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茨の下
二章 第二夜(八怪談編)

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 二章 The seeds of strife so――

 第二夜 quagmire 夢の舌


 声だった。
 間違いなく、あの声は紛れも無く左右一《そういち》の声だった。今も夢の続きに居るかのようなこの耳に、ずっと木霊している。
 そして今、もう一つ声が聞こえる。友の残滓を掻き消すように響くそれは、少し大人びた女性の声だった。
「おい、君。大丈夫か?」
 夢だったのだろう。しかしただの夢で済ませられない、不自然で不可思議な夢だった。
 自身の瞼が震えているのが解る。怖い。
 僕はそれでも、震える瞼の微弱な振幅を拾うようにして、ゆっくりと眼を開いた。
「どうやら気が付いたようだな」
 最後の言葉……あれはなんだったんだ?
 そこで僕の魂は砕かれた。彼の声が、そう言って途切れた。
 夢の中でさえ眼を瞑っていた僕には、その時の彼の表情は読み取れる筈も無い。だが、耳に残る残響にも彼の感情を窺い知る縁《ヨスガ》は無いのだった。
「聞こえているか? おい!」
 改めて、こちらに声を掛けていた女性に眼を向けた。大きな闇と、丸い光を背負った女性。
 夜?
 そうかここは学校の屋上だ。僕はあのまま気絶してしまったのだろう。
 しかし先程の夢に没頭するがあまり、現状を把握し損ねるとは。これではどちらが現実なのか解ったものではないな。
「もう……大丈夫です」
「そうか。しかしこんな所に人が倒れているとはな……起きられるか?」
 礼を言い彼女の差し出す手を握って、重い頭で立ち上がった。
 気絶していた所を、この女の人が起こしてくれたらしい。
 感謝すると共に、僕は観念した。
「……すいません。学校に忍び込んでしまいました。この度の過ちへは、どんなお叱りをも覚悟してます」
 今は居直りや逃走よりも、従順に罪を受け入れるのが最良の方策と考えた。
 僕の足は精一杯焦燥を封殺し、心はそれを危うく保っている。
 僕は急いでいる。しかし僕を急かしている物を、同時に庇うことも忘れてはならないのだ。
「ん? ああ、なるほど」
「……へ?」
「……君は失礼な人間だ。私はそんなに年を食って見えるのか?」
 言葉を受け失礼を承知で女性の顔を覗き込めば、確かに用務員さんや警備員にしては若い。同年代くらいに見える。
「何か言ったらどうだ?」
 月の下で尚、白いその肌。月の光量を全て反射しているかのよう。
 月の下で尚、黒いその髪。お誂え向きにも、光輪が乗っていた。
 こちらを見据えるその双眸は、知性できらきらと輝いている。
「凄く……綺麗です」
 素直にそう思った。
 美人。いい女。そんな表現では少し違和感がある。
 ……佳人。結局意味は同じなのだが、端的に雰囲気を表現するならばこうだろうか?
 玲《あきら》とは違うタイプだ。彼女は踊りの似合うタイプだが、この女性は楽器の似合いそうなタイプだと思った。
 彼女の匂い立つような魅力は心の温度を上げるが、それでも短絡的な情欲とは無縁のベクトルだった。いくら美しいからと言っても、花に股座を奮わせる者がいないように。
「よく君は、的外れな事を言うと指摘されないか?」
「的《まと》、ですか?
 あ! いや。べ、別に貴方を狙ってるとかそういう事とかじゃなく! その口をついて出たと言うか……」
「破滅的だな」
「あうあう」
「何か言えというのはな、警備員と間違えた事に対して謝るべきではないのかと、そういう意味だ」
 二言三言のやり取りではあるが、僅かにこの女性の性質が解ったような気がした。表情の変化が少ないが、かと言って感情の起伏まで乏しいわけじゃない。
 薄明の月下。
 そこで初対面の人物の機微を推し量る作業は、間抜けな僕にとって気狂い沙汰もいいところだ。
 気の遠くなるような作業を覚悟し、しかしそれを悟られぬようにして居住まいを正した。
 まずは真摯に謝ろう。
「女性に対し、非常に失礼なお見立て違いを致しまして、大変申し訳ありませんでした。どうかお許し頂けませんか?」
「まぁ、大して怒っている訳じゃないんだがな」
 面と向かって綺麗だと言われれば、多少は許す気にもなろうというものさ。そう言った女性は目線を逸らし、照れるような仕草で髪を撫でた。微かにその右頬が上に吊られている。
「しかし、君はさっきから何に気を揉んでいる?」
 鋭い。少なくとも僕よりもずっと。
 或いはこんな暗闇での会話に慣れているのかもしれない。
「実は……早く友達を追いたいんです」
 この女性の正体が学校側の人間ではないのならば、僕に共犯者がいることを隠す必要は無くなった。
 僕を焦らせ、同時に守らねばならない存在。
 怯えたままに走り去ってしまった、親友・左右一。
 彼の為に取るべき行動は今の情報を明かし、協力を得られないにしても邪魔をさせないように手を打つ。
 「友達? いや、それだけじゃない筈だ。君の目線はさっきから、地面を極端に避けている。
 何があった?」
 初対面の所作から、そこまで読み取れるものなのか?
 自身の身に起こった事態でありながらも信じ難い事だと前置きし、先程の出来事の中で話すべき言葉を続ける。
 もちろん腕で総毛立っている驚動は隠しながら。
「実は……空から死体が降ってきたんです。
 それを見て友人は走り去り、僕は気を失ってしまったんです」
 気が付けば右手をパンツの腿に擦りつけていた。愚かにも……無用心にもそれに触れた手を。
 そうだ。
 僕が気を失う前に目にした物は、四肢をズタズタに引き裂かれた人体だった。
 そして上空からの落下が齎す当然の帰結として、その形成は地面に遍《あまね》く広がったのだ。
 どうしてパーツの一部だけが先行して落ちてきたのかは知るべくもないが、やはり僕が掴み上げた物は紛れようもなく人体だった。
「そうか。死体を見たくが無い為に、視線が不安定だったのだな。安心しろ。君たちが見た死体は消えているようだ。
 しかしここに居るということは君と、その友人というのは資格持ちのようだな」
「資格、ですか?」
「それについては追々話そう。まずはその友人だ。
 居場所がわからないのに校内を走り回って、我々まで警備員に見つかるのではつまらない。まずは連絡を取ってみたまえ」
 僕は頷きざまポケットから携帯電話を取り出し、左右一へとコールをする。
 だが……この人は一体何者なんだろう? 学校側の人間で無いにしても、どう接すればいいかわからない。悪い事には、学校側の人間ではないという情報も本人の口から語られた自称でしかなく、確認のしようすら無いのだ。
 しかしそんなことより何より、空から死体が降ってくる。そんな荒唐無稽極まりない事象を簡単に飲み込み、且つ次の思考にまで進んで見せた。
 この女性は確実に、左右一が焦がれ、僕が恐れる場所に立っているのだろう。
「……電話に出んわ」
「つまらんころすぞメールはどうだ?」
「ちょっと待って欲しいっすwwwww……どこにい、る? だ、い至きゅ、う連らくが欲、しいっと」
 送信。次の選択は左右一からの返信を待つか、電話を重ねるかだ。
 僕は敢えて前者を選び、目の前の女性に疑問をぶつける事にした。
「さっき資格って言っていましたお? 何の資格ですか?」
「さっきも思ったのだが、とぼけている訳ではないのか? 私も資格持ちなのだし、隠す必要は無いのだぞ?」
「いえ、全然知らないんです」
 資格。
 そしてこの時間に此処に立つ意味。恐らく推察通りだろう。
「ひょっとして八怪談絡みですか?」
「またえらく昔の言葉が飛び出してきたものだな。まぁそうだな。正解ということにしておこうか」
 やはりそうか。この人も僕と左右一が推察した通り、八怪談の先に待つ危険な催しの関係者なのだ。
「でも……確かにあれは通常ならば存在し得ない話ではありますが、確かに僕と友人は八怪談に出会いました。八怪談が昔の言葉というのは、どういう事ですか?」
「言葉の通りだよ。もうあの話の内容は愚か、存在すらも知るものはいないと聞く。私だってそれが存在するらしいと伝え聞いただけで、本物を聞いたことはない。
 八怪談はさておき、誰にこの場所を教えられた?」
「友人と二人で探し出したんです」
「無茶苦茶だなw では八怪談は一体誰から聞いたんだ?」
「その友人ですお」
「じゃあその友人とやらは誰から?」
 言葉に詰まる。

 そう言えば彼は一体誰から聞いてきたんだろう。情報提供者に関しても、もっと詳しく教えておいてくれればよかったのに……。
 だが、情報を扱うに長ける者がその提供元から詳しい話も聞かずに信用するだろうか? 最初から不審だらけで世迷言にも等しい八怪談が、何を持って左右一の信用、もしくは興味を得るに至ったのか。
 ……常識的にもありえないだろう。
「……どうした?」
 ……そうか。
 ひょっとしたら奴は、誰かわからない人から教えられたのかも知れない。そんな存在に、一つだけ思い当たる節がある。一方的に与えられる言葉に経験がある。

『――汝を残る原初の一葉と認めよう 双葉、滅ぶことと見つけたるべし――』

 僕にこの言葉を授けた存在と、親友に八怪談を吹聴した人物についてを関連付けるのは穿ち過ぎだろうか?
「……聞いていなかったから、誰かは、知りません」
「そうか……厄介だな」
 振動。
 僕は何か言い続けようとした女性を留め、携帯を開きその発信源を確かめた。
 メール着信。送信元メールアドレスyamajun-roseguy@kusomisoweb.ne.jp。
 送信者――
「左右一!」
「返ってきたのか」
「えっと内容は……『明日話す』!? ちょwww これだけかよ!?」
「どうやら無事なようだな」
「おっおっww なんか安心したら力が抜けちゃったっすww」
「良かったじゃないか。どうする? 君の立ち位置を明確にしておく事が条件だが、私の知る限りの八怪談に関連する話をしてやろうか?」
 少し悩む。しかし――
「僕は友達と二人で八怪談に挑む決意をしたんですw 二人で辿りついてみせますw」
「そうか……その関係は羨ましいな」
「じゃあ失礼します! あ、そういえばお名前をお聞きしていませんでしたw」
 お礼の言葉を言おうとして、相手の名前を知らない事に気が付いた。我ながら、なんとも失礼な話だ。
「いまさらだなw 空城素直《あまぎすなお》、二年生だ」
「あまぎ、すなお。カコイイです! 僕は内藤出継《ないとういでつぐ》、一年ですw」
「いでつぐ? ふうん? 最近、変な名をつける親が増えているらしいしな」
「ちょww 平仮名にするとそんな違和感無いはずですよww」
「そんなものか……名前といい、変な奴だな。君は」
「人とは違うアテクシカコイイwww じゃあ、それではお暇致しますw 空城さんありがとうございましたw」
 僕は軽くなった気分と頭を空城さんに下げると、開かれっぱなしだった屋上の扉に向かった。
「内藤!」
「なんですか?」
「またな!」
 不意の言葉は彼女なりの激励なのだろう。僕はそれに手を振って答えると、いくつもの階段を降り、やがて家路に着いた。


     




 翌日昼休み。僕は相も変わらず左右一《そういち》、修慈《しゅうじ》、玲《あきら》の来訪を待っていた。
 空城《あまぎ》と名乗った女性を伴って送った、昨日深夜のメールを最後に左右一からの連絡はない。僕からも連絡を取ってはいなかった。
「wktkが止まらないおww」
 約束通りに昨夜の〝あれ〟からを話し合える。逃げ帰ってしまった左右一から、面白い話を聞けるとは期待していない。だが、僕から始めて提供、発信できる情報があると思うと、その事だけで僕の胸は躍っていた。
「はいはい一番乗り一番乗り」
「おいすーw そんなに嫌そうに言わないでくれw」
「俺の勝手だろ。つかなんだよ。いつもに増してテンション高ぇジャマイカ」
「それが昼休みクオリティ!」
「さすがピザ! 金曜日だってのになんとも無いぜw」
「人をゴックみたいにwww」
 金曜日の宿題は膨大だ。確かに今日の僕は、そんな物をうっちゃる位に浮かれているかも知れない。
 そんなことを考えていると、視界の横からコンビニの袋が割って入った。
「じゃあ、元ゴックって事にしといてあげるw」
「どう見ても今はガンダムタイプのMSですw 本当にありがとうございますw」
「ネーヨw」
「ねーかww」
「ネーナwww」
「ねーのかwwww」
「ネーッスwwwww」
「ねーのんかwwwwww」
「アリエネーワヨwwwwwww」
 僕ら三人は独楽のようにくるくると笑う。気分の高揚が一層高まるようでとても心地が良い。
「それにしても、なんでそんなに機嫌が良いのよ? トイレで拾い食いでもしたの?ww」
「ちょw トイレには紙か茶色い固形物しか落ちてないww」
「じゃあそれだ!」
「おまww じゃあスカトロジー入門編へご案内だww」
 僕は修慈を傍にあった机へと押し倒す。
 案外大きな音を立てたが、キニシナイ。
 修慈の頭を軽く浮かせ、滑り込ませた右手をうなじから掻くように後頭部へ回した。
 左手を顎へそっと添え、親指で彼の唇を右から左へとなぞる。あくまで優しく。しかし扇情的に。
「これが僕のファーストキスだ」
「……俺だって始めて、なんだぜ?」
「シュウちゃん」
「イデにゃん」
 教室のあちこちから悲鳴とも嬌声とも取れない女の子の声があがった。どうやらクラスメイトには、腐り気味の女子が相当数いるらしい。
 声を上げるのは腐女子だ! 声を上げないのはよく訓練された腐女子だ!
「らめぇぇぇ……皆が見てる……」
 修慈のサービス精神に火が着いたらしい。あちこちからの女子の声を、歓声と捉えたのだろうか。
 こうなると僕としても負けてはいられないだろう。
「すぐに僕で心を埋めてあげるから、気にしなくていい」
「もう……お前で一杯だよ」
「もっとさ」
 そう言い、唇を撫でていた手で修慈の両瞼を下ろす。
「次に眼を開けた時、僕に教えてくれ」
「……何をだ?」
「ファーストキスが何味だったのか」
「そんなの……」

 修慈はクスリと笑った。
 僕も瞼をゆっくりと閉じる。
 互いの意志は通じている。
 それ故に不安なんて微塵も無かった僕達は、そこから続く言葉を重ね合う。

「「そんなの――ウンコ味に決まってる」」

 そして僕達は続く行為として、唇を重ね合う。
 サラサラとしていて少し堅い。洗い立ての洗濯物のような匂いがして、平和な日曜日が脳裏に過った。
 重ねていた唇に少し力を入れ、それからゆっくりと離し、目を開ける。
「……」
 そこに在ったのは白い壁面。僕を囲むように張られたオフホワイトの布。恐らくカーテンだろう。
「……」
 そして――
「布団?」
 布団ですね。
「え!? 布団!?」
 声を上げた瞬間に、唇に痛痒が走る。
 あれ? 僕はさっきまで教室にいたはずだ。こんな物は当然存在しないはずなのに。そう思いながら唇に指を這わせると、セロテープのような感触と布状の手触りがあった。
「ここは……どこだ?」
「おう。起きたみたいじゃねえか」
「お?」
 小気味良い音を立ててカーテンが引かれ、蛍光灯の光と声の主が現れた。
「お互い酷い眼に遭ったなw」
「ちょw 修慈w ヒデェ顔だwww」
 顔面の右半分を真紫に染め、倍ほどに膨らませた修慈が笑っていた。
「ソイツもお互い様だw 鏡を見てみやがれw ハマダは愚か、チョーさんだって裸足で逃げ出す唇お化けだぜw 今の出継はよww」
「流石に言い過ぎだw」
「ホレ。言い過ぎかどうか、自分の目で見てみんしゃい」
 修慈が差し出す鏡にはおかしな物が映っていた。
 うん。なんて言うか……
「ぶるあぁぁぁあってレベルじゃねーぞ!!」
「なんと言う唇。見ただけで完全体に進化した。唇の容量は間違いなく生体エキス100万人分」
「アナゴ君みたいな風貌から、思わず強力若本のモノマネへと繋いでしまった……一体何がどうなってるんだか教えてくれ!?」
「説明乙。覚えてないのか?」
 なんだっけな? 昼休みに入って……僕の機嫌が良いって話しになって――
「えっと……そうだ。ウンコ味のところで完全に途切れてしまってる」
「そうか……結局、俺達はチキンレースに負けちまったのさ……自分達でルールを敷いた癖にさ……」
「……」
「……」
「……別にカッコ良くないです」
「俺の前でだけは、素直になって良いんだぜ? 出継」
「いや、ガチで」
「ガチですか……」
 北方先生……ハードボイルドがしたいですと修慈は呟き、僕へ恨めしげな視線を寄越した。
「まぁ何があったかってのだけは教えといてやるよ」
「カモン」
「俺達恒例の悪ふざけがちょいと、度を超えちまったんだよ。いつもはもっと早く強制終了がかかるだろ?」
「そうだな。いつもなら左右一が、倫理委員会も真っ青になるような事を言って、僕達の三文芝居をブッタ切るはずだ」
「今日はどういう訳かソーちゃんが現れなかったんだよ。地球の裏側からだって俺達のホモ芝居に駆けつけるような奴が、だぜ?」
「何かあったのかも知れないな……」
「今日は学校に来てないんだとさ」
「え? マジで?」
 左右一が学校に来ていない。いや、来れなかった理由がある?
 昨日はしっかりとメールが返って来た筈だ。何か特別な理由があるのだろうか? ……僕らに連絡を寄越さず、学校を休むような理由が。

 あの、夢。

「いや……あれ? 左右一がいないからって、なんで僕はこんな所に寝てるんだ?」
「ツッコミの代打が、それはそれは怖いお方でな。
 お前に真空飛び膝蹴りをデュクシ! 俺には肘打ちからの回転裏拳をデュクシデュクシ!
 電光石化の早業で俺達をノしちまったんだとさ……。デュクシって虚構の世界にだけある効果音だと思ってたんだが、現実に聞くとは思わなかったぜ」
「トンでもねぇ野郎が出没してる!」
「その後昼休み終了まで、半狂乱になりながらお前の唇をハンカチで擦り続けたんだとよ。三秒ルール、三秒ルールって繰り返しながら」
「ちょっとした怪談なんですけど……つかなんで伝聞形なの?」
「俺は裏拳で気絶したからな。大体のところは見物人に聞いたんだ。kwskは知らん」
「一体何処の色黒ガチムチ六尺兄貴だ! 当事者同士の冗談で、第三者にそこまでされる覚えはねえ!」
「……玲だ」
「EEEEEEEE!」
 ……玲って強いんだね。
「そそそそ、そそそ、それれで玲さんは今ままいい、いず、何処《いずこ》に在りや?」
「震えすぎだろw 安心しろ、もう家に帰ったw ……と言うより内藤出継。君はあれから三日三晩昏睡状態だったのだよ」
 修慈が僕の正面を退く。そしてベットの回りをぐるりと囲っているカーテンを全て引いた。
 窓の外はもう、薄暮と言うに相応しい色。
 夕焼けの過ぎ去った後の、仄暗い青が支配する世界だった。
「うっそおおおおおおおおん!?」
「ウソウソww流石に三日三晩はウソだw」
 ほっと胸を撫で下ろしたが、やっぱり外は暗いのだ!
「充分長時間じゃね?」
「まぁなw 斯様《かよう》な時間を世界は物語っているww 俺達も帰ろうぜ。授業はもう全部終わっちまってる」
「これなんて浦島太郎?」
「おら、さっさと行くぞ」
 僕は修慈に促されるまま人気も漫《そぞ》ろな教室で荷物を回収し、同じように閑散とした廊下を抜け、人の残滓のみを残す昇降口を経て、沈黙が積もる学校の敷地から抜け出した。
「しかし左右一はどうしたんだろうなぁ」
「うーむ。何の連絡も無いなんておかしい」
「出継が寝てる間に左右一クラスの奴らに聞いてみたんだが、イマイチ理由を把握していないらしかったしな」
「……謎だ」
「明日も連絡無しに学校を休みやがったら、その時に深く考えるか」
「はいはいツンデレツンデレw」
「……チッ」
「というか明日は土曜。学校ないぞ」
「そういやそうだったな。アノヤロは三連休を満喫するつもりなのか?」
 僕は知っている。修慈のこの、一見距離を取るように思える言動が、彼の最上級の思いやりなのだと言う事を。
 僕は思いだす。家庭の問題で心が揺れ、案じる者達の声を閉ざし続けた、出会ったばかりの彼の中学時代を。
 彼は知っている。他人の心配や助力が、押し付けや自己満足にしかならない場合があると言うことを。悩みに直接触れるのではなく、思う存分悩ませてあげられる環境を作ることが如何に人を本質的に救うのかと言うことを。
 彼は思い出しているはず。自身の中ですら形を為さない問いが、お節介な他人に無理矢理口を開かされる事で、欺瞞と歪曲に塗り固められてしまう可能性があることを。
「……」
 そして今、僕達は理解している。過不足無い支えが、どれだけ人を安心させるのかを。
「僕は……ちょっと左右一の家に寄ってみるよ」
 でも思うのだ。
 僕が、僕達が此処にいる。その意志だけは伝えなきゃいけない。
 困った時には何時でも支えてあげられるんだと伝えて、何時でも頼りに来れるようにしてやらなきゃいけない。
 僕は押し付けがましいと思いながらも、そう思うのだ。
「……そうだな。任せていいか? 俺には荷が重いし、キャラじゃないw」
「そう思っているのはきっと、シュウちゃんだけだw まあ、今回は僕に任せろw それにまだ、大事に至っていると決まってる訳じゃないしw」
「……そうだよな! なんかあったら俺にも教えてくれよ!」
「把握」
「よし! じゃあ宿題の進捗状況と左右一の様子に合わせて、明日か明後日にでもどっか遊びに行こうぜ!」
「おkおkw また連絡するぜw」
 僕は手頃な道を曲がり、左右一の家のある方向へとつま先を向ける。
「じゃなw」
 と手を振る修慈へ向けて
「バイブーw」
 と卑猥極まりない言葉を返し、身を翻す。
 今はとにかく、すぐに彼の顔が見たかった。

     




 自転車で走っているとやがて、見覚えのある町並みの、訪れるべき家屋に至った。
 門前に立ち、鞄を漁る。雑多に入った小物の中から、七センチ四方の鏡を取りだした。
 鏡像を頼りに未だピリピリとした痛痒の残る唇から、ぴっちりと貼られたガーゼとサージカルテープを引き剥がす。その痛みといったらもう、引き剥がす指が震え、本能がそれを拒否していた位だ。
 鏡に映る唇の状態は、人の家を訪問するのにギリギリの傷だった。
「なんてことしてくれたんだあの糞女………………様」
 くそう。本能レベルで恐怖が刷り込まれちまったぜ!!
「ウン……コホン」
 咳払い一つ。玄関の先にあるチャイムをグリと、押し込んだ。
 いつもはいきなり門を開け、家の中に声をかけている。こうしてチャイムなんかを使っているとまるで、知らない人の家を訪れているみたいだ。
 程なくして人の気配と共に、玄関が開かれた。現れたのはエプロンを身に付けた左右一のお母さんだった。
「あら出継くんじゃない。寄ってくれたの?」
「はい。左右一君はご在宅だと思うのですが……」
 途端におばさんの表情が翳った。
「左右一は朝から体調を崩しちゃっててねぇ。今日はちょっと学校を休んで大事を取ったんだけれど……」
「休む時はいつも僕らに連絡が回るところが、今日は無かったので……それでちょっと心配してしまったんです。風邪ですか?」
「うん……それがね――」
 玄関で立ち話をしていた僕達の元に声がかかる。距離感からして家の奥からだ。
 気持ち張り気味の声は、間違い無く左右一の声だった。
「かあさん、出継でしょ? 上がって貰ってよ」
「でも……」
「良いんだ。今は一人で居たくない」
 一人。
 そういえば彼の弟、右左九《ゆうさく》は今家から話されているんだと聞いていた。
 やや迷う素振りを見せたが、結局。
「じゃあ内藤君、上がっていって頂戴ね」
 左右一の言に従うことにしたようだ。
「失礼します。押しかけたみたいで、すいません」
 軽く頭を下げて家に上がる僕の背に、気弱な声がかけられた。「びっくりしないであげてね」と。
 左右一のおばさんの言葉に不安を掻き立てられつつ、階段を上がる。
 二階の一番奥にある部屋が、左右一の部屋だ。
「入るよ?」
 ベットの上に左右一はいた。ただ――
「ど、どうしたんだ!?」
 その両眼は、真っ白な包帯で覆われていた。
「ちょっと、ね。今朝から見えなくなっちゃったんだ」
 おばさんの言葉が指したのは、これだったのか。
「病院には行ったのか?」
「午前中に一応ね。ストレスなど、心因性のものじゃないかってさ。早い話が、原因不明って言われたに等しいね」
「原因、不明」
「うん。僕自身にも全く身に覚えが無いんだ。外傷も全くないし、脳神経系にも異変は見られないんだってさ。 目覚めた時にはこうなっていたからね。……本当に、びっくりだよ」
 僕は左右一のお母さんに言われていた言葉を腹に据え、過剰な驚きを暗殺しようと務めた。
 しかし……僕の予想を遥かに越える形で、左右一の不調は顕現されていた。
 先程交わした修慈との会話に過《よぎ》っていた悪寒。それは漠然としていて、言わば冗談にも類するものだった筈だ。しかしあの会話があった所為で今の現状があるのかも知れないと、取り留めの無い事を考えてしまってすらいた。
「でも……これじゃあ僕たちに連絡が来なかったのも無理ないな」
「うん。連絡しておきたかったんだけどね。心配かけちゃったかな?」
 心配性の僕にとって、心配の大多数は杞憂に終わる。それを察しての「心配させたか?」だったのだろう。しかし今回の言葉は、僕の心配のはるか上をいっている。
 心配云々と言うレベルではない。眼が見えないのだ。だがそれを言葉にするのはマズイ。かと言って心配していないなんて、冗談でだって言うべき言葉ではない。
「んー。で、でもさ、原因不明と言う事は寝ている間に何かあったのかも知れない。思い当たるようなことはないのか?」
 反射的に言葉を濁してしまった。明るい言葉を吐けない自分にも、平安な雰囲気を作れない自分にも嫌気が差した。
「うーん? 寝ている間って言われても、思い当たりようがないよ」
「そりゃあそうだよな……そう言えば昨日はあれから大丈夫だったのか?」
「昨日?」
「左右一が走って逃げちゃった後。恥ずかしいことにあの後僕も気絶しちゃったんだけど、次のステップにいるらしい人と知り合えた。今度なんとかして会わせるよ」
 左右一が水を打ったように押し黙る。
 何か言ってはいけない事を言ってしまったのではないかと一瞬狼狽えたが、そうではないようだ。彼の態度は冷静そのものだし、表情にも変化はない。
「なんの事を言ってる? 出継の言ってることがイマイチ解らないんだけど……」
「とぼけなくても大丈夫。おばさんも近くに居ない」
「いや、そうじゃなくて……」
「ん?」
「本当に……」
「憶えて、ないのか?」
 左右一の頷きが僕の体温を下げた。
「これじゃあまるで……」

 八怪談。そしてその次のステップに待ち受ける、ゲームの敗者のような待遇じゃないか。
 『消え行かん感覚』という一節を濃く、強く想起した。
 始めて八怪談に出会った時、ただのアジテイションを八怪談の内容に触れるものだと思い込んだ。ロクに疑いもせずに。
 ならば今は、どうなのだ?
「じゃあ昨晩、左右一は何をしていたんだ?」
「昨夜はジョギングに行ったんだったかな? 確かそれで、疲れてたからそのまま寝てしまったんだよ」
 そんな筈は無い。そう声を荒げそうになる自分を抑え、次なる質問を投げかける。
「昨日の放課後の事は!?」
「放課後? 昨日は確か木曜で、いつものビリヤード屋に行こうとしたんだよね。けど予定のある君が抜けて、それでお流れになったんだよ」
「聞きたいのはその、後だ」
 左右一は考え込むようにして俯いた。
「……」
「どうだ?」
「真っ直ぐ家に帰ったよ。間違いない」
「そう……か」
 落胆。
 いや、感情は怒りに近い。
 記憶が改竄されている、そう捉えるのが妥当なように思う。
 恐らく記憶喪失や記憶の入れ替えでは無い。昨日が木曜だった事、僕ら四人の習慣的に催されるビリヤード。そしてそれを、僕の口から断ったという事実。左右一の語る記憶は、全て事実の中から都合の良い寄る辺を頼りに、再構成された物だと考えるのが理に叶っているのではないか?
「……!」
 意を決す。
 この推論と左右一が話している最中にとった一つの仕草から、酷く悪い予想が立ったからだ。
 沈黙と開口の狭間、ショボンは僅かだが首を傾がせたのだ。
 左側に。
 人間の脳は創作と想起によって、その役割を分担させていることは広く知られている。そして脳内における作業は、現実の肉体にまで影響を与える場合があるのだ。
 思い出す時、人は右上を。逆に、作り出す時には左上を、それぞれ見上げる仕草が頻出するのだという。
 そうだ。
 左右一の記憶の改竄は、リアルタイムで行われている! 他の誰に因るものでもなく、左右一自身によってだ!
「なぁ……ちょっと聞いて欲しい事があるんだ」
 ならば僕がさっき行っていたような問答では駄目だ。
 彼の頭の回転はとんでもなく速い。捻り出された言葉から矛盾を突くような事ができるとは思えない。
 かと言って、事実との差異を示すことも不可能だ。唯一その証人足りえるのは僕しかいないのだから、余人を参加させ、数に拠った証明なんてやりようがない。
 何より僕たちは、人に話せないことをしたんだ。元より話せる訳もないし、その過程でどうしても八怪談に触れざるを得ないだろう。
 八怪談に触れれば、また僕ら以外の時が止まる。
 第三者を介入させる方法は、袋工事に近い。
 ……やはり誰にも話せない。
「急に改まってどうしたのさ」
 物的証拠は無いことは、無い。昨日左右一から返ってきたメールだ。
 だが障害は、確認する本人の眼が見えていないことと、記憶の改竄を本人が行っていることなのだ。
 それが大本の問題にして、それを証明する作業に立ちふさがる障壁なんだ!
 誰かに協力して貰いその確認が取れた所で、どうしようもない。相手がそれを信じなければそこで終わってしまう。
 いや、自分自身を誤魔化すな。
 物的証拠は、昨日僕らが学校に忍び込んだという証左足りえない!
 僕が深夜に電話をする。左右一は出ない。ややあって、メールによる返信が来る。
 『明日話す』
 ただこれだけ。
 僕の主観的にはこのやり取りが証拠になる。二人によって為された交信だからだ。
 しかし交信に携わった片方がそれを認識できない状況にあるならば、第三者から客観的に見た場合、電話と短いメールによる一往復以上の印象は持たれないに決まっている。
 やはり八方塞がり。そう見える。
 だが。
「別に改まってるつもりなんてないよ。じゃあ最後にww」
 彼の記憶の改竄は意識的に為されている。
 ならばこいつでなら! この方法でならば左右一の意識の外から、意識丸ごとを被い尽くしてやれるんじゃないのか!?

「闇に行軍 洞には凱歌!
資格者を導く茨の円環!
花は孤高の騎士を乞う!
深夜を響く亡霊の剣戟!
消えゆかん感情!
消えゆかん感覚!
十の微笑を得し者へは祝福を与えん!
目醒めを待つは大輪の王!」
「……」
「どうだあっ!?」
 今の僕に考え得る、僕に為し得る唯一の方策。それが八怪談を誦《ず》することだった。
 無音が耳に痛いほどの静寂。
 やがて自分の呼吸音だけがいやに大きく響くようになった室内で、左右一が始めて所作らしい所作を示した。
「……」
 微動だにしない左右一が見せたのは、口を半開きにするというものだった。鯉のようでもなく、嗚咽《おえつ》のようでもなく、語りかけようとしている訳でもない。敢えて似ている物を挙げるとすれば、ホラー映画に登場する、ゾンビのような口の開け方だった。なんの意思も方向性も持たず、意味すらも持たない所作。
「……ダメか」
 僅かな可能性。希望観測だったとは言え、やはり僕の力は全く及ばなかったという訳だ。才気煥発とした左右一がここまで無残な姿を晒しているのを、僕は何も出来ずにみているだけなのか……。
 ……しかし何故僕は、ショボンの口を開けている姿を、ゾンビのようだと感じたのだろう?
 ホラー映画に出てくるゾンビは概ね、当然のように口を開けて歩み寄る。手の位置を別にすれば、行動はそんなところだろうか。
 歩み寄る? なんの為だ?
「原始の双葉。試すなかれ」
 不意にショボンの右手が僕の肩を掴む。左手は硬く握られたままで、僕の膝に置かれた。
「預言者なればなおのこと。その所業、寛恕《かんじょ》に能《あたわ》ず」
 そうだ……ゾンビは……人を襲う!
「左右一!?」
 肩に置かれた手の力が緩む。
「僕の事は……忘れてしまうんだ」
 包帯で顔の半分を覆われているにも関わらず、その表情は穏やかで、でも……それは。
「もう帰りな、出継」
 今にも降り出しそうな色彩を持った、曇天模様の穏やかさだった。
 いつか見たロンドンの空のように、いつでも泣き出しそうで、全ての色彩を奪い去ろうとしているかのような。そんな不安定な状態のままを維持しているような。
 そう言ったきり左右一は倒れこんだ。
 僕は全身の硬直を解けぬまま、その体重を受け止め続けるしかなかった。
「あら。お邪魔しちゃったかしら?」
「ちょっww 左右一が途中で寝てしまって、動けないだけですww」
「なかなか絵になってるわw カメラ持ってくるから少し待っててねw」
「そんなんよりも助けて下さいw」
「んーもう。残念ねぇ」
 心底残念そうに言われても困る。この親にしてこの子ありと言ったところか。
 惨状にしては中々に微笑ましい光景だった。

 僕が嘘を吐いているという事実を除けば。

 おばさんに手伝って貰い、彼を寝床に戻して布団を掛け直す。
「左右一も寝てしまいましたし、僕もお暇します」
「来てくれてありがとうね。喜んでいたでしょ?」
「……はい、喜んで、くれ、ました」
「あら。眼が少し赤いわよ?」
「な、なんでもないです。原因が気になっただけで……じゃあ、左右一の体調の事で何かあったらご連絡お願いします!」
 僕は御母堂に別れの言葉を残し、彼ら家族の家を辞した。

「……なんで、だあああぁぁぁぁあああああっ!?」
 泣きながら、逃げるように。


     




 昨日とほぼ同じ時刻、同じ場所。僕は再びここに立っていた。
 ただ一つ違うのは、隣に親友がいない事だ。待てどもその姿は現れず、昨日のように追おうとする事もない。彼は未だ病床にあるのだ。
「……」
 昨日と同じ侵入経路をとり、屋上に至った。やはり屋上の錠前は開けられており、なんの問題も無かった。
 高揚は無い。全くと言っていい程にだ。
 昨日は探求を目的としていた。そこに親友の望む喜びがあると信じて。その喜びを友人と分かち合えると信じて。
 しかしそれは裏切られた。結局その行動は、友の異変と更なる謎を呼び込んだだけに終わってしまった。
「内藤、か?」
 背後から声がかかる。少し前からその気配は捉えていた。
 昨日とは違い、芯まで凍っている僕の心。感覚までもが冷たく研ぎ澄まされているのが解る。
 暗部から月下へと歩み出たその人物は、期待通りの人だった。
「待っていました。空城《あまぎ》さん」
「驚いたな。私をか?」
「そうです。どうしても会いたかったので」
「ほう?w」
「どうしても……会って話を聞きたかったんです」
「ふむ。なんだ、色っぽい話ではないようだな。それにしてもどういう心境の変化だ?」
 心境の変化。
 確かに昨日彼女交わした会話は、啖呵に等しいものだった。
 甘えを排し、友と辿り着くのだと。
 なのに聞かせて欲しいと押しかけたこの状況。一昼夜で尻尾を巻いて縋り付いた、間抜けな身の丈知らず。
 傍からみればそう見えるかもな。
「確かに自分の足で辿り付き、自分の手で掴み取るつもりでした。でも……」
「?」
「でも! そうも言っていられなくなってしまったんです!」
「どうやら、変化したのは状況のようだな。詳しく聞こう」
 解らない。心は凍らせてきたはずだ。脳ミソを最大に回転させ続ける為に。
 解らない。どうしても涙が出てくる。
 解らないのだ。泣く以外の選択肢が。
 親友の異変。
「……簡単に言ってしまえばそれだけなんです。でもその内容が八怪談の内容を彷彿させる状況で……」
「異変の、内容は?」
「とつ、突然の失明です。原因不明だとしん、診断されたみたいです」
 空城さんの眉間が詰まる。
「それから八怪談に纏わる記憶が、なんだか……なくなっちゃったみたいで……」
「それは……間違いないだろうな」
「じゃあ――」
「ああ、寛道《かんどう》高校の密かな催し――」

 ――継承祭。

 呆気ないほど簡単にその名を得た。
 だが喜びを分かつ者は、いない。
 よろこびとは、なんだ?

       

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Neetsha