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雲子の日記
良子の日記1

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良子の日記1

 3月15日(月)


 さっき電話があった。
 これで就職活動、20社目も×。
 ちょうど、クジパンを辞めてまる半年になる。
 失業手当もお終いだ。
 これからは少ない貯金を食いつぶす一方である。
 やはり私の様な中卒にまともな会社での就職は無理なのか。
 しかし 正直言って、もう工場には戻りたくない。
 あそこでの生活は地獄だった。
 だけどこれから先、なんの当ても見つからない事もまた地獄。
 欝だ。
 朝、電話をもらってから、ただ、好きな絵を描いたり、サイクリングをしたり、酒を飲んだりと、そんなことしか出来なかった。
 もう、うんざりである。
 このままでは生活が破綻する。
 しかし実家には戻りたくない。
 あそこは……あいつらとは合わない。私のような不出来な娘では、とうてい優秀な妹になんか勝てっ子ないんだ。
 


 ……死のう。
 死んで、楽になろう。それしかない。それが良い。
 そうだ、自殺しよう。
 駅前のあの高いビルの非常階段の一番上のとこから、真下のコンクリートへ向かってまっ逆さまにダイブしよう!
 あそこは数えたところ14階あったから、確実に即死できるはずである。
 さあ、やってみよう。
 もう0時も回ってるし、誰にも気付かれずに出来ちゃうはずだ。
 やってみろ、良子。勇気を出せ。
 どうした、良子。
 嫌なのか。死ぬのが嫌なのか?



 死ぬのが嫌なんじゃない。
 ただ、私のぺちゃんこになった死体の第一発見者の人の気持ちを考えたら、それはあんまりだと思うんだ。
 自分の事だけを考えてちゃいけない。
 もっと、人の気持ちになってみないと。
 うん。そうだ。その通り。死ぬのは考え直した方が良い。
 それより就職が無理ならやっぱり良子にはバイトしかないと思う。
 バイトから、正社員になる道だってあるはずだ。
 何よりお前は女なんだから、真面目に働いてればそのうち良い出会いが生まれて、全部良い方向に傾くはずさ。それまで頑張れよ。



 日記の中で自分と対話してどうなる?
 さっき買って来たチューハイもちょうど尽きた。
 もう、起きていてもしょうがない。
 寝よう。
 寝るしかない。
 明日になれば吉報が届くかもしれないことを祈ろう。
 それまで暖かい布団の中で、楽しい夢でも見てようぜ。
 うん。

       

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