Neetel Inside ニートノベル
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〜あなひだ・わたみぎ〜
Phase 5

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INSIDE(5)

『属性つきノベルジャンキーたちは明日を夢見ることができるか?』
 Act5. アキラのブログ(上)

~実加の場合 <土曜日>~

 翌朝起きると、窓から太陽がさんさんと差し込んでいた。
 いや、時間はすでにお昼近くだったから朝というのは語弊があるか。
 うーん……なんかまだちょっと眠いなあ。
 昨日は、酔いがまわるのはやくって、真夜中くらいには寝たのにな。
 まるで前に飲んだときみたいだ――あのときは若さ(笑)にまかせて、ほぼ徹夜でしゃべりまくったのだ。
 そうだ、小説。
 アキラ、アップしたかな。
 隣で寝ているヒナを起こさないようにベッドを出たわたしは、机の上のノートパソコンを起動、『MeetNovel』にアクセスした。
 アキラの名前を探す。
 それは、一晩分下に移動していた。
 まさか間違ってsage更新にしたとか?
 心配になってわたしは、作品タイトルをクリック。
 一秒後表示された、目次ページに変化はない。
 どうしたんだろう。アキラになにかあったのか?
 そんなことになったら――

 確かにわたしは、アキラの作品を読むたび自分と引き比べて落ち込んでしまう。
 勝ちたくて。勝てなくて。
 でも、こんなカタチは“勝ち”じゃない。
 せっかく、わたしも固定客様がついてくれて、一歩、成長できたのに――
 あなたとちょっとは対等に張り合えるレベルに近づけた。そう思ったのに。

「なんでだよ……
 こんなの違う。勝ちじゃないよ。どうして」

 そのとき、ページ一番下の作者コメントが目に入った。

『実はブログ立ち上げ準備中……更新滞ってスミマセンm(__)m可及的速やかにアップします!』

「なあんだもーアキラのやつ驚かせて!!」
「むにゃ?」
 と、後ろからまぬけな声がした。
「アキラくん?」
「そーよ! もーちょっと聞いてよヒナー」


 なんだかんだと理由をつけて、この日もヒナはうちに泊まっていった。
 ヒナの飲みっぷりときたら絶好調で、わたしもすっかり釣られてしまい、またしてもわたしたちは真夜中近くにほぼカンペキに潰れてしまった。
 うう、もう若くないなあ。学生時代のようには行かないか。
 そう言いあいながらわたしたちはベッドに入った。



~アキラの場合~

 目を開けるとそこには女がいた。
「?!!!??!
 お、おまえ、なんでここにっ」
「何でって、泊まったからよ」
 俺を見下ろしてにやーりと(だがどこか人がよさそうに)笑うのは、昨日ミカの話をしてくれたヒナだった。
「で? 今度は俺に何の用なんだよ」
「用事はないわ」
「……へ?」
「昨日さ、いろいろあって小説のジャマしちゃったじゃない。
 だから今日はちょっと早く起きれるように、ミカを酔い潰してあげたのよん♪」
「………マジですか……
 ていうかそしたらオレも酔っ払ってダメになるとか考えなかった?」
 するとヤツはのたまった。
「前にミカが歓送迎会で飲んでた晩もフツーに更新してあるよね。
 あなたにお酒はきかない。すくなくっとも小説機能には影響はない。あるのはせいぜい睡魔だけね」
「……なんつー女だ」
 そのヒトのよさげな笑顔とどっか間延びしたしゃべりでそれか。どこぞのアニメキャラも真っ青だなオイ。
「ま、実際その通りだけど。
 それじゃありがたく書かせてもらうぜ」
「ハイハ~イ♪
 それじゃヒナちゃんはさきに寝てまーすv」
「……オイ」
 あのね、俺は一応男なのよ。身体は“姉さん”だけどココロは野獣なのよ。その気になったらやるこたやれるのよ(多分)。でなんで即熟睡モードなんですか。日本語400字以内で論述してください(笑)。
 しかしヤツの平和すぎる寝顔の前に、俺の不平は雲散霧消した。
「……小説かこ」

 そうだ、ブログも更新しなきゃならなかった。
 昨夜こいつの肝いりで立ち上げたブログには、パスワードつきの掲示板がある。
 パスワードは『MI/KA』。
 機を見てやつが、ミカにこのブログを発見させる。さりげなーく『名前とか入れてみたら~?』なんていって開かせる。そういう作戦だ――
 この方法なら俺は、MI/KAとサシで会話ができるだろう。
 ヒナの話はいまいち、要領がよくないのだ。
 それに、間接的な方法でとはいえ、本人と言葉を交わす以上にそいつのことを知ることのできる方法はない(と、思う)
 この段取りをつけてくれたヒナは、大恩人だ。
 襲うなど、ひととして、とんでもない。
 俺はすっかり寝入ったヒナに手を合わせ、それから執筆に取り掛かった。

     

OUTSIDE(0.5)(回想)


***ヒカリ:チャット明け なう***

 アキノは『考えさせてくれ』と言ってオチた。
 あたしは机にこぶしを叩きつけていた。
 なんで。なんでこうなるのよ。
 こうならないためにあえて『アキノの身体は女の子』て、はっきりそう書かせたのに。

 でも、これはこれでいいかもしれない。
 もしもこの事実をミサが知れば。
 その後はあたしが、アキノと。
 ごめんミサ。でも、これだけはゆずれないんだ。
 たとえあなたがおさななじみで一番の親友でも。アキノの身体が――

 そんなことを考えていると、目の前でチャット画面の表示が変わった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

アキノ がログインしました。

アキノ: 次の連載、来週からなんだが、このことを題材にする。
ミサにも読んでもらって、それでもアリだっていったら打ち明ける。
それでいいか?
俺とミサ(一部お前)の状況を、ミステリー風味にザッピングで書いていく。
すぐにネタが割れると興ざめなので、最初の何回かは時系列を逆に、つまりその日の夜中に活動している俺の分を先に持ってくるようにする。

ざっくりプロットねったがこんなん。

第一話(月曜日)…俺が小説を書いて投稿して読む。ミサは小説書きつつ自分の文才に悩んでいる
第二話(火曜日)…ツメが割れていた日のこと。俺が小説を書き、読む部分でツメについて提示。ミサもツメが割れたので切る。その前後の会話(お前がウチ泊まりに来るっていったの多分ここだろ?)、ミサが小説を書いて読んで悩むところ
第三話(水、木、金)…ここは俺のパートとミサのパートを2回入れる。二回目のラストで、パートの配列を時系列順に戻す。具体的にはこう
・一回目(水曜日) 俺はミサの文章が減ったので案じるが、タイムリミットでコメ入れに失敗。ミサは不調(だよな?)
・二回目(木~金曜日) 金曜になったばっかのとき、俺はコメ入れなおし(あのガンバレてやつ)。ミサはひきつづき不調で木曜の真夜中寝落ちするが、(その間に俺がコメ入れたので)数時間後、金曜の明け方に目が覚めて、コメを見て復調する
第四話(金曜日~土曜日)…お前(※)のパートでパーティー。俺のパートでお前との顔合わせ
(※ ミサは飲んで意識を失って俺に代わった。そこを第三者視点で目撃させたい。だからここはお前が最初から語ったほうがいいと思う)
第五話(土曜日~日曜日)…ミサのパートで昼間のこと。俺のパートでお前と話して更新
第六話(日曜日)…全部ミサのパート。ペンネームをキーワードとして打って、掲示板に入るまでのこと

ここまで書けば充分だろう。

人名は
俺→アキラ(晶) ミサキ→ミカ(実加) お前→ヒナ(日向子)
とする

できれば、ミサのパートはお前に書いてもらえないだろうか
俺はそのときの記憶がないから
書いてさえもらえれば俺が何とかまとめるから、日記書くつもりで
それもきついなら、ポイントを箇条書きでもOK


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 あたしは一瞬考えた。

 書きあがったものをみて……
 もしも『なし』だとミサキが言えば、イコールふたりの恋は終わり。
『あり』といったら、証拠のビデオを撮影し、見せることになる。
 そうしたら。
 JK、ふたりの恋は、終わる。

 ダメ、といっても始まらないだろう。現時点、ほかの方法はないのだし。


       

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