Neetel Inside 文芸新都
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新都社で人気作家になるための手引書
おまけ「ある新都社作家の肖像」

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 今日も裏サイトの「オナニーのおかず人気投票」において露伴ちゃんに一票を投じることから、僕の朝は始まる。次いで裏目さんとツンDEレイダーのヒロインの投票ボタンを押す。また一歩露伴ちゃんが階段を駆け上がり、ツンDEレイダーのヒロインが太っていく気がして、朝の憂鬱な気分が少しだけ晴れていく。
 いくつかのサイトを巡った後、新都社には最後に訪れる。好きな作品のネタバレコメントを見てしまわぬよう、目を細めながら最新コメントを覗く。ひょっとしたら自作へのコメントがあったりしないかな、なんて少しばかり胸を躍らせるも、結局は毎日胸を痛めることになる。
 前回の更新から二ヶ月が経った。初めのうちは三日に一回更新していた。もう名もある程度売れただろうと判断して、一週間ごとにした。順調に回を重ねていったものの、コメントの伸びの方は順風満帆とは行かなかった。そしてスランプが訪れる。
 少しばかり話に詰まったのだ。別に人気がないから止まったわけじゃあない。予定していた展開に自分で納得がいかなくなっただけ。だからといって急に路線変更しても不自然になるだろ? その辺りを解決するために、少し時間が欲しかっただけなんだ。僕は誰に対して言い訳をしているのだろう。どうせ誰も聞いてくれないのに。
「急に更新ペース落ちたけど大丈夫?」だとか、「待ってるよー」といったコメントが欲しかったわけじゃない。本当に。
 気分転換に、自作名をGoogleで検索してみる。題名の中の「が」を「の」に変えてみたり、作者名で検索したり。出てくるのは新都社と、更新報告twitterと、自分のブログばかり。この広大すぎるネットの中で、僕以外に僕の作品を話題にしてくれている人はいないようだ。
 ゴッホは生前、一枚しか絵が売れなかったという。
 一枚売れたんだから、いいじゃないか。
 連載を始めた当初は、最速新都を見るのを楽しみにしていた。マイリスが1から3に、レートが3から3.5に増えたのを見た時、連載を始めて良かったと心から思った。こんな自分でも生きていて良かった、と。ひょっとして自分には才能があるのじゃないかなんて、少々うぬぼれたりもした。
 けれどもしばらくすると、レートは少しずつ下がっていってしまい、それを機に最速をチェックするのが辛くなった。一次は3にまで増えていたマイリスは再び1に逆戻りしていた。
 その1も実は自分で。
 友人に新都社で連載していることを教えようか。そうすれば応援コメントをつけてくれるんじゃないだろうか、と考えもした。でも、「読んだよ。うん、いいんじゃない」などと当たり障りのない感想を言われ、今よりもずっと虚しい気持ちになるかもしれないと思うと躊躇われた。それにもう何年も前から、友人と呼べるような人の顔を、思い浮かべられなくなっていた。
 編集部のレビュースレに、自作のレビューを頼むために書き込もうとすると指が止まる。酷評でも構わないし、「すいません、最後まで読めませんでした」であったって、仕方のないことかもしれないのに。もしかしたら何かの間違いで誉められるかもしれない、と想像することすらも、どこか怖くなってしまっていた。自分の作品を信じることが出来なくなってしまっていた。
 そんなことに思い悩むより、まずは続きを書けばいいんだ。ネタ出しだけでもしていれば、案外どうにかなるものだって、経験則で知っているじゃないか。
 それでも書き出せないのは、報いがないからだろうか。もしコメントを貰えても、自分はそれに値するだけの人間じゃないと卑下しているからだろうか。書いても書いても、読んでくれる人の姿が想像出来なくなっているからだろうか。
 煩悶しながらまた最新コメント欄を眺める。時折自作のコメント欄を恐る恐る開き、sageコメントが来ていないかチェックする。そこには自分に向けられた新しいメッセージは何もない。「ちょっと展開に悩み中」という作者コメントに応えてくれている人もいなかった。
 相変わらず毎日毎日飽きもせず更新されていく新都社の作品群には、面白いものがたくさんある。あんぽんは可愛すぎるし、shurabaマンガは相変わらずぶっ飛んでいる。いつからか僕は、そこに自分が割り込んでいくことが図々しいことなんじゃないかと思うようになってしまった。
 もう新都社にこだわらなくてもいいんじゃないか。
 さっさと新人賞への投稿作品を仕上げて、プロになるんだ。そうすればお金だって貰えるし、胸を張って生きていけるじゃないか。
 そう決心しても、いざ取り組もうとすると、「これはデビュー作として一生残るのだから、恥ずかしい作品には出来ない」だとか、「確かにこのネタは面白いけれど、家族にどん引きされてしまうんじゃないか」とか、「これは今の流行に迎合しているだけだ。僕が書きたいのは本当はこんなことじゃない」なんて悩み出して、書き始める前に挫折してしまう。
 もう何度同じことを繰り返してきただろう。
 もう何年同じことを繰り返してきただろう
 そうして僕は今日も更新をせず、オナニーのおかず人気投票に新たな票を加えて眠りにつく。ツンDEレイダーのヒロインより裏目さんの方が登録は早かったのに、同好の士がいるのか、太っていくヒロインの方がわずかに票を伸ばしている。
 夢の中で僕は露伴ちゃんのお尻を撫でさすりたいのに、馬にフェラチオされる夢を見てしまう。
 それはそれでいいものなのだけれど。

(完)



露伴ちゃん:「マルコビッチさん」(HELP先生作)のヒロイン。かわいい。
裏目さん:「うらめしや」(メタロと月子の人作)のヒロイン。かわいい。
ツンDEレイダーのヒロイン:「ツンDEレイダー」(しろくろ作)のヒロイン。回を重ねるごとに太っていくのがかわいい。
あんぽん:「ミスティック・マンション」(むび先生作)のヒロイン。あんぽんかわいい。
shurabaマンガ:インカ帝国先生作。いじめっこといじめらっれこの間に生じる裸の友情に女生徒がうっとりする漫画。女教師がこわいい。
フェラチオする馬:「エッチマン」(akinaka先生作)に出てくる馬バージョンの翼。かわいい。

       

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