆるものも浄化されそうな美しい輝きを放った。この剣は「聖剣イングラクト」といい、エルロードの名匠が王室に献上した剣の一つである。剣の柄には青い宝石がはめ込まれており、吸い込まれそうな銀色の幅の広い刀身がすらりと伸びている。そして刃の裏にはエルロードの象徴である、神獣ユニコーンが彫られている。重量はかなり重く、一般にブロードソードと呼ばれる両手剣の一種であろう。
そのため相当の使い手でなくては扱えないため、これを持てるのは代々の魔法騎士団長のみとなっている。ロイドはイングラクトを背中の鞘に収めると、部屋の扉を開けた。
ロイドは部屋を出ると、城門へと続く長い廊下を歩き始めた。廊下には高価な甲冑や絵画や彫刻などが飾られていた。だが、今のロイドにはそんなものを眺めている余裕はないであろう。しばらくするとロイドは一つの肖像画の前で歩みを止めた。それは初代魔法騎士団長「ワーグナー」の肖像画であった。
「ワーグナー様・・・・。行ってまいります。」
ロイドはワーグナーに一礼すると、再び城門へ向かった。城門に着くと、そこにいた衛兵は敬礼をした。
「ロイド様、お気をつけていって下さいませ。」
「ああ、必ず戻ってくる。それまで城を頼むぞ。」
ロイドが力強く答えると、衛兵は城門を開けた。すると町中から、歓声が聞こえてきた。
「ロイド・アルナス万歳ーーーーーーーーっ!!」「ロイド・アルナス万歳ーーーーーーーーっ!!」
ロイドは住民たちに祝福されながら、街の門へと向かった。そして不安と期待と使命感が交錯する気持ちを胸に街の門をくぐった。
これが長く過酷な旅の始まりであった・・・・・・・・・・。
第一章 完