Neetel Inside 文芸新都
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Orange Juice
第二話

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第二話

その日から、僕は帰ったらギターをアンプにつないで、ひたすら曲作りに励む日々が始まった。とにかく、弾き、歌い、弾き、歌い、その繰り返しだ。でも、毎日何時間弾き続けたって歌い続けたって、まったくいいアイデアなんて浮かんでくるはずもなかった。
(‥‥、畜生。タバコでも買いに行くか。)
夜中の1時、コンビニまで自転車をこぐ。さっさとタバコを買って、店の前でふかしてぼーっとしている。
「おいっす」
聞き覚えのある声に振り返ると、上原瑞穂。昔付き合っていた子、いわゆる元カノってやつだ。
「久しぶりじゃーん」
「おう、久しぶり」
「元気してた?」
「まぁ、ぼちぼちだな。瑞穂は?」
「私は元気。」
瑞穂とは中学の頃からの付き合いだ。まぁ、高校で離れて、すぐに別れてからは長いことあっていなかったが。
「こんな時間に何してたんだ?」
「まぁ、なんとなく散歩をね。」
「こんな時間だ、危ないから気をつけろよ。」
「相変わらず心配性だね。じゃあ、うちまで乗っけてってよ。」


瑞穂を自転車の後ろに乗せて、懐かしい道を自転車でこいで行く。
「そういえば昔はよくこうして送ってくれたっけー!」
後ろから瑞穂が大声で話しかけている。
「そうだなー、なつかしい。」
そんな他愛もない会話を繰り返しながら、瑞穂を家まで送り届けた。
ひとつ分かったことは、瑞穂には今、彼氏がいるということ。

帰り際に、
「あ、そうだ、俺今度学園祭でライブやるんだ。もしよかったら見にきてよ!」
「わかった。覚えておくね。」
そんな会話。


帰り道、街頭の少ない田舎の道を自転車で飛ばす。
なんだか本当に世界で自分だけが一人ぼっちのような気分だった。

交互に踏みかえるペダルの音、空転するチェーンのさらさら言う音。
となりを流れる川の水音。夜の空白。


ふと、僕は空を見上げた。


この瞬間のことを僕は今でもありありと思い出すことができる。
満天の星空が僕に歌いかけていた。
きらきら光る星空と、沈みかけの三日月。
頭を駆け巡るギターのコードとメロディー。


家についてすぐ、ギターをアンプにつないだ。
(来た!この音だ!!)
僕は必死に、弾いて、歌って。
なんとか曲としてまとめ終えたときには、もう東の空が青白くなってきていた。

       

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