Neetel Inside 文芸新都
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黒と白の黙示録
第九回(アグヤバニ作)

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「本気なの!?無謀よ!怪我人に戦闘を任せられない!!」
『……アキナ、怪我は貴方の所為ですが』
 オペレーターの声を無視し、アキナが悪魔へと突っ込むトウヤを追う。
 しかし、速度が違い過ぎる。トウヤのそれはまさに俊足、一瞬の内に目標へと辿り着き――
「……!?」
 爆砕した。
 粉塵が巻き起こり視界を遮る。が、音は鳴り止まない。
 音が奏でるは死のレクイエム。粉塵の中、悪魔の爪とトウヤの"コテツ"が軌跡を描き鈍く光る。
「そらそらそらァ!!!防ぐのが精一杯かコラァッ!!」
「グ……ガアアアアアアアアアッッッ!!!!!」
 疾走し、砕き、血を撒き散らし、二つの黒い影は闇夜の廃墟を走り抜ける。
 その後をアキナが追う。背の羽を羽ばたかせ、丸で竜巻が通ったかの様な瓦礫の後を。
「……あのスピードで走っていても、ここから見て取れるくらいに出血してる……!」
『危険です、あのままでは傷口が開いてしまう』
「判ってるわよ……!!」
 更にスピードを上げ追い上げるが、差が開くこと無かれされど追いつく事は出来ず。


 だが、ふと前をゆく二つの影が停止した。
「オラアァッ!!」
 大上段に"コテツ"を振り上げ、前進で得た力を全て太刀へ込める。
 即ち瞬激。それは見て取れぬ一撃の斬りとなる――!
「ッゴバァァァァッ!!」
 それを受け、悪魔は地へ堕ちる。本能で危険を悟り、腕を盾にした。結果、右を持っていかれたが支障は無い。
 邪魔な瓦礫を押し退け立ち上がる。
『うーん……蘇生能力が大分高いね』
「ああ……腕がもう生えて来てやがる、薄気味悪ぃヤローだ」
『物理的より呪詛的な攻撃を、だね。あの特性ごと殺した方が早いよ、トウヤ』
「構わん。蘇生できん位に粉々に吹っ飛ばす」
 告げ、更なる攻撃の為に"コテツ"を振り上げる。
 挙げた腕からは鮮血飛び散り、開いた傷からは血が滴る。
 その風体を追いついたアキナが止めた。
「貴方……!止めなさい!本気で死ぬつもりなの!?」
 其の声は太刀で斬る。
 喉元へ切っ先を当てて、トウヤは静止を振り払う。
「五月蝿ぇ。オマエ、殺すぞ?」
「な……」
 アキナは見た。その眼を。
 赤い、血の様な――


『――アキナッ!!』
 オペレーターの声で意識を引き戻される。そしてその意味を考察する。
 全ては一瞬のモノ、クズクズしている暇は無い。
 判断、危険、殺意、迫るは、決死の一撃――!
「……ッ!Zweite offnung, Unsterbliches Schild……!」
 それは正しかった。ほぼ反射的に、自らの真下へと防御円陣を展開する。
 打ち砕くは悪魔の突撃、自らの身を相手へと当てる捨て身の攻撃。
 ぶつかり合う二つの力。宙にて力は反発する。
「馬鹿か、そんなことしてどうするんだよ」
 ふと、それを奉還していたトウヤが言った。
 そのまま自然に、"コテツ"を放った。
 切っ先は真っ直ぐに二つの力が交錯する反発点へ。
「――吹っ飛ぶぞ。身構えろ」
 第三の力が加わり、臨界点を越えた力は暴発する。

       

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