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ぼくが死んでから死にたくなるまで。2
Act3-2.先輩さんとミミちゃんがおつきあいしてほんとうのきもちがわかってぼくたちみんなが“やりなおし”を決意するまで

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Act3-2.先輩さんとミミちゃんがおつきあいしてほんとうのきもちがわかってぼくたちみんなが“やりなおし”を決意するまで


~~ただしがき~~

 それからぼくたちは、宿で話し合いを持った。

『ごめんなさい、わたし、やっぱりカトルせんぱいと一緒にいたいんです!
 だからもう少しでもこの町にのこらせてください、おねがいします!』
 ミミちゃんはぺこりと頭を下げてきた。
 答えたのはリアナだ。
「大丈夫よミミちゃん。
 わたしたちは『ソウルイーター』。
 受け入れた魂の心残りを晴らしてあげるのが使命なの。
 だから、この町にとどまることは問題ないわ。
 もともと、もう少しとどまるつもりだったし、クレフのアルバイトもまだ続いてるから、お金のことも当面は大丈夫。
 心配しないで、ミミちゃんのしたいようにしていいのよ」
『あ、ありがとうございます!』
 ミミちゃんはぱっと顔を輝かせて、頭を下げた。
『ただ、このことは近いうちに知らせておく必要があるニャ』
 対してミューが、長いしっぽをぱたぱたとさせながら言った。
『おまえがすでに死んでいて、ソウルイーターの身体を使って現世にいる存在であり、その目的は恋をすること。その心は5歳の少女であること……。
 もしもおまえがこの先、その恋に完全に満足したなら、おまえはそこで天に召されるのだニャ。そのときになってカトルを悲しませたくはないニャ?
 やつはその程度でくじけるやつじゃないにゃん。それは、今まであいつをみてきた我輩が断言してやるニャ』
『う…うん。
 わかった。
 せんぱいにお話してきます!』
 ミミちゃんは決意の表情で立ち上がった。
 そのとき、ドアが叩かれた。


『せんぱい……お話って……』
 やってきたのは、カトルさんだった。
 落ち着いた感じの私服で、小さなチーズケーキをおみやげにもってきてくれた。
「うん。
 マスターがさ、もしきみたちがこの町に残るなら、もう少し雇ってくれるって。
 きみたちはお客さんにも人気だし、僕たちもきみたちが好きだしね。
 ……あ、もちろん、僕はきみがいちばん、……」
『せんぱい………』
 小さいテーブルに向かい合った二人は、ほっぺたを赤くして、同時にお茶を飲んだ。
「え、えっと、このお茶おいしいねっ」
『え、よかった! きょうはがんばって、わたしが入れたんです!』
「そうなんだ、すごいね。とってもおいしいよ!」
『……よかったぁ……』
 カトルさんはにこにことミミちゃんを見つめ、そっと手を伸ばした。
 優しく頭を撫でる。
 ミミちゃんは嬉しそうに撫でられている。

 ミミちゃんは、身体はリアナだ。
 だから、この光景は一見すると、リアナが頭を撫でられているように見える。
 いや、表情もしぐさも違うからリアナじゃない、とは思うのだ。
 思うんだけれど、でも………。
「クレフ」
 すると、隣から小さな声が聞こえた。
 見るとロビンが、なんともいえない表情になっていた。
「馬鹿なことだとは思うけど俺、乱入したいかも……」
『ちょ、やめなさいよロビン。
 いまあそこにいるのはリアナじゃないのよ。
 気持ちはわかるけど……』
 ぼくの中からアリスが小声で言う。
「でもさ、……身体はリアナなんだし……
 やっぱり……」
『うむ……。
 おまえら意外と女々しいニャ。
 リアナは覚悟を決めているというのに』
「えええええええええっ!!!!!」

 その瞬間、ロビンが叫んだ。
 もちろんその声は、物陰程度では隠しきれるわけもなく……

「あっ」
『あ』

 ぼくたちは二人の前に出て行って、なし崩し的に事情を説明するハメになったのであった。

     

~~らいふ・ぷらんにんぐ~~

「そう、ですか……
 正直驚きました」
 すべてを聞いたとき、カトルさんは大きくため息をついた。
「彼女がすでに死していて、お仲間のお体を借りていること、そして実は5歳であったということ……
 今考えれば納得です。
 でも、僕の気持ちは変わりません」
 カトルさんはきっぱりと言いきった。
『せんぱい……!!』
 ミミちゃんが目をうるませる。
 その様子はやっぱりリアナに見える、リアナに見えて仕方ない。
 だって身体はリアナなんだから。
 でも今はそんな場合じゃない。
 ぼくは自分のつま先を見下ろして我慢することにした。
 となりではロビンもポケットに手を入れている。
 ミューはそんなぼくたちをじろっとにらみまわし、言葉を継いだ。
『そういうことなら、いいのだニャ。
 ミミと付き合ってみるといいニャ』
「ありがとうございます!!」
 ミューがまるでご託宣のように告げると、カトルさんは丁寧に頭を下げた。
『そのかわり、無責任なことをしたら容赦はないニャ。
 それは心にきざんでおけニャ』


 それから、二人のお付き合いが始まった。

 ミミちゃんは(ロビンもだけど)アルバイトに復帰。
 そして、業後や休みの日にはデートを重ねた。
 ミューをお目付け役に、ふたりはカフェで語り合ったり、公園にピクニックに行ったり、ちょっとしたものをショッピングしに行ったりした(らしい)。

 ふたりはいろいろなことを話したという。
 シゴトのこと、好きなもののこと、家族のこと。
 ――そして、未来のこと。

『もしもおうちをつくるなら、日のよく当たる丘のうえに、しろくて小さいおうちをたてるの。
 やねは赤くて、ドアはチョコレート色。
 庭にはきれいなお花をうえて、ティーセットもだして、まいにちいっしょにお茶するの!
 ケーキをやいて、アップルパイも作って、あとスコーンもいっぱいで、ミューちゃんみたいなねこもいて、………』
 お茶とお菓子を前にミミちゃんが身振り手振りを交えて話すのを、カトル先輩が優しく聞いてあげているのをぼくたちも見た。
 先輩はそしてときどき、優しく頭を撫でてあげていた。
 それは“ライバル”であるぼくたちでさえ、心がなごむ光景だった。

 しかしミューだけは、厳しい表情で黙り込んでいた。


 そんなある日。
 それは起きた。

 ぼくたちが一緒に町を歩いていると、ぱっと明るく輝くショーウィンドーが目に入った。
『すてき!! 新作のウェディングドレスだー!』
 ミミちゃんが歓声を上げた。
『カトルせんぱい、わたしこれほしい!』
 カトルさんはよしよしと頭を撫でて言う。
「ふふ、ミミちゃんは可愛いな」
『せんぱいー! わたしは、せんぱいと、……

 せんぱい、と………

 けっこんしたい、のかしら?』

 そういってミミちゃんは首をかしげた。
 カトルさんはというと、頭を撫でていた手をはなし、まじまじと自分の手を見ていた。

     

~その気持ちの正体は~

 その翌日、ぼくたちはカトルさんに呼び出された。
 いつかのカフェの隅っこの席で、悲しい話し合いは始まった。

「……これを見てください」
 カトルさんが取り出したのは、見覚えのあるふたりが笑う写真。
 7、8歳くらいの少年と、彼の腕に抱かれている幼い女の子。
 少年はカトルさんと同じ茶色の髪、少女はふわふわの金髪もリアナに似ている。
「これは、むかしの僕と、妹の写真です。
 妹は、4歳の春に亡くなりました。
 妹を大好きだった僕は、あまりのかなしみに泣いて泣いて泣いて……
 ついには妹の存在を忘れていたんです」
 いつもにこにこしているカトルさんの意外な過去にぼくたちは、ただだまって聞き入るしかできなかった。
「あのあとうちで、偶然この写真を見つけて、気づいたんです……
 ぼくは彼女に、妹を重ねていた……
 この想いは、ひとりの異性としての彼女へのものじゃなかった、と……」
 ぼくはがくぜんとした。
 みんなも驚いた様子だ――意識を眠らせているミミちゃんと、ミュー以外は。
 ミューはしっぽをぱたぱたとしながら言った。
『ふむ。やっと気づいたかにゃん。
 おまえがミミにむける目は、あくまで兄貴のそれであって自分のオンナへのそれじゃなかったにゃん。
 最初から最後までニャ』
「!」
 カトルさんは目を見開いた。
「そんな、……
 それならそうとどうして言ってくれなかったんですか?!
 そのせいで僕は……僕はミミちゃんを傷つけてしまった……」
 そうしてがっくりとティーテーブルに両手をついた。
『お前はそれを自覚していなかった。
 その時点でそれを言っても、お前はムキになって否定しただろうからニャ。
 そしてそのまま、暴走してしまうことも考えられた。
 ……それに、勘違いをしていたのはお前だけではなかったのだにゃん』
「……… え」
 そのとき、かすれた声が響いた。
『………ごめんなさい、せんぱい。
 わたしも、せんぱいにお兄ちゃんを重ねてました』

 ミミちゃんは、目にいっぱいの涙を浮かべてこう言った。
『わたし、お兄ちゃんがいたんです。
 せんぱい位の年頃の。
 そのお兄ちゃんは、わたしが3歳のころに亡くなったんです』
「ミミちゃん……!」
 カトルさんは絶句した。
『わたし、……わたし、せんぱいに失礼なこと、してました。
 おとなの恋がしたい、なんていってそばに行って、……
 なのに、ただのお兄ちゃん代わりとしか、見ていなかった………』

 カフェの片隅の席からは、一切の言葉が消えた。
 そしてぼくたちの耳には、店内に流れる音楽が、やけに空々しく響いた……

 そのたまらない沈黙を破ったのは、こんな言葉だった。

『それでも、わたし、せんぱいといてすっごくすごくしあわせでした。
 だからわたし、そろそろ天国に行きます。
 ……明日の夜、流星群が見られるんですよね?
 それ、見ながら、天国に行こうと思います』
「ミミちゃん……!」
『わたし、これ以上カトルせんぱいやみんなに、こんなふうに甘えられません……
 ううん、わたしはもう、じゅうぶんしあわせです。
 このからだはリアナさんにおかえしします。
 そしてせんぱいの時間も、せんぱいにおかえしします。
 どうか、ほんとうにすてきなオトナのおんなのひとと、しあわせになってください』

 カトルさんは黙ってミミちゃんを抱きしめた。
 ミミちゃんは、黙ってカトルさんに身を預けた。

     

~~星に願いを~~

 流星群がふる、その夜。
 ぼくたちはふたグループにわかれ、別々に運河のほとりの河原へいった。

 一方は、ロビンとミューとカトルさん。
 もう一方は、残りのぼくたち――ぼくとリアナ、ぼくたちのなかにいるアリスとミミちゃん。

 ミミちゃんとカトルさんは、決めたのだ。
 お互いの想いは恋愛感情じゃなかった。
 だから、あれですっぱり、お別れしよう、と。
 そしてそうなった以上、互いに変に未練が残るような真似はやめよう。
 流星群は、一緒の河原でだけど別々に見て、互いをきれいな思い出にかえよう、と。

 ――だからぼくたちはいま、ここにいる。
 いつになくにぎわいを見せる河原に、夕闇に紛れて、互いを心でだけ思いあいながら。


「……ミミちゃん、本当にいいの?」
 リアナがミミちゃんに尋ねた。
「カトルさんには、確かに失礼な事をしてしまったかも知れない。
 けれど今回のことは、こういってはなんだけどお互い様じゃないかしら?
 まだ、ほかのひとを探して恋をしたっていいんだし……」
『………』
 ミミちゃんはさびしげに微笑んだ。
『ありがと、リアナさん。
 でも、もういいの。
 せんぱいと一緒にいて、すごくしあわせだったし……
 それに。

 わかっちゃったの。
 あたしは、どんなにがんばっても、ただの5さいの女の子なの。

 ……だから、オトナの恋なんて、したくても、できないの』
「そんな………。」
 そういわれるとぼくには、もう何もいえなかった。
『あたし、天国にいく。
 そうして、もういちど生まれかわって、ちゃんとオトナになって、それからオトナの恋をするの。
 そうしてしあわせになるわ。せんぱいや、クレフさんや、ロビンさんみたいな人と。
 ……リアナさんみたく』
「ミミちゃん………」
 するとぼくの中からアリスが口を開いた。
『ねえ、ミミちゃん。恋人としてじゃなくても、そばにいる方法ならまだ……』

「あ、来たっ!」

 突然、誰かが声を上げた。
 地に落ちる影が、ほんの少し濃くなったような気がした。
 見上げると、ひとつ、またひとつ。
 西の空から尾を引いて、銀色の星たちが流れてくる。
「うわあ!!」
「流星群だ!!」
 河原は一気に沸きかえった。
 星明りのなか、天を指差し流れ星を数えるひと、カメラを向けるひと、友達と手を取り合ってはしゃぐひと、なぜかひとり泣いているひと………
 そして、願い事を唱えるひとたちがいた。
 何人も、何人も。

『そっか、いちおう流れ星だから……』アリスがぽんと手を打つ。
「まあ、素敵ね! わたしたちもやってみましょう!」リアナがぱん、と手を打つ。
「そ、そうだね」ぼくは相槌を打ち、
 ミミちゃんはぽつり、つぶやいた。
『……いたい』
「?」
『せんぱいに会いたい。
 カトルせんぱいにあいたいよー!!』

『まったく。そういうことはもっと早く言うのだニャ!』
 すると、後ろの方から声が聞こえてきた。
 ふりかえるとそこにいたのは、首にリボンを結んだミュー、ミューを抱えて軽く息を切らしたロビン、そして、息を弾ませ涙を浮かべたカトル先輩。
『せんぱい……ロビンさん、ミューちゃん……!』
 ミミちゃんは大きく目を見開き、しかし涙を浮かべて目をそらした。
『ご、ごめんなさい、いまのは、……
 あたしには、せんぱいにあう資格なんかないんです。
 だってもうあたしは、せんぱいをふっちゃいました、から……』
「きょうだいでもいいじゃないか!」
 とそこへ、ロビンの声が響いた。
「ミミちゃんは“お兄さん”としてカトルさんがすき。
 カトルさんは“妹”としてミミちゃんがすき。
 それは、ぜんぜん、いいと思う。
 恋人どうし、という関係と比べて、劣ってなんかいない。
 だから、それでいいと思う!
 最後なら、……呼んであげればいいじゃないか。
『お兄ちゃん』て!」
『あ、………… ああ…………』
 ミミちゃんは言葉を失った。
 そしてその目から、涙があふれた。
 カトルさんも言葉を失った。
 その目からも涙があふれた。
 ミミちゃんが歩み寄る。
『……ん……』
 カトルさんも歩み寄る。
『……ちゃ、ん……』
 ミミちゃんが駆け出した。


『カトルおにいちゃ――ん!


 ……だいすきだよ。これからもずっとずっとずっと!!』
 カトルさんが、ミミちゃんを受け止める。
 そして、涙で告げる。
「うん。僕も、ずっとミミちゃんが大好きだ。
 妹になってくれて、ありがとう……」
『おにいちゃん………』

 ふたりはそのまま、しっかりと抱き合っていた。
 流星群の光が降り注ぐなかで、ただふたり、じっと。

 やがて流星群は天のかなたに消えた。
 するとその後を追いかけるように、ミミちゃんの魂はリアナの身体を抜け出した。

『みなさん、ほんとにありがとうございました。
 おにいちゃん、あたし、もう一度ちゃんとおにいちゃんのところに生まれてくるね。
 きっときっと、やくそくだよ』
 星色に輝くミミちゃんは、ちょっとだけ大人っぽくなった言葉と微笑みをのこして、天の高みへ昇っていった。

     

~~ちょっと、立ち止まるとき~~

「あのさ、リアナ………」

 そのあと。
 カトルさんとは河原で別れ、ぼくたち一行は、宿の部屋にもどってきた。

 魂をうけいれることは、結構疲れること、らしい。
 考えてみればそうだ、ふたつの魂がひとつの身体を使うのだから、身体は二倍忙しいし、心もその分忙しくなる。
 そんなわけで、いつもはリアナが入れるお茶を、アリスが入れてテーブルに置いた。

 いつもにこにこしているリアナは、いつになく疲れた様子。
 そのリアナを気遣うようにして、ミューがひざの上にのり、ロビンが声をかける。
「……どうしたの、ロビン?」
 リアナはいつもより一拍遅れて、すこしゆっくり返事をする。
「疲れてるところをゴメン。
 だけど、聞いて欲しいんだ。
 ――単刀直入に言うけど、一度かえらないか?
 というか、少なくともリアナには帰ってほしいんだ」
「…… どういうこと?」
「ああ。
 俺たち、ミューから聞いたんだ。
『覚悟を決めてる』って……
 それがもし本当なら、俺はリアナに、もうこの仕事をさせたくない。

 俺たちはソウルイーターだ。その使命の前にはちっぽけな、馬鹿なことかもしれないけど、リアナには他の男のものになんかなってほしくない。

 いや、その、クレフは別だけど……
 でも、他のやつなんかは絶対嫌だ。
 たとえ、俺やクレフのカラダを使ったとしても、それでも絶対、いやなんだ」
「ロビン…………」
 ロビンは思いつめた表情で、妻である女性に気持ちをぶつけた。
 つづいてぼくにも問いかけてくる。
「なあクレフ、クレフはどう思う?
 もしも覚悟のうえで使命でも。
 リアナがほかの男のものになるなんて、お前には我慢できるか?」
 そうきかれると、ぼくの答えなんてひとつしかない。
「……ううん。
 ぼくも、それは、いやだ」
「……クレフ……」
 リアナがぼくを見つめた。
 ぼくも、リアナを見つめ返す。
 このキモチが、視線になって心に響いて欲しい。そう思ってじっと。

 そこへロビンの声が響いた。
「つまり、そういうことなんだ。
 リアナ、一度禁足地に帰ろう。
 そして………」
「家を守ってくれ、というの?
 使命も投げ出し、あなたたちとも遠く離れて……?
 嫌ですわ。
 それはわたしが、嫌よ」
「リアナ!!」
「……でもね」
 リアナは、ちょっとうつむいて笑った。
「わたしも、ほんとは迷ってたの。
 というか……
 結婚の話になったときはね、正直ちょっとこまった。
 わたしもソウルイーターだわ。だから、受け入れた魂のためにはなんでもするつもりでいた。
 けれど……。
 それでも、ロビンやクレフ以外の人のためにウェディングドレスを着るのは、やっぱり、うん、嫌だった」
「リアナ………」
 リアナは、顔を上げ、泣きそうな顔で笑った。
「わたし、覚悟が足りないのかしら。
 わがままなのかしら?
 そんなことを考えたら、とても疲れてしまったの。
 ――帰りましょう、一度。
 わたしも少し休んで、ちゃんと気持ちを整理したいの」
 そして、ぼくたちに手を差し出した。
「………ああ。
 帰ろう、一緒に」
 ロビンがその手をしっかり握る。
「よかった、リアナ」
 もちろんぼくもしっかり握る。
『……あたしもそれがいいと思うわ』
『よし、ならキマリだにゃ。
 アルバイトが終わったら、禁足地へかえるのだにゃ』
 アリスがうなずき、ミューが伸びをする。


 ――その数日後、ぼくたちは北へ向かう馬車に乗った。
 ぼくたちのふるさとに、帰るために。
 そしてもう一度、気持ちを整理してやりなおす、ために。


~~END~~

       

表紙

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Neetsha